ハードカバーでかなりの厚みがあったので、ちょっと構えて読み始めたのだが、厚手の紙だったのと平易でとても読みやすい文体のおかげであっという間に読了。予想外に面白かった(といったら失礼か)。
清原氏は言わずと知れたプロ野球界のスーパースターで、昨年現役引退をしたばかり。だが、巨人時代の素行の悪さやコテコテのパフォーマンスなどでヒール扱いになった部分もあり、僕自身も清原氏のことはあまり良く思っていなかった。
だが、最近のマスコミの偏重報道につくづく嫌気が差している自分自身が、マスコミを通しての清原氏の言動だけをベースに彼を判断してしまっているという矛盾に気付き、彼自身の言葉に興味を持った。
というわけで、特に清原ファンではない、むしろアンチ清原を自認していた僕だったのだが、本書は予想以上に楽しく読めたし、教訓も多かった。
まずなんといっても文体が平易で読みやすく、しかも文章がうまいのだ。PL学園時代に桑田選手とともに大活躍した甲子園での思い出や、憧れの巨人からドラフト会議で指名されなかった悔しさなどが、目の前で繰り広げられているかの如き瑞々しい文章で描かれている。
もちろん文章が面白いだけが本書の魅力ではない。その魅力の多くは、清原氏が生きてきた人生の壮絶さと人生哲学の頑なさ(これは良い意味でも悪い意味でも)、自分を愛してくれる人間を無条件に受け入れ、同じように他者を愛する性格によって創られているのだ。
清原は僕の2歳年上で、同世代といっていいだろう。同世代の彼の半生を読むと、自分自身が如何に己を追い込むことなく生きてしまったかと赤面してしまう箇所も多く、読んでいるうちに段々居心地が悪くなってくる(笑)。
彼がPL学園で死に物狂いに練習していた頃、僕自身は何をしていたか。彼が巨人から指名されず涙を飲み、憧れの王監督と無二の親友桑田選手の二人に裏切られたのではないかと悩んでいた頃、僕にいったいどんな悩みがあったか。同世代の男として、彼のことを良く知りもしないで揶揄する資格など自分にはない、と痛感させられる。
オリックス移籍後の清原氏については、僕はほとんど何も知らなかった。たまにスポーツニュースで、久し振りに出てきたけどまた怪我をして二軍に落ちたとか、怪我ばかりでほとんど試合に出ていないのに高額の年俸をもらっているとかといった、ありきたりなニュースを耳にしていた程度だ。
だがその頃彼は、膝の手術で歩くこともままならない状態でリハビリを続けていた。一般人とは違い、ただ生活できれば良いというレベルのリハビリではない。もう一度プロ野球選手として一軍に戻るというリハビリがいかに壮絶であったかについて、僕は今まで考えたことがなかった。
もちろん本書を読んだからといって、僕は急に清原氏の大ファンになったりはしない。もともと彼が好むテイストは僕の好みとは大きく異なるし、どうやらノリも合わないだろう。だから僕が彼が醸し出す世界観に大きく惹きつけられることはない。
だが、清原和博というプロ野球選手のことを、僕はやっぱり尊敬すべきだなと強く感じた。彼は尊敬に値するだけの努力をし、そして結果も出してきたのだし、僕らの同世代のスーパースターだったことは間違いないのだから。
僕はテレビはほとんど見ない生活をしているが、清原氏はいま評論家をしているようだ。数年間外部から野球を見つめ、その後で指導者として再びプロ野球界に戻ってくるのだと僕は確認している。
彼がコーチや監督として再びユニフォームを着たときには、僕は今までとは違う見方で清原氏を応援することができるような気がする。
読んでよかった。ありがとう、清原和博。
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