本書、「天皇陛下の全仕事」は、産經新聞の宮内庁記者クラブに勤務していた著者、山本雅人氏が、現代の天皇陛下がどのような仕事をどのようにこなしているのかを定量的に網羅して捉えた本である。
僕自身天皇陛下の仕事内容については「たまに外国からの賓客があったら晩餐会をやったり、国体でスピーチしたり、相撲見たりしてんじゃないの?」ぐらいの知識しかなかったのだが、いやはや天皇陛下の仕事というのは実に多岐に渡り、しかも常に多忙であることを、本書を通して知ることができた。
元日は朝の5時過ぎから神事を行い、多い日には一日に6件ものアポが入り、静養中の御用邸にまで決済書類が追い掛けてきて、定年がなく天皇を辞めるには死ぬしか選択肢がなく、休日出勤も非常に多いという天皇陛下の超多忙な日々が、実に詳細に説明されていく。
昭和から平成に時代が変わり、今上天皇の時代になってから新たに始められた公務も多いということも知らなかった。大きな災害が起こった際に現地にお見舞いに行く活動や、サイパンなど、第二次大戦の激戦地に対する慰霊訪問なども、平成になって今上天皇が始められた新たな活動である。
多岐にわたる皇室行事のうち、神道に関連する行事には宮内庁職員は関わることができず、天皇のポケットマネーにあたる内廷費から支払われる職員を雇用していることや、同じ皇族でも天皇家と皇太子家と、それ以外の皇族では国家予算からの支出項目が違うことなど、僕らが知らない皇族についての知識が満載で、非常に興味深く読めた。
それにしても、職業選択の自由もなく、被選挙権も投票権もなく、住む場所も選べず、結婚をするにも内閣の承認が必要であり、定年もなく、決済する仕事は山のようにあっても拒否する権利はないなど、読んでいるとなんだか段々天皇陛下が気の毒に感じられてしまう。
ただ、日本の首相には国家元首としての自覚がないように思われる分、天皇陛下は対外的な品位や格という意味での日本の威信を一手に引き受けているように感じられ、やはり日本には天皇が必要なんだな、と改めて感じさせる本であった。
来年あたり、新年の一般参賀にでも行ってみるかな。あれも一生に一度ぐらいは行ってもいいかもしれない。
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