2010年の1冊目、澤上篤人氏著、「投資は世のため自分のため」を読了。
以前読了した勝間和代氏の「お金は銀行に預けるな」や堀江貴文氏の「夢をかなえる打ち出の小槌」などに長期ローンを組んで家を買うことの危険さがあれこれと主張されていて、勝間氏の本ではその代わりに「投資信託等による長期安定投資を行うべし」と書かれていたのだが、本書では、より具体的に長期安定投資について簡単に分かりやすく説明してくれている。
著者の澤上篤人氏は日本における長期運用型独立信託の元祖「さわかみ投信」を率いるさわかみファンド主催者であり、いわゆるこの道のカリスマである。
本書は見開き1ページを1テーマとして挿し絵も挿入された「絵本」という体裁を採っている。もちろん子供や若者も想定読者になるだろうが、金融リテラシーが低い(僕のような)日本の大人にとっても、長期運用の意義や効果が非常に分かりやすく書かれた素晴らしい本だと感じさせられた。
「絵本」という体裁のためか、一部理想論が勝ち過ぎている部分もなくはないのだが、本書には以下の3つ、とても優れた点があると思う。
1. 投資のスタートは「自分だけが勝つ」ではなく、「長期運用型投資で経済のパイ自体を大きくして『みんなで勝つ』ことが必要だと説いている点。
2. 「みんなで勝つ」という主張自体は勝間氏の本と同じだが、具体的に長期運用型投資を国民が皆で行うとどのようなメリットが日本にもたらされるかについて、とても分かりやすく、しかも正しい方向に(と少なくとも僕には思える方向に)導いてくれている点。
3. 「投資」「運用」という行為自体に不慣れで警戒感を持つであろう読者の心理を確実に把握したうえで、それを安心ささるような解決方法について具体的に書かれている点。
長期ローンを組んでのマイホーム取得が現代においてどのようにリスクが高いのかについても、「勿体ない点」と「危険な点」に分類したうえで解説されており、とても分かりやすいうえに説得力もある。
いずれにしても、日本はバブル崩壊と経済の成熟化が同時にやってきてしまったため、人々はずっと不況が続いていると勘違いしているが、実は欧米もすでに通過した市場の成熟化という洗礼を受けているため、二度と高度成長時代のような雇用体系や社会保障体制には戻れないのだという主張は実に正しいし、その成熟化した市場で自分がどうやって生き残っていくべきかについて、真剣に考え自分の人生の舵取りをしていくべきだと強く感じた。
澤上氏は他にも何冊も本を書いているようなので、それらも一読してみようと思う。新年から素晴らしい本に出会えたことに感謝である。
コメントする