三橋貴明氏著、「本当はヤバくない日本経済 破綻を望む面妖な人々」を読了。
痛快な本である。この本に書かれていることが事実かどうかの検証はしていないのだが、これだけ具体的な数値を情報提供元のソースと共に示されれば、説得力があるというものだ。
本書では、日本のマスメディアが騒ぎ立てる「日本経済破綻論」、「日本政府破綻論」、「日本国の未来崩壊論」が、まったく根拠のないでたらめであるということを、個別の根拠を示しつつ提示したうえで、今後日本が世界の中でどのように進んでいくべきかを示している。
このブログを読んでくださっている皆さんの中にも、日本のマスメディアが、何故いつも政府や日銀などが執る施策を叩くことしかしないのかと苛立ったり呆れたりしている方も多いのではないかと思う。僕自身もその一人なのだが、本書はその苛立ちや諦観が何故起こるのかを、「証拠」とともに示してくれる。
たとえば、もう耳にタコができるほど繰り返しメディアで叫ばれている、「日本は外需依存国家で輸出産業に依存しているから、円高になると輸出産業中心の日本経済は大打撃を受けて崩壊する」という論調がある。
こちらについて、新聞や週刊誌で、「日本が外需依存国家である」根拠を示している例があるだろうか。僕は見たことがない。
本書では内閣府、総務省、JETROのデータを基にアメリカ、イギリス、ドイツ、中国、韓国、ロシア、日本の7カ国の輸出対GDP比率を計算したところ、なんと日本は15.5%で7カ国中6位であった。1位のドイツの輸出対GDP比率は40%、2位の韓国は38.3%である。日本が輸出に依存しているということが、いかに「イメージ」、「印象」で語られているかが良く分かる。
また、同じ輸出でも、我々はどうしても「自動車」や「精密機械」などが日本の輸出品の代表だと思っているが、これもデータを提示されると、マスメディアが垂れ流す誤った情報に染められてしまっていることが分かってゾッとする。日本の輸出品の70%以上は工業用原料と資本財(最終商品を作るための部品など)で占められており、自動車や精密機械などの占める比率は低いのである。
リーマンショック後の金融危機について、筆者は必要以上に楽観しろと言っているわけではない。トヨタをはじめ日本を代表する企業が続々と赤字を計上し、日本でも失業率が上昇し、多くの国民が不況に苦しんでいるのは事実だからだ。
だが、何故そのような状況が起こっているのかの分析が間違えば、当然対処方法も正しい選択ができず、結果現状よりもさらにひどい状況が発生してしまう可能性が生じる。そして筆者が言っているのは、日本のマスメディアの多くが、間違いだらけの報道を垂れ流し続け、国民をミスリードし続けているという事実である。
日本企業が巨額の赤字を計上することになった最大の理由は円高でもなく日本が輸出依存国家であるためでもなく、世界中の人たちが物を買わなくなってしまったからに過ぎない。確かに輸出型ビジネスの日本企業にとって円高は好ましい状況ではない。だが、問題は円ドルレートが5円上がったことではなく、アメリカの新車販売台数が前年比で30%も40%モ下落してしまうという異常事態である。
例を挙げ続けるときりがないので、あと一つだけ。中川昭一財務相の「もうろう発言」ばかりが大騒ぎされたIMFにおける日本の役割だが、実はこの時の中川昭一財務相はじめ関係者が決断した1,000億ドルのIMFへの緊急融資は、今回の金融危機で連鎖的に新興国で財政破綻が発生する最悪の事態を回避した、非常に重要な事項であった。日本のマスコミは中川大臣の会見での不始末ばかりを延々と垂れ流し、日本はもうダメだ、と囃し立てていたわけだが、今回の危機で日本が果たした役割の大きさについて、もう少し中立的な見方はできなかったものだろうかと悔やまれる。
必要以上に楽観的に物事をとらえる必要はないし、危険でもあることは承知している。だが、何でもかんでも自分たちの政府を叩いて嬉々としているマスメディアの存在自体に意味はないのではないかという思いを強めた一冊であった。本書の内容を鵜呑みにすることは危険かもしれないが、このような視点があり、説得力もあるということ認識したうえで、日々の情報に触れる必要があるだろう。読んで良かった。
私はヤバイと思いますよ。
とりあえず、↓を見て貰いたいのですが・・・。
http://homepage3.nifty.com/joharinokagami/110001.html
これから考えられること。
・日本経済の要である「内需産業」が衰退する。
・優秀な技術者が減っていくので「外需産業」が衰退する。
ちなみに、私はテレビも新聞も見ませんし、ラジオも聞きません。ああいったものは、暇潰しの手段でしかありません。