初心者向けにシンプルかつ分かりやすく外貨に関連する金融商品の特徴が説明されていて非常に分かりやすく、勉強になる。
もともと勝間和代氏著「お金は銀行に預けるな」で本書を参考書として推薦していたため読んでみたのだが、初心者向けの「説明書」としては必要十分ではないかと思う。
外国為替の仕組みから円高・円安とは何かというような全般的な項目から、日本で積極的に売買されている外貨の種類の説明、外貨預金とFXの違いとその仕組み、その他の外貨金融商品の説明とい流れで、ほぼ初心者向けの疑問は網羅している良書であろう。
だが、本書についても、先日紹介した「10万円から始める投資信託入門」同様、幾つか注意点がある。投資を行う人は自己責任でというのは常識ではあるが、改めて確認しておきたい。
1. 時代は激変している
本書は冒頭で「円安」対する危機感を示すことから投資の重要性に関する説明をスタートしている。そう、この本が書かれたのは2007年、つまり今回の金融危機よりも前のことである。当時の円 = ドルレートは120円台、そして円 = ユーロレートは何と160円台だった。
ところが今では円 = ドルレートは80円台、円 = ユーロレートは120円台にまで激変しており、2007年当時とは、市場を取り巻く環境は大きく変化してしまっている。円安が進むという前提で書かれている箇所を、そのまま鵜呑みしてしまうのは非常に危険なことなので、注意しておくべきだろう。
2. 為替にテクニカル分析が有効か?
本書ではごく手短にテクニカル分析について説明しており、特にオシレーター系の指標を紹介しているが、僕は個人的に外為市場にはテクニカル分析は通用しないと思っている。また、株式のテクニカル分析においてさえ、オシレーター系指標はあてにならないという印象を持っているため、テクニカル分析に興味を持たれた方は要注意だろう。
3. 投資スタンスに関する導きはない
本書では、どのような金融商品があって、それぞれどんなメリット・デメリットがあるかについては説明されているが、それらの商品をどのような戦略で購入すれば良いか、株や債券、投信などとどのように組み合わせるべきかという、投資家の基本スタンスに関する導きは何もない。
つまり目的がないまま方法論だけが語られているため、この点には十分注意が必要だろう。小額でいろいろ試しながら勉強をして、その間にポートフォリオを作ろうというなら良いが、余裕資金を全額FXに突っ込んでしまうようなことは絶対避けるべきだろう。
というわけで、基礎を学ぶという意味では良書だと思うし、必要以上にFXを煽るようなことを書いていない点好感が持てるが、注意すべき点も多いと感じた。
しかしこの手の金融商品本ほど激しく変化している分野はないのではないかと感じている。最新情報を得続けることが必要だ。
あと、本書はサブタイトルが良くない。「小額投資で大儲けする人がいるって本当なの?」
このサブタイトルは余分だろう。まあ、売るために仕方がないのかも知れないが、こういうことを書くから、FXは濡れ手に泡だというような間違った印象が広がってしまうのだ。
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外貨を始めようと考えている方にはいいかも買ってまで読むには内容不足 FXがどんなものかはわかると思います 外貨預金やFXの基本的な仕組みを知る本としては最適 初心者向けの最初の1冊として良いと思う。 |
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