金森重樹氏著、「借金の底なし沼で知った お金の味」を読了。
なんとも挑発的なタイトルで、読み始めるまでどんな話かと思っていたが、なかなかリアリティーがあり、教訓と示唆に満ちた良い本だった。
衣類の一括販売の強引な契約を結ばせられたり、パチンコにはまったりする学生時代の著者は確かに無計画で弱いし、仕組みも契約額も確認せずに先物取引の営業マンの強引な手口に嵌って親から預かった金を使い果たし、挙げ句の果てに高利の借金漬けになってしまったという経緯も、お粗末といえばお粗末だ。
だが、もし自分が著者と同じ年齢と立場だったら、もっと上手く立ち回れただろうかと考えると、うまく処理できた可能性は極めて低かっただろう、と答えるしかない。
そして5,000万円以上の借金を背負い、月収が30万円なのに返済金利だけでも月額39万円という、途方もない状況に陥った著者が打った起死回生の一撃、それはさらなる借金をして、事業を興し、お金に働かせる環境を作ることだった。
今でこそ著者が言う「お金に働かせる」という言葉の意味は分かる。この言葉は「金持ち父さん」シリーズにもさんざん出てくるし、近年この言葉はずいぶん市民権を得てきているだろう。
だが、5,000万円以上の借金を負っている時点でそのことを考えつけるというのは、やはり凄いことだと感心させられる。
本書はあくまでも著者自身の転落と復活の半生を綴ったものであり、普遍的にそのまま活用できるように書かれたノウハウ本ではない。だが、本書に書かれているメッセージは、著者が地獄のような苦しみの中で学んだ事柄であるため、言葉に重みがあり、迫力がある。
「消費のための借金とお金を作り出す道具としての借金はまったく別物」「お金を作り出すために借りたお金は、1円たりとも消費のために使ってはいけない」この言葉が重く響いた。
それにしても、著者のアルバイト先の資産家と、その資産家とグルになって著者を先物取引の世界に引っ張り込んだ営業担当というのはひどい人間だ。もちろん著者がきちんと自力で判断できなかったことも問題だが、20代前半のフリーターの若者に、年利12%、遅延損害金12%などというとんでもない高利で5,000万円もの大金を、無担保で貸すなんて、非常識だしひどすぎる。
このような手段を使って金儲けをするような人間にはなりたくないと、心から思う。もちろん騙されるのも嫌だけど。
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