村上龍の近未来・金融小説の下巻。
この作品が書かれたのは1980年代だが、2009年の今日に再読してもまったく色褪せることがない、ソリッドで力強く、そしてリアルな作品に仕上がっていることに改めて感心させられた。
上巻では主人公鈴原冬二と狩猟社が日本国内で権力を得ていく過程が描かれているが、下巻ではいよいよ力を持った狩猟社が、アメリカ・ソ連による世界共同管理体制に挑むべく、ありとあらゆる方法を用いてアメリカの超国籍企業グループ、「ザ・セブン」へと襲いかかる。
スリリングな展開が続く物語だが、少しだけ残念に感じるのは、「破壊」と「衝撃」をテーマとして突き進んできたこの作品が、フェスティバル「巨大なる祈り」の登場とともに、「親和」と「再生」へと、あまりにも急激にハンドルを切って行き、また、冬二、ゼロ、フルーツ3人の物語が、金融小説の中に異物として割り込んでくる部分に、若干の違和感と尻すぼみ感を感じる。
混乱を極めた世界、そして日本が冬二と狩猟社によってどのように再生されていくか、この物語には本当の意味でのエンディングは描かれていない。
いつの日にか、この物語の最終章の10年後の世界を、村上龍が描いてくれる日がくれば良いと期待する。
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