美味しい鰻が食べたくなり、久し振りに南千住の尾花を訪れた。個人的には東京で鰻といえば、東の横綱がこの尾花、西の横綱が飯倉の野田岩ということになる。
場所は南千住の回向院脇の常磐線沿いの寂しい道を5分ほど歩いたところ。江戸時代の小塚原刑場のすぐ近くである。再開発が進んでいるとはいえ、今でも尾花周辺は決して賑やかではない、それどころかどちらかといえば寂しい一帯にある。
夏の土用の時期には長蛇の列となり、僕自身も最大で二時間以上並んだ経験があるが、立冬の日の午後5時には、さすがに行列は短く、僕らが到着した時には10人ほどが待っているだけで、5分程度で入店できた。
店内は大広間となっており、狭い間隔でお膳が並べられており、隣の会話は全部丸聞こえである。この雰囲気もこの店独特のもので、特に日が暮れた後は、何とも言えない風情である。
客層は幅広いが、比較的年配客が多い。従業員の女性も年配の方が多いので、賑わってはいるものの、全体的なトーンは落ち着いている。
ビールは大瓶はアサヒ、キリン、サッポロから選べるが小瓶はアサヒのみ。小瓶のアサヒと、うざく、白焼き、そして鰻重の一番小さいサイズを注文。本当は焼き鳥やうまきも食べたかったが、そこまでは入らないので我慢。
メニューを見ていて気付いたのだが、以前は「時価」とだけ書かれていた蒲焼きの大筏に値段が入っていたことだ。「13,000円ぐらいより」、と書かれていて笑う。一度は試してみたいが、まだ僕には分不相応という感じだ。
うざくをつまみつつビールを飲み干し、続いて冷酒に移行。鰻が出てくるまでは45〜50分程度かかるので、お通しも食べてしまうと何もなくなってしまう。やはり焼き鳥を頼んでおくべきだったと後悔しつつ鰻を待つ。
そして待望の鰻登場である。以前は白焼きと鰻重でタイミングをずらしてくれたが、今回はほぼ同時に出てしまい残念。10でもずらしてくれると、両方あつあつで頂けるのだが、その辺りの心配りは復活させてもらいたいものだ。
だが、白焼きに山葵をつけて頬張ると、そんな文句もどこかへ飛んでいってしまうほど美味しい。ふわふわに蒸し上げられた鰻にかりっとした焼き目がつき、まさに芳醇という感じである。これが実に日本酒に合うのだ。
そして鰻重である。これも至福という言葉がぴったりの高水準。尾花の方が、飯倉の野田岩よりもたれがパワー系でハッキリしている印象である。タレが濃いのだ。下町風という印象なのだが、これが実に美味い。蒸し加減、焼き加減、そしてタレとのマッチング、全てが調和され、ハーモニーを奏でている。
そして忘れてはならないのが、ご飯の美味しさだ。鰻の下に隠れてしまっているが、つやつやのご飯もとても美味しくて、普段丼物ではご飯残す習慣にしている僕でも、残さず全部いただいてしまえる。
心も身体もすっかり満足して、お会計は12,000ちょっと。前よりちょっと上がったかな?気のせいかな?いずれにしても大満足で、南千住を後にした。いつまでもこの水準を保ってもらいたいものである。
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尾花 (うなぎ / 南千住、三ノ輪橋、三ノ輪)
★★★★★ 5.0
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