村上春樹氏著、「回転木馬のデッド・ヒート」を読了。
この本は10年以上前に購入し、何度も読み返している。今回久し振りの再読。
今年後半は実用書ばかり読んでいて小説やエッセイを読んでおらず、年内になにか一冊小説を読みたいと思い、この短編集をチョイス。僕は村上春樹氏は短編より長編が好きなのだが、この短編集は好きだ。
で、「小説」書いてしまっているが、実はこの短編集は厳密な意味では小説ではない。なぜなら、ここに書かれている話は実話ばかりだからだ。
村上春樹氏が周囲の人から聴いたちょっと不思議だったり日常の中の非日常だったりした話をまとめたもので、彼自身もこの短編集は「正確な意味での小説ではない」と述べている。
従って、この本にまとめられている8つの物語に出てくる「僕」は小説の主人公としての架空の「僕」ではなく、著者村上春樹であるというのも、実はとても特殊かつ貴重なものである。
村上春樹氏の短編はどれも長編と比較すると物語全体が静寂に覆われたように静かなものが多いが、この短編集もやはり全体的にとても静かな物語が多い。
8編のうち、特に気に入っているのが35歳の誕生日に自分の人生の「折り返し地点」はここだと決める男の話、「プールサイド」。最初に読んだ時僕はまだ35歳になっていなかったが、今こうして自分が40歳になってから読むと、以前とはまた違った感慨があるものだ。
久し振りに小説を読んで楽しかった。来年は実用書ばかりではなく小説ももっと読もう。
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