堀江貴文氏著、「夢をかなえる「打ち出の小槌」」を読了。
ホリエモンが書いた自己啓発本である。勝間和代氏、小飼弾氏らも含め、僕と同世代のこれらの人々は強い危機感を持って現代日本の若者にエールを送っている。この本でも著者ホリエモンは「日本の若者よ目覚めよ」と檄を飛ばしている。
日本の若者に元気がないことは今更言うまでもないことで、その状況を何とかしようとい意気込みは、残念ながら政治家や大企業の経営者達から見て取ることができないことも周知の事実。
「格差社会」とは実は「世代間ギャップ」という言葉を口当たり良く表現しているもので、「世代間ギャップ」とは、高齢者ほど金を持っていて若年層が持てないという状況を分かりにくくぼかしているに過ぎない。
要は若者が従来得られてきた権益を奪うことで、一定以上の年代の人々が「滑り込みセーフ」となるよう、政治家や財界の人達は総出で突っ走ってきているのだ。
だから、若者の困難な状況を根本的に変えようという動きは、年配の人々からは出てこない。当たり前のことだ。
そんな状況を「なんとかせねば」と声高に叫んでいるのが、僕らと同世代の成功者である。彼らはバブル前の既得権益とは無縁に自分達の力で成功しのし上がった「ポスト・バブル」な世代で、彼らは若者側に立っていると自覚し、反発する力も失ってただ萎縮するばかりの若者達を何とか奮い立たせようと必死だ。
そしてこの本もまさにそういったテーマで書かれているので、本来僕のような40歳の人間が読むためのものではなく、10代、20代の若者がターゲットとなっているものだろう。
コンセプトはとても良い。上述したとおり、自らの成功体験を伝え、既存の価値観に縛られるなというエールはとても共感できるし、「お金より信用を貯めろ」という主張ももっともだし僕自身も見習うべき点も多い。
だが、その一方で本書はあまり親切な本ではない。精神論が大半を占めてしまい、どうすればホリエモンのように生きられるのか、彼がどうやって成功したのかに関しての具体的なアドバイスがないのが残念だ。勝間氏の著書が参考資料やウェブサイトなどの具体的に役立つ事例を山ほど用意しているのとは対照的で、果たして本書のターゲット読者であろう若者達はホリエモンの主張を目の当たりにして、最初の一歩を踏み出すことができるだろうか。疑問である。
あと気になったのが、本書では必要以上に極論に主張が触れてしまっているように感じられる点が散見されることだ。「フェラーリを最近売った」とか「毎晩深夜まで会食・飲み会が続く」とか「アークヒルズクラブにTシャツで入ったのは私だけ」などの記述は、自慢がしたいのか他人に勇気を与えたいのかがよく分からなくなってくる。
ただ、ホリエモンの頭の回転の速さや攻撃性などの魅力もたっぷり詰まっていて、とにかく勢いがあることは間違いない。僕は彼のブログもTiwtterもフォローさせてもらっているが、彼の魅力は粗削りで極端ながら、頭の良さとその回転の速さ、そして勢いだと常々感じているのだが、本書にもそれは見事に再現されている。
ホリエモンは最近著書を出版しまくっているが、もう何冊か読み続けてみようかと思う。良くも悪くもホリエモンという感じの本だった。
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