本書は勝間和代氏の「お金は銀行に預けるな」の中で、投資信託に関する学習に役立つ参考資料として書名が挙がっていたもの。
正直言って、役に立った部分が2割、役に立たなかったと感じた箇所が8割というところだろうか。もちろんこれは僕の個人的主観だ。
役に立った部分としては、投資信託という金融商品の仕組みや成り立ち、そして特性に関する一般的な説明部分で、自分なりに知っているつもりだったことをきちんと学べた点は非常に有意義であったし、読んで良かったと思わせてくれた。
一方で本書があまり有効ではないと感じられた箇所については3つの問題がある。いずれも本に問題があるのではなく、外部環境のせいと言えよう。
第一に、本書は投資信託について書いている本ではあるが、投資信託による資産形成を指南するガイドとしては機能していない。要はミッション主導ではないのだ。
僕が知りたかったのは、例えば60歳までに投信への投資で一定額以上の資産を構築するための商品選びのコツやリスク、そしてアドバイスなどである。
だが本書はそのような購入者側の立場に立った指南書ではなく、単なる解説書となっていて、初心者向けとは言い難い内容となっている。「ナンピン買い」などという専門用語を何の解説もなく出してきても初心者の読者は戸惑うだろう。この点は残念だったし拍子抜けでもあった。
第二に、本書が書かれた時からの時間の経過による金融環境の変化に伴い、情報の鮮度が落ちてしまっている点。
本書のタイトルは「10万円から始められる投資信託入門」で、本編で著者も述べているが、この本が書かれた2004年当時は、投信は10万円が最低単位だったのだ。
ところが2010年には、投信は1,000円から買える時代となっている。購入単位が6年の間に1/100になってしまったのだ。また、この当時は売買手数料が掛からない「ノーロード型」投信などはまだ存在しておらず、手数料が3%程度かかることが前提とされているなど、全体的に情報が古いのが痛かった。
そして第三に、この本は上げ潮の時期に書かれており、長期運用を前提としていないという点。
2003年までの長期低落相場を終え、2004年から2005年に掛けて、日本の株式市場は数十年に一度といわれるような大型上昇相場だったたわけだが、本書はまさにその時期に書かれており、短期売買でキャピタル・ゲインを得ようというムードがムンムン漂っている。
長期運用で安定したリターンを得たいと思って読み始めた本で、短期売買の話を書かれると(しかも売買手数料が高いため、相当の利益を目指しているように思える)、正直何の本を読んでいるのか分からなくなってしまう。
というわけで、残念な点もいろいろ出てしまったが、投信の仕組みや種類とその特性など、しっかり抑えておきたい部分の勉強にはなったと思う。目的意識をしっかり持って読めばOKだろう。
posted with amazlet at 10.02.02
稲葉 精三
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初心者には不適参考になる部分もあるが・・・・ |
いつも楽しく読んでいます。本のレビューは大変興味深く読んでいます。
下世話な質問で恐縮ですが、いつも本は新品のものを購入されるのでしょうか?本もたくさん買うと結構お金かかりますよね。たくさん買った本はどうしてるんだろう、お金は続くのか、本の置き場所には困らないんだろうか。
余計なお世話ですみません。
ちなみに私は図書館を良く利用します。
とらさんこんにちは!いつもありがとうございます。
僕も本は図書館から借りてくるものが多いです。新刊書や人気のある本は時間がかかりすぎるので買うこともありますが、図書館で借りるものの方が多いです。
気に入った著者の方のものは買っている場合もありますが、やはり場所を取るので、借りた方がリーズナブルですね~。