Loveless by My Bloody Valentine (1991) [Music Review]

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Music Review、今回は僕に大きな影響を与えた、青春後期の金字塔、My Bloody Valentine(マイ・ブラッディ・バレンタイン)のLoveless(ラブレス)というアルバムを紹介したい。

My Bloody Valentineはアイルランド出身の4人組で、リーダーのケヴィン・シールズとビリンダ・ブッチャーの男女ヴォーカルと、ノイズという言葉では片付けられないような、幾層にも折り重ねられた「轟音」「爆音」、だが全体としては細密描写のように美しい世界観が特徴のバンドである。

このアルバムは僕が大学3年生の頃、1991年にリリースされた。My Bloody Valentineは寡作なアーティストで、アルバムは2枚しか発売されておらず、本作が今のところ最新のもの。バンド自体は長らく事実上の解散状態にあったが、2007年に再結成を発表し、2008年には待望の来日を果たし、フジロックに出演した。

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僕は高校時代にJesus and Mary Chainの"Psycho Candy"に出会って以来、ブリティッシュのいわゆるオルタナティブというかノイズ系の音楽は好んで聴いてはいたのだが、このLovelessは、彼らが所属していたクリエイション・レコードが倒産しかかるほどの制作費(4,500万円)をかけたといわれ、比類のない世界観が発売と同時に大きな話題となり、既存のオルタナティブ・ロックの価値観を丸ごと消し飛ばす破壊力を持って当時の僕の耳にも飛び込んできた。

重厚なギターの音色はサンプリングされ幾重にも多重録音され時には逆回転で録音されている。男女のヴォーカルは甘く気だるく、どことなく神々しい。メロディーラインはメローなポップ調のものが多く、だがそのメロディーとノイジーなサウンドのミスマッチは、どこまでも美しく、その一方で鈍器で殴り付けるような狂気を孕んでいる。

そして何と言ってもMy Bloody Valentineを特徴付けているキーワードは「歪み」である。1曲目のOnly Shallowは曲全体にフランジャーのようなエフェクトが施されており、大音量でこの曲を聴くと、大きなうねりの中に放り込まれるようだし、4曲目のTo Here Knows Whenは「轟音」とも表現できる重低音の歪みがベースにある中、神々しくも退廃的な甘いメロディーが折り重なり、従来なかった世界観を表現している。

5曲目When You Sleepと6曲目I Only Saidの両曲は、アルバムにおいては明朗なリズムとメロディを持ち、バンドがエフェクトだけに依存しているのではないということを印象付けている。そしてアルバム最後の曲、Soonは、ブライアン・イーノに「『Soon』はポップの新しいスタンダードとなるだろう。かつてヒット・チャート入りした曲のなかで、これ以上に曖昧で不明瞭なものをぼくは知らない。」と言わしめる名曲であり、固いビートと激しいノイズと不協和音の間隙を、甘いしかしダウナーなヴォーカルが絡み付く、圧倒的な世界観を見せ付けてくれる。

発表から18年の時が流れても、これ以上の緻密さと破壊力と甘美さを併せ持つアルバムを僕は知らない。名盤中の名盤。

 

Loveless by My Bloody Valentine

 

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