映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」のサウンドトラックアルバム。作曲・アレンジ・プロデュースはエンニオ・モリコーネ(Ennio Morricone)。
この映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」は、僕が好きな映画ベスト5に入るものなのだが、映画についてのコメントは割愛し、このサントラについてだけ書くようにしよう。
エンリオ・モリコーネは「ニュー・シネマ・パラダイス」の音楽なども担当しているイタリア人作曲家であり、この映画の監督セルジオ・レオーネとのコンビは、1960年代の「荒野の用心棒」や「夕陽のガンマン」などのマカロニ・ウェスタン時代から続くものであり、本作がレオーネの遺作となったため、これが最後の共作となった。
この「Once Upon a Time in America」サウンドトラックと僕の出会いは僕が大学一年の頃、1988年にアルバイトで勤務していた六本木のレストラン&バー、「プランテーション」という店でのことであった。
その店ではBGMは有線放送ではなく、アナログレコードをプレーヤーで回して掛けており、店のアルバムのストックにこのサントラも含まれていたのだ。
アルバイトでの勤務を初めてすぐに、僕はこのアルバムに収録された一曲一曲の美しさに引き込まれた。一曲目のタイトルクレジット「Once Upon a Time in America」の豊かさ、美しさは、例えるならば静かに、しかし多くの水を運ぶ大河の流れのようであり、愛のテーマ「Amapola」は甘く馨しく、当時働いていた店のほの暗い間接照明の中で聴くと、自分がどこか柔らかくて暖かい、とても安心する場所に導かれて行くような気持ちにさせられたものだ。
僕は毎日のようにこのサントラを掛け続けた。店が忙しくなる前の、開店間際の閑散とした店内にこのアルバムの音楽が流れるのが好きだった。「プランテーション」は、ヨーロッパ植民地時代の重厚な書斎を模した内装を持つ店で、まだ客が誰もいない店内の、キャンドルの灯りとかなり暗めに落とされた照明の中に立ち、このアルバムの曲を噛み締めるように聴くのが本当に好きだった。
だが、バブルの荒波の中、バイト先の店は儲かっていたにも関わらず地上げのような形で売却され閉店した。僕は最後の日までこのアルバムを掛け続けたが、酔っぱらった先輩従業員が最終日の営業が終わった後の打ち上げの際に、ストックのレコードを全てフリスビーのように投げてしまい、このアルバムのレコードも粉々に割れてしまった。
あれから20年が経ち、僕はこのアルバムを再び手にして音を聴くことができた。一曲目が流れ出した瞬間に、僕は懐かしいあの店の光景を思い出した。入口のドアの質感やカウンターにあった立派なエスプレッソ・マシン、キャンドル・スタンドの形から革張りの椅子の座り心地、厨房に漂う古いビル特有の匂いまでが甦ってきて驚いた。
そしてそういった僕の思い出とは切り離しても、20年経って聴いてもやはりこのサウンドトラックは素晴らしい。最近の映画にはない、とてもクラシカルで有機的で手作りまものが全体を覆っていて、僕の心を柔らかく包み込み、慰撫してくれるようだ。
思わず映画も見たくなったのだが、僕が持っているのはVHSビデオだけで、家にはビデオデッキがない。ちょっと迷ったが、アマゾンにDVDを注文してしまった。明日の夜にはDVDが届く予定、今から楽しみだ。
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