2010年2冊目のブック・レビューはジョー・ヴィターレ氏著、「宇宙スイッチ」を紹介したい。原題は"The Attractor Factor"、翻訳は住友進氏。
そもそも「宇宙スイッチ」という書名だけでは、一体何の本なのか、小説なのかエッセイなのか実用書なのかも分からないだろう。そこでサブタイトル「望むものすべてにたちまちつながる究極の5ステップ」を見て、ああなるほどこれは自己啓発本なのだな、と分かるという寸法だ。
今まで自己啓発本はほとんど日本人が書いたものばかり読んできたのだが、本書はイタリア系アメリカ人の著者によって書かれているせいもあってか、あらゆる意味で日本型自己啓発本とは異なっており、その点かとても新鮮で面白かった。
日本型の自己啓発本の多くは「粘り強く継続される努力」が大前提となっていることが多いが、本書は努力という観点からはまったく書かれておらず、むしろ即物的といっても過言ではない内容となっている。
著者が謳う「望みがかなう5つのステップ」は以下のとおりである。
1. 「自分が望んでいないこと」は何かを知る
2. 「自分が望んでいること」は何かを知る
3. 「自分の意志」をはっきりさせる
4.「すでに望みはかなった」と感じる
5. 宇宙にすべてをゆだねる
以上である。この項目名だけを見て、著者が何を言おうとしているかが理解できるだろうかというと、それは無理だと思うので、興味を持った方は一読してもらうしかないのだが、要は「やりたくないこととやりたいことをしっかり認識して、どうなりたいかという意志を持つ。そしてその意志はもう叶っていると強く信じるとともに、その結果は宇宙に委ねてしまい、じたばたしない」という感じだろうか。
面白いのは、努力もしないし強く願いもしないという点だ。望みが叶うかどうかは「宇宙」が決めることなので、叶わなかったらそれは宇宙が叶うべきではないと判断した結果だから受け止めろ、という流れになる。なんか日本のおみくじみたいだ。
意志を決めてその願いはもう叶っていると感じることで、著者が言う「宇宙スイッチ」が作動し、その願いは次々に叶っていくという部分だけを読むと、正直あまり信憑性がないというか、半信半疑という感じになってしまうが、どちらかというとその前段階が重要で、「臨んでいない結果に物事が落ち着いてしまうのは、本当はその結果を心の奥底では臨んでいるからだ」というパラドックスについては、最近日本でも言われるようになってきているが、真実だと感じる部分があるし、「望んでいいる結果以外は実現しない」という言葉にもうなずく部分が多々ある。
ただ、結局最後は「奇跡」とか「スピリチュアル」という言葉に落ち着いてしまう部分があり、こうなってきてしまうと、正直「信じるものは救われる」なわけで、もはや自己啓発とは言えない世界に突入してしまっているような気もしなくはないが、日本人の「努力型自己啓発」とは対極的な考え方が気持ち良いし、これもまた真だなと感じた。
それにしてもイタリア系アメリカ人が書くと、「望み」はここまで即物的に本に書いて良いのかと呆れるやら笑っちゃうやらで、本筋とは関係ない部分でも楽しめた。どんな風に即物的かは読んでのお楽しみだが、一つだけ紹介すると、多額の報酬とともに自伝の執筆を不本意ながら引き受けた著者が、他の仕事を優先したいと願っていたところ、その報酬を支払った依頼者が逮捕され投獄されてしまったため、お金は返さなくて良くて、しかも執筆は本人の出所後でも良くなって、「望みがかなった!」「軌跡だ!」となるわけである。
日本でこんな書き方をかたら袋叩きに遭うと思うのだが、イタリア人てのはやはりこういうものなのだろうか(^_^;)。
望みをかなえるために考えるべきことにぐっと幅が出来たという意味で、とても意義深い一冊であった。
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