本や新聞を読んでいて数値的根拠が示されていると安心するものだ。
だが、そんなに簡単に信じてしまってはいけないようだ。本書を読むとそれが分かる。
驚いたことに、この本は日本語訳の初版が出たのが1968年である。
僕が生まれるよりも前の本だ。昨年第85刷が出ている。超ロングセラーである。
この本のタイトルは「統計でウソをつく法」だが、このタイトルはもちろん逆説的につけられたものだ。
統計でウソをつく法 (ブルーバックス)
ダレル・ハフ 講談社 1968-07-24
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サンプルが偏れば数値はどうにでもなる
日本人全員からアンケートを採ろうとすれば、1奥2000万人以上から回答を得なければならない。
とうぜんそんなことはできないので、可能な範囲でサンプルを抽出してアンケートを行う。
この時にサンプルが偏っていたら、結果はその偏りを反映する形に変質してしまうだろう。
本書は1968年頃にアメリカで出された本だが、現代日本の例を出そう。
「例えば、日々の情報を得る方法として、どのようなメディアを使っているか?」というアンケートを採るとしよう。
この時に、サンプルを秋葉原にいるギークな若者ばかりを選んで1,000人ピックアップするのと、地方の老人ホーム入所中のお年寄り1,000人から抽出するのとでは、まったく違う答えが出てくるに違いない。
サンプルは極力偏りなく抽出されるべきだ。
だが、時として、このような偏りが発生することを前提にアンケートが行われるので注意が必要だ。
特に現代の日本のように世代間ギャップが問題とされる時期には、メディアによる偏向した調査の可能性を否定できない。
しっかり裏を取って冷静に判断することが必要だ。
グラフの一部だけを拡大すれば
これは意図的に使われることが多い事例だ。
たとえばボーナスが3%減額されたということをグラフで表すときに、その3%の触れ幅をわざと大きく見せたいときには、グラフの縦軸をタテに長くすれば良い。
もっと派手に見せたいなら、増減幅だけを切り出し、タテ軸はその増減の幅だけしか表示できなくすれば、ものすごく大きな現象というように見える。
さらにパーセンテージとパーセンテージポイントの意図的な操作も良く行われる。
前年3%だったものが6%になった時。「3%の増加でした」といえば、緩やかな印象になる。
だがこの時、「100%倍増」と言ってしまうこともできるのだ。
グラフは視覚的に僕らの記憶に残りやすく洗脳されやすいので、一層の注意が必要だ。
原因と結果を逆にしてはいけない
これも意図的に良く使われる手法。
原因と結果をひっくり返してしまうというもの。
一番分かりやすい例として、本書は学生の喫煙と成績の因果関係を挙げている。
アンケートもとに調査をしたところ、ある大学では、喫煙者グループの方が非喫煙者グループよりも成績が悪かった。
ここまでは統計による事実だ。間違いない。
だが、ここからが問題になる。
大学関係者は、この結果を「たばこを吸うと成績が下がる」というロジックで使ったのだ。
アンケートはそのような因果関係をまったく証明していない。
だが、往々にしてこのような操作が行われ、我々には本来の「事実」とはまったく異なる「結論」が突如提示されてしまうのだ。
まとめ
冒頭に示したとおり、本書は統計でウソをつく方法を教示する悪の書ではない。
統計に騙されないためには、どのようなトリックがあるかを知り、そのような操作が行われていないかを見破るクセをつけよう、ということだ。
統計は往々にして、その数値を公表する組織・団体にとって都合が良いように偏った形で公表される。
数値の改竄をすればそれは問題だが、本書では改竄と呼ばれない、だが数値の見せ方やサンプルの取り方での操作の方法が数多く提示されている。
かつて、牧歌的な時代があった。
僕らの親世代は、「テレビが言ってるんだから正しいでしょ」という価値表明をしたものだ。
だが、これからの時代、そのような大らかな価値判断は当分できそうにない。
メディアが出す数字の裏を、取れるようになろう。
21世紀のサバイバル術。読んでおいて損はない。
追記: 本書「統計でウソをつく法」のレバレッジ・メモを僕のFacebookページで公開しました。
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著者/出版プロデューサー/起業支援コンサルタント/ブロガー/心理カウンセラー。
あまてらす株式会社 代表取締役。
著書に「やってみたらわかった!40代からの「身体」と「心」に本当に良い習慣」「起業メンタル大全」「「好き」と「ネット」を接続すると、あなたに「お金」が降ってくる」「ノマドワーカーという生き方」など全9冊。
神奈川県鎌倉市の海街在住。