大国日本の幻 - バブルの興亡とその教訓 - by 塩田潮 [Book Review]

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「大国日本の幻 - バブルの興亡とその教訓 -」は、ノンフィクション作家・塩田潮が、1980年代後半から90年代初頭にかけて日本で発生したバブル経済について、時系列に沿って発生原因とバブルに踊った人々の姿、その後の崩壊の過程、そしてその崩壊後の長期に渡る経済停滞と日本の国力低下の発生原因と責任の所在、さらにはバブルから学ぶべき教訓について追求している。

僕の人生と「バブル」は切っても切れない。時代と場所が同時に激しく、僕をバブルへと巻き込んで行った。1988年というバブルの暴走が本格化した年に大学に入り、住んでいた場所は六本木間近の西麻布、両親はミュージシャン、やっていたバイトは六本木のフレンチとバー、それにモデルと、まあ見事にバブル最前線でありつつも、社会人ではなくまだ未熟な学生であったために、直接バブルによって現金を目の前にして踊った訳ではなく、至近距離で踊る人達を眺めている間にバブルは崩壊し、僕が社会に出た時には平成不況まっただ中という状況であった。

そして僕とバブルとの縁はバブル発生から20年を経た今になってもまだ切れていない。僕がいま背負っている借金は祖母と母がバブル期に西麻布の自宅を改築する際にした借金が焦げ付き、麻布の実家を手放しでもまだ残ったものを、親が返済困難になったため僕が引き継いだものだ。

いつからかはハッキリ憶えていないが、僕の中で「バブルとは一体なんだったのか」、「いつ、誰が、何をしたせいでバブルは起こったのか」、「バブルは何故崩壊したのか」、「バブル後の日本はどうしてこんなにダメになってしまったのか」という疑問が強く沸き上がってくるようになった。

そしてバブルとは何だったのかを時系列順かつ中立的に解説してくれる本を探すようになった。そして本書「大国日本の幻 - バブルの興亡とその教訓 -」に出会い、貪るように読んだ。

読了してみて、感慨は猛烈にあり、それをすべて言葉にすることはとてもできない。僕の人生を振り返るのに等しいような複合的な感情や思い出が一気に押し寄せてくるからだ。さらに、本書が長大であるように、当時起こった事象一つひとつにコメントをしていくことも、やはりあまりにも労力が掛かり、現実的ではない。

だが、本書を読んで、「やっぱり」という思いを強くしたことは確かだ。バブル期の日本をハンドリングした政治家としてA級戦犯と扱われているのは中曽根康弘、竹下登、宮澤喜一であり、他にも官僚機構としての大蔵省、銀行としての住友、富士、日興、証券会社の山一、バブルに踊った企業としての桃源社、阪和興業などが続々と連座している。

ただ、一貫して言えることは、アメリカという強い交渉相手に負け続け、国内においては政治家も官僚も皆利己主義で目先のことしか考えず、目の前に積み上がった札束に目が眩み長期的かつ継続的成長や改善のことなど忘れてしまっている頃に、日本は高度経済成長から続く成長の時期を終え、少子高齢化が始まる成熟期へと突入していたという事実である。

バブル崩壊後に日銀がどんなに公定歩合を下げても景気が回復しなかったのは、バブル後の不況が単なる循環景気の結果訪れた不況ではなく、戦後日本が歩んできた成長モードに基づいた生産システムがもはや機能しなくなったためだということに、日本国民が気付くのがあまりにも遅すぎた。

本書を読むまで、僕の心の中のどこかに、「バブルよもう一度」という願望があったことは事実である。だが、本書を読み終えた今、僕の願望は明らかな間違いであったことを確信している。

僕が望んでいるのは、バブルの再来ではなく、バブルによってもたらされた過酷な現実を乗り越えた後にやってくる可能性がある、持続的かつ安定的な成長の時代である。それは間違いないし、二度とその思いは揺らがないであろう。

 

 

大国日本の幻—バブルの興亡とその教訓
大国日本の幻—バブルの興亡とその教訓
著者:塩田 潮
出版社:講談社
出版日:2002-03
価格:¥ 2,415
ランキング:623010位
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このページは、ttachiが2009年5月14日 22:15に書いたブログ記事です。

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