
雑誌"monkey business vol.5 対話号"から、村上春樹のロング・インタビュー、「成長を目指して、成しつづけて」を読了。聞き手は古川日出男氏。
村上春樹のインタビューが雑誌に掲載されること自体が滅多にないことで、しかも先日のエルサレム賞関連のもののように特定の話題に限定されたものではなく、自由なテーマで自らの著作や創作活動について語るというのも珍しく、これはと思い読んでみた。
まず何と言っても特筆すべきはそのボリュームで、何と70ページ以上ある。しかも内容がほぼ彼の著作や創作活動に関する彼の考えに関する話で占められていて、内容が非常に濃く、素晴らしいインタビュー記事だった。
このインタビューのテーマは、タイトルにある通り、60歳を迎えた村上春樹がさらなる成長を目指し努力し続ける姿をリアルに伝えようというものなのだが、彼の自分自身に対する貪欲な成長志向がハッキリと言葉として伝えられていて清々しく、またここまで真摯に執筆に向き合い、しかも結果にも執着する作家はなかなか他にはいないのではないかと感動もさせられた。
30歳でデビューした彼は40歳で「ノルウェイの森」を書き、50歳で「ねじまき鳥クロニクル」を書き、そして60歳にして「1Q84」を書いたわけだが、それぞれのステージにおいて彼が何を考え、どのような課題を見出し、何を目標とし、どのように行動したかが簡潔にまとまられ、そして意外にもかなり熱く語られている。そしてその中で共通するのは彼の努力の仕方が常に首尾一貫していて、「一度決めたらずっと同じことをコツコツやり続ける」というタイプの努力を惜しまないという点で、この点は何とも勉強になるというか尊敬するというか、見習わなければならないと感じさせられた。
もう一つ興味深かったのは、彼が短編、中編、ノンフィクションの創作を、長編を書くための準備運動というか、骨格を鍛えるための作業と定義して様々なチャレンジを行って来ている点で、これは過去の短編、中編を読むと素直に納得することができるが、このことからも(インタビューの中で名言もしているのだが)、彼は長編の創作活動を作家としての彼の活動における究極の目標と位置づけていることが改めて浮き彫りになっていて面白い。
60歳を迎えた人間が「成長を目指して、成しつづけて」と考え続けられることだけでも大したものだと思う。ただ目指すだけではなく、成すだけでもなく、「成しつづける」ことを求めているのだ。これはそんじょそこらの決意ではない。
これだけ自分の創作活動に関わる事柄について(熱く)語る村上春樹というのはなかなかない。しかも内容がとても濃くて素晴らしい。作家を目指している人だけでなく、自分自身の人生の組み立てについて考えたい人なども是非読んでみて欲しい、素晴らしい記事だった。
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