村上春樹の「風の歌を聴け」を読了。多分20回以上読んでいるが、このブログにはまだレビューを書いたことがなかった。
ご存知の方も多いと思うが、本作「風の歌を聴け」は村上春樹のデビュー作であり、群像新人賞受賞作である。
村上春樹といえば、いまやすっかり長編小説の大家になっているため、今になってからこの「風の歌を聴け」を読み返すと、今とはずいぶん異なるスタイルで書かれていることに改めて気付かされる。
だが、スタイルは異なれど、この短い作品にもたくさんのエッセンスが詰め込まれていて、やはり村上春樹という作家はデビュー当時から非凡な才能を発揮していたんだなあ、と嘆息する次第。
たとえばストーリーテラーの数の多さとその入れ替わり方の潔さが挙げられるだろう。この物語にはのストーリーテラーがいる。わずか150ページの一人称小説で、語り手が3人もいるというのは異例だし、しかもその語り手の交代がスムーズかつシームレスに行われている点は高く評価されるべきだろう。
小説を書いている著者としての「僕」、そして大学生の「僕」、それともう一人、ラジオのDJの3人である。「僕」の視点が短いサイクルで入れ替わることで、登場人物達と読者に距離が生まれ、結果全篇を通じてどこか冷めたような、クールな印象を与えている。
また、語り手の人数の多さとともに、時系列で進むベースの物語と、それ以外の装飾部分のランダムな挿話の挿入が小気味よく、軽快で心地良いテンポを生み出している。
そしてもう一つ、小説家村上春樹が語る言葉の「嘘」が見事で、これがこの作品全体にピリっと辛い香辛料として作用している。作品の前書きとあとがきの部分で、小説家としての「僕」は、一番営業を受けた作家として、「デレク・ハートフィールド」を挙げ、研究者名や参考資料名まで挙げてハートフィールドに対する思い入れを吐露しているのだが、デレク・ハートフィールドなどという作家は実在しない。
つまり、この作品においては、前書きもあとがきも含めて全てがフィクションなのだ。作者として登場する「僕」jも、実はリアルな村上春樹ではなく物語の一部なのだ。そう考えると、このデビュー作は、実に深みがあり、良く練り込まれた作品だと感心させられる。
物語はこの後「1973年のピンボール」、「羊をめぐる冒険」、「ダンス・ダンス・ダンス」へと続いて行く。僕はこの4部作が大好きだ。この世界観と登場人物達をとても親しく感じるし、「僕」と自分に共通する部分がいくつもあるように感じてしまう。
いつか、もう一度、村上春樹がこの4部作の続編を書いてくれたらいいな、そんな風に思わせてくれる快作だと思う。
ご存知の方も多いと思うが、本作「風の歌を聴け」は村上春樹のデビュー作であり、群像新人賞受賞作である。
村上春樹といえば、いまやすっかり長編小説の大家になっているため、今になってからこの「風の歌を聴け」を読み返すと、今とはずいぶん異なるスタイルで書かれていることに改めて気付かされる。
だが、スタイルは異なれど、この短い作品にもたくさんのエッセンスが詰め込まれていて、やはり村上春樹という作家はデビュー当時から非凡な才能を発揮していたんだなあ、と嘆息する次第。
たとえばストーリーテラーの数の多さとその入れ替わり方の潔さが挙げられるだろう。この物語にはのストーリーテラーがいる。わずか150ページの一人称小説で、語り手が3人もいるというのは異例だし、しかもその語り手の交代がスムーズかつシームレスに行われている点は高く評価されるべきだろう。
小説を書いている著者としての「僕」、そして大学生の「僕」、それともう一人、ラジオのDJの3人である。「僕」の視点が短いサイクルで入れ替わることで、登場人物達と読者に距離が生まれ、結果全篇を通じてどこか冷めたような、クールな印象を与えている。
また、語り手の人数の多さとともに、時系列で進むベースの物語と、それ以外の装飾部分のランダムな挿話の挿入が小気味よく、軽快で心地良いテンポを生み出している。
そしてもう一つ、小説家村上春樹が語る言葉の「嘘」が見事で、これがこの作品全体にピリっと辛い香辛料として作用している。作品の前書きとあとがきの部分で、小説家としての「僕」は、一番営業を受けた作家として、「デレク・ハートフィールド」を挙げ、研究者名や参考資料名まで挙げてハートフィールドに対する思い入れを吐露しているのだが、デレク・ハートフィールドなどという作家は実在しない。
つまり、この作品においては、前書きもあとがきも含めて全てがフィクションなのだ。作者として登場する「僕」jも、実はリアルな村上春樹ではなく物語の一部なのだ。そう考えると、このデビュー作は、実に深みがあり、良く練り込まれた作品だと感心させられる。
物語はこの後「1973年のピンボール」、「羊をめぐる冒険」、「ダンス・ダンス・ダンス」へと続いて行く。僕はこの4部作が大好きだ。この世界観と登場人物達をとても親しく感じるし、「僕」と自分に共通する部分がいくつもあるように感じてしまう。
いつか、もう一度、村上春樹がこの4部作の続編を書いてくれたらいいな、そんな風に思わせてくれる快作だと思う。
たたたたたたタチさん!!(くどいw)
村上龍に続き村上春樹ですか!!
「風の歌を聴け」を含む羊シリーズは何度読んだ事か。一番好きなのは「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」でした。
そして「ねじまき鳥クロニクル」を最後にあまり読まなくなり、その後も何冊か新しいのを読んだ気はするのですが記憶にありません。「1Q84」も読んでないのです。
それでもあの乾いた文体は好きだった事に変わりはありません。
もしかしてジョグを始めたのは村上春樹の影響ですか?
ちなみに私が昔AppleのPerformaを買ったのは村上春樹の影響です。縦長の画面に原稿用紙が表示され、そこに文字を入力している姿を見て完全に影響されてしまいました。(Perfomaは普通の画面でしたが)
ちょっと最近本を読めていないのですがタチさんのおかげで久しぶりに欲求が沸いてきました。
とにもかくにも、これからも宜しくです!
Ryoさんどもどもです!
村上春樹では、個人的には「ねじまき鳥クロニクル」と「1Q84」、それに「世界の終り」が好きですね。もちろん「羊」四部作も大好きですよ。
ランニングについては、よく村上春樹の影響ですか、と聞かれるのですが、実は全然関係なくスタートしました。でも、その後彼がフル・マラソンに出たりトライアスロンに挑戦したりするようになったのを見て、彼を見習うようになりましたので、やはり非常に影響を受けていると思います。
1Q84は来年第3部が出るそうですので、その後にまとめて読まれるのも良いかもですね!