早稲田大学の競走部、駅伝監督である渡辺康幸氏が書いたチーム復活までの軌跡。
僕が箱根駅伝を毎年見るようになった頃、この渡辺康幸氏は早稲田大学のスーパールーキーとして一年生で2区を走り、早稲田の総合優勝に大きく貢献していた。
当時の早稲田は本当に強くて、同じく当時非常に強かった山梨学院大学と毎年デッドヒートを繰り広げていた。
だが、渡辺康幸氏の卒業後、徐々に早稲田大学の箱根駅伝における存在感は低下していき、渡辺氏が監督に就任する直前の2004年には、総合16位という、過去ワースト・タイという低迷ぶりであった。
また、早稲田大学を卒業して実業団入りした渡辺康幸も、度重なるアキレス腱の故障に悩まされ続け、オリンピックでのマラソン制覇を期待されつつも、箱根での輝きを取り戻すことはないまま、29歳の若さで現役を引退した。
そんな中、早稲田大学の駅伝復活の切り札として、渡辺氏は駅伝監督就任を要請される。渡辺氏の師匠であり、早稲田の大先輩である瀬古利彦氏でさえもが「いまは時期が悪い」として就任しないようアドバイスするようなチームの状況でありながらも、渡辺氏は監督を受託し、チーム再建に取り組み始める。
渡辺氏は選手一人ひとりに密着して個性を伸ばす指導法を取り入れつつ、自らの選手生命を断ったアキレス腱の故障は自己管理能力の欠如と位置づけ、選手達に自己管理を徹底するよう始動し続けた。
そして昨年、2008年の箱根駅伝で、早稲田大学は往路優勝、そして総合2位という復活を遂げ、今年2009年の箱根も総合2位で最後まで優勝争いに絡み続けた。
この本は渡辺康幸氏がどん底の状態だったチームをいかに復活に導いたかを記した記録であるとともに、低迷するチームにカツを入れ、メンバー一人一人が輝くように導くための、マネジメント指南書でもある。
「高すぎる目標は夢でしかなく、「目」で見えるからこそ目標という」、「自己管理のミスだけは許さない」、「陽のオーラを放つメンバーを最大限アシストする」など、シンプルだが奥が深い言葉が続く。
僕自身箱根駅伝の大ファンであり、また、当時の早稲田大学、渡辺康幸の走りに魅了され、さらに去年と今年の箱根駅伝の早稲田の復活に大いに盛り上がった人間なので、本書はとても分かり易く、楽しく読むことができた。
ただ、去年から今年にかけての駅伝メンバー一人一人の人物紹介に割かれている部分が多く、汎用性に乏しい箇所があったことは否めない。渡辺氏がまだ若く、監督としての成功体験を積み始めたばかりなので、どうしても具体例が非常にミクロな部分に落とし込まれてしまっているのが少し残念ではある。
細かい部分でやや物足りない点はあったが、現代の若者をうまくリードしたいマネジメントには、学ぶべき要素がギッシリ詰まった良書だと思う。早稲田大学の来年の活躍に、さらに期待したいと思う。
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