このアルバム、椎名林檎個人名義としては実に6年ぶり、4枚目のフル・アルバムである。ご存知の方が多いと思うが、椎名林檎はこのところずっと「東京事変」としての活動に軸足を置いていたため、個人名義での新作発表は実に久し振りであった。
余談だが、僕が椎名林檎を聴くようになったのは驚くほど遅くて、何と去年の1月である。この時にファーストアルバム「無罪モラトリアム」を聴いてその完成度とカリスマ性に圧倒され、以来すっかり彼女の音楽に引き込まれてしまった。
で、久し振りのソロ名義での新作発表ということで、このアルバムは予約を入れて発売日当日に聴いていたのだが、しっかり聴き込んでからレビューを書こうと思っていたら、ついつい遅くなり、今日になってしまった。
というわけで前置きが長くなったが、この「三文ゴシップ」の世界を言葉で現すと、「余裕」「色香」「大人」「ゴージャス」「上機嫌」のような言葉が思い浮かんでくる。とにかく豊かで美しく、しかしきちんと尖っていてカッコ良く、しかも欲求不満をぶつけるような世界観ではなく、全体的に機嫌良くまとまっている。大人だなあという感じなのだ。
初期2作のような若さ故の暴走機関車ではなく(あの世界観も大好きなのだけれど)、30代の大人が作り出す音楽、それがこのアルバムを通じて感じられる世界だ。本作のテーマは「ヌード」だそうで、そのコンセプトはジャケットやライナーノーツにも表れているし、目に見える部分だけではなく、音楽にも良く浸透しており、全体としてとても色っぽい。
もはやロックやパンクと言った枠を超えて、時にはジャジーに、時にはポップに、そして時にはクラシカルに、その世界観を変えてしまう。まるで相手や場所に応じて洋服や髪型を自在に変えつつも、常に存在感を失わない美しく魅力的な女性の変わり身を見ているようだ。
アルバムの中で特に好きな3曲を挙げれば、一曲目の「流行」、二曲目の「労働者」、そして13曲目の「余興」である。どの曲もこのアルバムではアップテンポで比較的ロックしている曲だと思うが、どの曲を聴いてもやっぱり「大人」で「豊か」で「色っぽく」、そして「上機嫌」。実にカッコいい。
椎名林檎のライブにはまだ一度も行ったことがないが、このアルバムを聴いて、改めてライブを聴きに行きたいな、と思わせられた。力強い意欲作だよね。カッコいい。
あ、そうそう、このところ音楽はiTunes Storeからダウンロードしていたんだけど、このアルバムからはまたCDを買うようになった。理由は幾つかあって、それはまた後日書こうと思っているのだが、今回の初回限定版の肌色盤はとてもカッコ良かったことは確か。
EMIミュージックジャパン (2009-06-24)
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