とっくの昔に絶版になってしまった村上龍と村上春樹の貴重な貴重な対談集。
図書館で借りるという方法を今まで思い付かず、読む機会がなかったのだが、地元の図書館でネット予約したらあっという間に手許にやってきた。便利な世の中だなあ。
で、早速読んでみる。いやー面白いおもしろい。とっても良い。対談は二度に渡って行われたのだが、それはいずれも1980年のこと。当時村上龍は「限りなく透明に近いブルー」と「海の向こうで戦争がはじまる」を出版し、二度目の対談で「コインロッカー・ベイビーズ」が出版間近で、村上春樹がゲラを読んだりしている。
一方村上春樹は「風邪の歌を聴け」、「1973年のピンボール」が出版された後という時期で、彼はまだジャズ喫茶兼バーの経営をしていて、専業作家になっていない。
つまり、二人ともまだ日本の現代文学を代表する「二人の村上」に上り詰めるよりも前の時期の対談であり、世間の注目も今ほど浴びておらず、従って二人ともかなりリラックスしていて、自由に適当なことを言っていて、それがとても新鮮で面白い。
真面目に文学について語っている部分ももちろん面白いのだが、やはりくだらないことを言っている部分で思わずニヤニヤしてしまう箇所も多い。
村上春樹が自分が書いたものをまず奥さんに見せ、それが詰まらないと奥さんが捨ててしまうという告白や、原稿を書いている最中に「洗濯物を干せ」と奥さんに言われ、「僕は原稿書いてるから干せない」と言うと、奥さんに「そういうくだらない原稿書くより、洗濯物干すほうがずっと大事なんだ」と言いくるめられてしまうくだり、さらに村上龍が感動的なシーンを書く時、書きながら「いい、いい」と言い、泣きながら書いたという話など、今ではなかなか聴けないような話が盛り沢山である。
全般の印象として、意外にも村上春樹が対談をリードし、村上龍が付いて行くという感じ。春樹の方が年齢が少し上だからなのかもしれないが、孤立主義で付き合い下手という春樹のイメージからするとちょっと意外な、仕切り上手な感じが対談から伺える。
いずれにしても、とっても面白い対談集。絶版なんかにせず、是非増刷してもらいたい。まあでも、今の村上春樹のイメージからはちょっと外れ過ぎてて、彼としては嫌なのかもねえ。アマゾンなんかでもプレミア付いて、凄い値段で売ってるみたい。
ちなみに本書のタイトルはベンチャーズの同名の名曲から採られており、村上龍は巻末の言葉で「僕らが演奏家だったら、あのいかした曲を、ギターとベースで一緒にやれるのになあ」と語っている。そして結びの言葉がカッコいい。
「小説家は、同じ曲を演奏することができない。」
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