musicに関するエントリー

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今週のミュージック・レビューは、1985年にリリースされた、スコットランド出身の4人組、ジーザス・アンド・メリーチェインのデビューアルバム、「サイコ・キャンディー」を紹介しよう。前回My Bloody Valentineの"Loveless"を紹介したら、勢いが付いてしまった(^_^;)。

バンドは1984年に結成、デビュー・シングルの"Upside Down"は60年代のポップスを彷彿とさせる甘いメロディーに、耳をつんざくばかりのフィードバック・ノイズに包まれ、全英に衝撃を与え、その衝撃的な音は日本にも圧倒的なファンを作った。

そして翌年に発表されたデビュー・アルバムが、この"Psychocandy"である。Upside Downの時とはドラムスが交代しており、後にPrimal ScreamでVocalとなる、ボビー・ギレスピーが加入していた。

このアルバムを3つのキーワードで解くとすれば、「甘美」、「狂気」、「ノイズ」のではないかと思う。1曲目"Just Like Honey"はまるでシュープリームスのカバーかのように甘いメロディーと、リバーブが効き過ぎて風呂場で鳴っているようなドラム、それに被さるギターのフィードバック・ノイズが、どこまでも甘く、狂気を孕んだノイズな世界を僕たちにもたらしてくれる。

アルバムを通じて、メロディーラインは基本的に分かりやすく、どちらかというと甘い。アップテンポの曲は全編がフィードバック・ノイズに包まれ、バラードの曲は音数を減らしてメロウに仕上げつつ、それでも後半はやはりフィードバック・ノイズがぎゅいんぎゅいんと鳴っている。大音量で聴くと、僕らにある種の高揚感を与えてくれると同時に、あまり長時間聴くと耳がおかしくなるという副作用もある(笑)。

このアルバムが発売された当時、僕は高校生だったが、初めて聴いた時にはぶっ飛んだ。従来にない音と世界観で、それまでアメリカのヒットチャートを追いかけて聴いていたのが、これを境にイギリスの音楽シーンに傾倒するきっかけになった。

個人的にはJesus and Mary Chainのアルバムの中では、このファーストが一番好きである。2nd以降はドラムのボビー・ギレスピーが抜け、後任を補充せずにドラムはリズムマシーンにしてしまったため、大きく印象が変わってしまった。また、全体の作りも2nd以降はフィードバック・ノイズが徐々に鳴りを潜め、オリジナリティが失われていったように感じている。

余談だが、僕は彼らの初来日のライブを観に行っている。場所は懐かしのインクスティック芝浦ファクトリー。前座が1時間演奏したのにメイン・ステージはわずか45分という短さで、しかも最後の15分はただひたすらギターがエコーで繰り返されているという始末。パンクな外人達はステージ後ろの金網にどんどんよじ登り始め、手に持ったウォッカやビールの瓶を、僕らの頭越しに投げつけるという、ある意味すさまじいライブだった(^_^;)。

色んな意味でとんがっていて、圧倒的なインパクト。まさに青春の音である。今聴いても、やっぱり凄いな。もう一度、あのインクスティック芝浦の演奏を聴いてみたい、そんな気にさせるアルバムである。

 

サイコキャンディ

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Music Review、今回は僕に大きな影響を与えた、青春後期の金字塔、My Bloody Valentine(マイ・ブラッディ・バレンタイン)のLoveless(ラブレス)というアルバムを紹介したい。

My Bloody Valentineはアイルランド出身の4人組で、リーダーのケヴィン・シールズとビリンダ・ブッチャーの男女ヴォーカルと、ノイズという言葉では片付けられないような、幾層にも折り重ねられた「轟音」「爆音」、だが全体としては細密描写のように美しい世界観が特徴のバンドである。

このアルバムは僕が大学3年生の頃、1991年にリリースされた。My Bloody Valentineは寡作なアーティストで、アルバムは2枚しか発売されておらず、本作が今のところ最新のもの。バンド自体は長らく事実上の解散状態にあったが、2007年に再結成を発表し、2008年には待望の来日を果たし、フジロックに出演した。

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僕は高校時代にJesus and Mary Chainの"Psycho Candy"に出会って以来、ブリティッシュのいわゆるオルタナティブというかノイズ系の音楽は好んで聴いてはいたのだが、このLovelessは、彼らが所属していたクリエイション・レコードが倒産しかかるほどの制作費(4,500万円)をかけたといわれ、比類のない世界観が発売と同時に大きな話題となり、既存のオルタナティブ・ロックの価値観を丸ごと消し飛ばす破壊力を持って当時の僕の耳にも飛び込んできた。

重厚なギターの音色はサンプリングされ幾重にも多重録音され時には逆回転で録音されている。男女のヴォーカルは甘く気だるく、どことなく神々しい。メロディーラインはメローなポップ調のものが多く、だがそのメロディーとノイジーなサウンドのミスマッチは、どこまでも美しく、その一方で鈍器で殴り付けるような狂気を孕んでいる。

そして何と言ってもMy Bloody Valentineを特徴付けているキーワードは「歪み」である。1曲目のOnly Shallowは曲全体にフランジャーのようなエフェクトが施されており、大音量でこの曲を聴くと、大きなうねりの中に放り込まれるようだし、4曲目のTo Here Knows Whenは「轟音」とも表現できる重低音の歪みがベースにある中、神々しくも退廃的な甘いメロディーが折り重なり、従来なかった世界観を表現している。

5曲目When You Sleepと6曲目I Only Saidの両曲は、アルバムにおいては明朗なリズムとメロディを持ち、バンドがエフェクトだけに依存しているのではないということを印象付けている。そしてアルバム最後の曲、Soonは、ブライアン・イーノに「『Soon』はポップの新しいスタンダードとなるだろう。かつてヒット・チャート入りした曲のなかで、これ以上に曖昧で不明瞭なものをぼくは知らない。」と言わしめる名曲であり、固いビートと激しいノイズと不協和音の間隙を、甘いしかしダウナーなヴォーカルが絡み付く、圧倒的な世界観を見せ付けてくれる。

発表から18年の時が流れても、これ以上の緻密さと破壊力と甘美さを併せ持つアルバムを僕は知らない。名盤中の名盤。

 

Loveless by My Bloody Valentine

 

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購入以来すっかりお気に入りのBOSEのノイズ・キャンセリング・ヘッドフォン、QuietComfort3だが、ここ数日、iPhone用のモバイルコミュニケーションキット(マイクがついていて通話ができる、ただしリモコン機能はなし)の調子がおかしくなってしまった。

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要は接触不良で、音が出たり出なかったり、雑音が入ったり途切れたりで、ひどいときにはまったく音が出なくなってしまうのだ。

あれこれ調べてみたところ、どうもiPhone側のジャック周辺がおかしいらしく、ジャックの向きを変えたり、ぐりぐりやったりすると直ることもある(直らないこともある)。試しにモバイルコミュニケーションキットを外し、標準のケーブルに変えてみたところ、まったく問題なし。やはりモバイルコミュニケーションキットのジャックの問題のようだ。がーん!

それではということで、購入した銀座松屋の中にあるBOSE直営店に電話して確認したところ、保証対象になるとのことで、近日中に銀座店に持ち込んで修理だか交換だかしてもらうことになった。やれやれ。

幸い標準ケーブルであれば問題なく使えるので、いまのところ標準ケーブルを使って凌いでいる。高い買い物だったので、故障するとショックだよなぁ。どうせ壊れるなら保証期間内にしてほしい(マテ

QuietComfort3

 

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過去のエントリーを見ていただくと分かるのだが、僕はMacBookのHDDを500GBに増設し、iPhone 3Gから3GSへの乗り換えはまだ見送っており、その代わりにBOSE QuietComfort3ノイズキャンセリングヘッドフォンを買い、その音の素晴らしさに圧倒されたことをきっかけにiTunesへの楽曲の取り込みをAACエンコーディングから音質劣化がないとされるAppleロスレスに変更し、その結果ファイル容量の激増に悩む日々を送っている。

QuietComfort3

とにかくロスレス& QuietComfort3の組み合わせは素晴らしいのだ。ジャズやクラシックのピアノソロや管弦楽など、生音をベースにするものだと特に違いが分かるのだが、普通のロックやポップスでも十分過ぎるほど素晴らしい。BOSE QuietComfort3を装着していると、地下鉄に乗りながらキース・ジャレットの「ケルン・コンサート」がうっとりする音で聴けるのだ。こんなに素敵なことはない。

だが、一曲あたりのファイル容量も音質の良さと比例して大きくなる。5分ほどのポップスでも30MB程度、ケルン・コンサートの1曲目に至っては、20分以上という演奏時間のせいだが、一曲で110MB以上の容量を食う。

MacBookは問題ないのだ。冒頭に書いた通り、HDDを500GBのものに換装して、まだ300GBの空きがある。CDなんて何枚でも取り込める。

問題はiPhoneなのだ。僕のiPhoneは3Gの16GBで、それに対して現在のiTunesライブラリの容量は約64GBである。

ロスレスの魅力に取り憑かれてしまうまでは、ライブラリの容量は40GB強であった。僕が3GSを見送った理由の一つに、来年になれば64GBのタイプが発売され、iTunesライブラリは全てiPhoneに入れることができるようになるのではないかと思ったからというのがあった。

だが、ロスレス病に罹ってしまった僕のiTunesライブラリは一気に肥大化してしまい、たとえ来年64GBのiPhoneが出たとしても、とても全曲は格納できない状態になってしまった。

では、どうすれば理想の環境が作れるのか。最近そのことを考えていた。

僕にとって理想の環境は、以下の条件を満たす必要がある。

・iPhoneまたはiPodで、iTunesライブラリの楽曲を全曲持ち歩ける
・できるだけ多くの曲をAppleロスレス・エンコーディングにしたい
・ランニングの際には音楽は必須で、しかもRunKeeperなどのアプリも同時に使いたい

というようなことを考えていたら、先週のAppleのイベントで、iPod Classicが160GBに増量され、しかも価格が5,000円下がった。160GBなら、現状のiTunesライブラリから容量が1.5倍になっても全曲を格納できる。

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これは魅力だな。

整理すると、今後取り込む曲は基本的にロスレスになる。iPhoneには300曲強しか入らないので、音楽再生マシンとしては、ランニング時などに限定して音楽を聴く、いわばiPod Shuffle的な使い方をし、 それ以外のアプリをフル活用する。

で、ランニング時以外は、音楽はiPod Classic & BOSE QuietComfort3という組み合わせがベストではないか。とにかく全曲入り、ロスレスで聴けて、しかもノイズキャンセリング♬

今回発表されたiPod Touchの容量が64GBだったことを考えても、来年登場するiPhoneは恐らく64GBになるだろうし、僕はそれを買う予定だ。Nike+ iPodをどうしても使いたいし、セカイカメラや東京の地下鉄のようなARアプリも是非使いたい。

でも、来年の夏には、僕のiTunesライブラリは恐らく80GBや90GBになっているかもしれない。だとすると、当面160GBの容量を持つ新iPod ClassicとiPhoneの2台持ちは、ベストな選択のように思えるんだよね。

というわけでiPod Classicが欲しい今日この頃。でも予算がないんだよなあ。頑張って稼ぐか(^_^;)。

 

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今日は週末金曜日。あと一日会社に行けば週末がやってくる〜、という今朝の出来事です。

普段は朝の通勤時間は英語ニュースを聴きつつRSSを読みまくる時間なのですが、今日はちょっと疲れ気味だったので、たまにはいいか、ということで音楽を聴きながら出勤することにしました。

先月から、Macの"SweetFM"というフリーソフトを導入し、Last.fmからガンガン音楽ファイルをダウンロードして聴いているのですが、おかげで未再生の曲がどんどん溜まってしまいます。このSweetFMですが、音楽SNSのLast.fmのクライアントとして動作するアプリなのですが、Last.fmに料金を払うと、ストリーミング再生した曲を、再生終了時にダウンロードできてしまうという、驚愕のアプリです。しかも月額なんと3ドル!!3ドルでダウンロードし放題なのです。

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で、溜まった未再生曲をシャッフルにして聴きつつ地下鉄に乗っていたのですが、ある曲が終わり、次の曲が始まった瞬間に、僕はビックリして飛び上がりそうになりました。理由は、手に入れられずにずっと探していた曲が、何の前触れもなく突然流れ始めたからです。持ってないのに〜!!

それは、Jefferson StarshipというバンドのNo Way Outという曲なのですが、このバンド、結成当初はJefferson Airplaneと名乗っていて、60年代、70年代のロックファンにはお馴染みなのですが、その後メンバーチェンジを繰り返し、バンド名が飛行機から宇宙船へと変わり、さらにこのアルバムの発表後にもう一度バンド名を変更し、メンバー間の訴訟だののゴタゴタもあり、ただのStarshipとなりました。Starshipは"We Built This City"や"Nothing's gonna Stop us Now"なんかで有名な80年代バンドです。

Jefferson Airplaneはもちろん有名ですし、Starshipも大ヒット曲を持っていてそれなりに知られていますが、間に挟まっている"Jefferson Starship"は、あまり知られておらず地味な存在でした。でも80年代音楽コレクターを自認する僕としては、このNo Way Outは、是非手に入れたい曲であったのですが、なかなか入手できず、何年も経っていたのでした。

イントロが流れ始めた瞬間にNo Way Outだと分かり、飛び上がるほどビックリしました。最初何が起こったのか分かりませんでしたが、すぐに気付きました。SweetFMで音楽をダウンロードしている時は、流しっぱなしにしているので、席を外している時もずっと曲の再生とダウンロードが続いているのです。この曲も僕が席を外している間にいつの間にかダウンロードされ、iPhoneに同期されていたんですね〜。

BOSE QuietComfort3のおかげでうるさい地下鉄の中でも音質はバッチリです。あまりに嬉しくて鳥肌が立ってしまいました。

こんなことってあるんですねー。iPhone & Macの、思わぬ効用でした!でもこのSweetFMというアプリ、いかにもグレーゾーンな感じのアプリなので、いつまで提供され続けるか怪しい気がします。なので、利用してみたい方はなくなってしまわないうちに、お早めにどうぞ(^-^)。

なーんて書いて、最後に念のためと思ってiTSにアクセスしたら、No Way OutJefferson Airplane, Jefferson Starship & Starship - VH-1 Behind the Music: The Jefferson Airplane Collection - No Way Out、ふつーにiTSで売ってました。ぎゃふん。そういうオチか!!

 

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新ユニット結成とライブのお知らせです。といっても僕のことではありません(笑)。

ボサノバのヴォーカル&ギターの犬塚彩子(いぬづか・さえこ)さんと、作曲&編曲の大塚彩子(おおつか・あやこ)さんが合体し、謎のユニット「犬塚大塚」としてライブを開催することになりました。

春に我が家で開催となった犬塚彩子さんのライブに大塚彩子さんが飛び入りしたところ、予想以上に素晴らしいコラボであることが判明し、是非ライブをということになり、このたび開催の運びとなりました。

今回は僕は運営側ではなくお客さんの一人なので気楽です(笑)が、お二人から「宣伝部長」の役割を拝しましたので、こうして宣伝させていただく次第です。

元々お互いの存在を知ってはいたというお二人、まさか一文字違いのミュージシャンが同じ東京で活動しているなんて、そうそうないことですが、それ以上にビックリしたのは、前回のライブの際にお二人のコラボを聴かせてもらった時に、あまりにも息がぴったりで、お二人が作り出す世界観の奥行きに感動してしまったのです。

さえこさんの、たゆたゆと南国の海に浮かんでいるような歌とギターに、あやこさんのキーボードが重なった時、まるで目の前に、真夏のブラジルの真っ青な空と海、それに白い砂浜が、立体的に浮かび上がるようでした。

前回は数曲だけの飛び入り参加でしたが、今回は全面的なコラボレーションとなり、さえこさんとあやこさん、それぞれのオリジナル曲のお披露目もあるようですので、ご興味とお時間のある方は是非、会場まで遊びにきてくださいませ。

会場は外苑前の「ジマジン」というライブハウスです。

ご予約・お問い合わせは直接ジマジンさんへご連絡いただくか、あとは僕までご連絡いただければ、僕の方でまとめて予約いたします。僕のメールアドレスは、ttachiアットマークgmail.comでお願いいたします。席に限りがありますのでお早めに〜。

ではでは、皆様のご来場を心よりお待ちしております〜。

 

 

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先日椎名林檎のニュー・アルバム「三文ゴシップ」を紹介するエントリーを書いたのだが、その時につくづく音楽のレビューを書くことの難しさを実感させられた。

やはり耳から入ってくる情報を、言葉というまったく別の情報に置き換え、しかもそれを第三者に伝えるという行為は、しょっちゅう書いている読書記録とはまったく異なる難易度で、書き終えた後に読み返しても、ちっとも良さを伝えられていないという、もどかしさを強く感じた。

これはもうちょっと気合を入れて書かないといけない。ということで、音楽レビュー強化月間といったら大袈裟だけど、新作だけではなく、個人的に気に入っていたり気になっていたりするアルバムを紹介する機会を少し増やすことにした。

というわけで、強化策第一弾として、椎名林檎の「無罪モラトリアム」を紹介する。このアルバムは彼女のデビュー作であり、ミリオンヒットでもある。個人的には、彼女のアルバムの中で本作が一番好きだ。

アルバムとしてはこの「無罪モラトリアム」がデビュー作であり、全収録作品が彼女がデビュー前に書き溜めていたものだそうだ(Wikipediaより)。当時椎名林檎はまだ19歳である。その事実を前にすると、僕はただ呆然とするのみだ。どうしてこんな凄いアルバムが19歳のデビュー間もないアーティストに作れてしまうのか、と。

もちろん関係者間では期待の大物新人だっただろうから、プロデューサーやアレンジャーなども(アレンジャーは亀田誠二さんですな)気合を入れただろうし、レコード会社やテレビ局などのプロモーションにも力が入っていたのだと思う。だが、それにしてもデビューアルバムでこの破壊力というのは凄い。鋭利な刃物でバッサリ斬ってくるみたいなインパクトは、このデビューアルバムにおいて、最も顕著である。

名作揃いの本アルバムだが、中でも「正しい街」から「幸福論(悦楽編)」までの4曲は黄金期のジャイアンツの打順みたいに凄い(笑)。「正しい街」のイントロが流れるだけで、心がざわざわと騒ぎ、そして切なくもなる。ロックというよりはブルースに近いギターが19歳の音楽とは思えない世界観を見せてくれる。

続いては「歌舞伎町の女王」。この曲は椎名林檎の初期のエポック・メイキングで、次作「勝訴ストリップ」収録の「本能」と並んで、「新宿系」の代名詞となった名作で、ハードなロックなのだがその中にどこか演歌の侘しさのようなテイストがあり、それが東京の猥雑さを良く表していると思う。

3曲目は「丸の内サディスティック」。丸ノ内線の駅名と上京したばかりの音楽好きロッカー女子の生活をミックスし、言葉遊び歌的にシャッフルしている。最初の2曲とは雰囲気を大きく変え、ポップで軽快なリズムが特徴的。

そして4曲目「幸福論(悦楽編)」。オリジナルは椎名林檎のデビューシングルなのだが、アルバムに収録されたものは「悦楽編」とされ、シングル盤とはアレンジが異なる。シングル盤のゆったりしたリズムから一変し、アルバムでは畳み掛けるような速いリズムと激しく歪んだギター、ボーカルにもディストーションがかかり、ハードな曲に仕上がっているが、メロディーラインや歌詞が明るいため、アッパーな世界観がとても気に入っている。

とこの前半の4曲と、もう一曲のバズーカ砲として、8曲目の「ここでキスして。」が控えている。前半は音数を減らし、ゆったりしたリズムで始まるが、ストレートで激しい恋のメッセージを紡ぐ歌詞と相まって、サビに向かって一気にテンションが上がって行く、ドラマティックな曲だ。彼女の代表曲の一つだが、ライブDVDなどにはあまり収録されていない。

というわけで、他にも「シドと白昼夢」、「警告」、「モルヒネ」など、名曲はギッシリ詰まっているのだが、特に気に入っている5曲は上記のとおり。

アルバムとしてのパッケージとしての完成度も非常に高い、名作中の名作。本当に何度聴いても飽きません。お薦め。

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1ヶ月ほど前に、BOSEのQuietComfort3、ノイズキャンセリング・ヘッドフォンを購入したことについてはこちらのエントリーに書いたとおり(祝アビ様ご購入♪)。

 

 

 

 

 

 

 

購入してから一ヶ月間、毎日欠かさず使用しているが、その音質は本当に素晴らしく、自宅でもヘッドフォンをして音楽を聴くようになったほど。前回も書いたとおり、iPhoneとの親和性を高めるためのコネクタキットにはまだまだ改良の余地があると思うが、ヘッドフォン単体としての性能は本当に素晴らしいと感じている。

ところが、この夢見心地の高音質ヘッドフォンのせいで、それまで予想もしなかった新たな問題が持ち上がってしまった。

iTunesライブラリやiPhoneに格納されている曲の音質が気になるようになってしまったのだ。

ご存知の方も多いと思うが、CDに格納されているファイルをiTunesに取り込んだり、iTunes Storeから購入したりする際には、ファイルはMP3またはAACという形式で圧縮されているのだが、この圧縮の際にCDから、主に高音域の音を間引きさせることでファイル容量を圧縮させているのだ。

MacにiTunesが登場して、ガンガン音楽を取り込み始めたのはもう10年ぐらい前のことだと思うが、当時はHDD容量が少なく、く容量を小さくしてたくさん曲を入れたかったため、ごく当たり前のように、MP3で圧縮李もiTunesのデフォルトのままにしていた。

その後一昨年末に今のMacBookを購入してHDDが大きくなってからは、AACエンコーディングにして、ビットレートを最大値の320bpsににして保存することで、十分満足していた。

MP3のiTunesデフォルト値で保存すると、5分程度のポップスなどの音楽ファイルは1ファイルあたり3~5MBぐらいに、AACで高音質にした場合で、一曲あたり約7MB~10MB程度の容量になる。

ちなみにiTunesでの読み込みエンコードとビットレートの変更は、Macでは「iTunes」→「環境設定」→「一般」タブ→「読み込み設定」ボタンの順に選択し、「読み込み方法」メニューと「設定」メニューでエンコーディングとビットレートを設定する。

従来はそれで十分だと思っていたし、音質が気になったことはほとんどなかった。

だが、BOSE QuietComfort3が僕の手許にやってきて、状況は一変した。MP3で取り込んだ曲は、音が悪くてイヤになってくるのだ。違いがハッキリと分かってしまう。『俺はニール・ヤングか!』というほど(笑)、MP3なんかじゃとても我慢できない。

特に中高音に大きな差が出る。音の豊かさ、広がり、厚みといった、本来の音楽で一番「心地良い」とか「美しい」と感じる部分が、圧縮ファイルだとスカスカになってしまっているのだ。うわー、どうしよう。

というようなことを、Twitterでほんのちょっとだけ呟いたところ、Twitter仲間のPechiyonさんから、Appleロスレスの存在を教えてもらった。Wikipediaによると、Appleロスレス(正式にはApple Lossless)とは、「非圧縮ファイル(WAVAIFF)を元のサイズの60パーセント程度から約半分まで圧縮するが、可逆圧縮方式なので音質の劣化がまったくない」とのこと。うぉー!

ということで、まずは昨日レビューを書いた椎名林檎の「三文ゴシップ」を、従来のAACエンコードの場合とロスレスの場合で比較してみた。音質はやはりすごく良い。ロスレスだと、CDを直接再生している時とほとんど違いが分からない。AACだとやはりホーンセクションやシンセなどの中高音域の厚みが欠落しているのが分かる。

ここまで違うと、全部の曲をロスレスにしたくなるのだが、そこには容量という問題が立ちはだかる。先ほどの椎名林檎の「三文ゴシップ」の一曲目、「流行」で比較したところ、MP3でビットレートをデフォルトの128kbpsにした場合のファイル容量は約4MB、AACでビットレートを最高の320にした場合でも約10MBだった。しかし、これをロスレスで取り込むと、容量は一気に32MBに激増する。

 

090820-0001.jpg上のキャプチャはロスレスの場合。容量は32.1MB

090820-0002.jpg次がAACでビットレートを320bpsにした場合。容量は9.9MB。

090820-0004.jpg最後にこちらがMP3でビットレートを標準の128bpsにした場合。容量は4MB。

仮に全ての楽曲をロスレスに変換したとして、1ファイルの容量が30MBとすると、16GBのiPhoneのうち10GBを音楽にアサインしたとしても、なんと320曲しか入らないことになる。うーむ。

僕のiTunes Libraryは現状でも52GBあり、iPod Classicでもないと全曲は格納できない状態なのだが、さすがに全てのアルバムをロスレスで取り込むのは、現段階ではあまり現実的じゃないような気がしつつも、これだけ音が良いとロスレスにしたいというのが本音。

現状は特に気に入っているアルバムだけはロスレスで取り込み、残りはAACの最高水準という形で妥協しているのだが、考え方によっては、MacのHDDは300GB以上余っているし、iPhoneには300曲も入っていれば十分という考え方もあって、もともと一日に全曲聴くことなんてできないので、全曲をロスレスにする、という選択もアリな気もしている。レンタルで借りたCDなんかは、ロスレスで取り込んでおけば、後からAACやMP3に変換することは可能なのだし。

というわけでもうしばらく考えて対応を決めようと思っている。

そして、このヘッドフォンがある限り、iTSで音楽ファイルをダウンロードする機会は恐らく大幅に減るだろう。一曲単位で買える点は魅力的だが、音質が劣化したファイルという気がどうしてもしてしまい、買う気になれない。

というわけでBOSE QuietComfot3がやってきたために、思わぬ悩みが増えてしまった今日この頃です。

でも音質は最高なので、大満足であることは間違いありません。

 

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41Zb-9VbkgL.jpg久し振りのミュージック・レビューは、6月に発売された椎名林檎の「三文ゴシップ」を紹介したい。

このアルバム、椎名林檎個人名義としては実に6年ぶり、4枚目のフル・アルバムである。ご存知の方が多いと思うが、椎名林檎はこのところずっと「東京事変」としての活動に軸足を置いていたため、個人名義での新作発表は実に久し振りであった。

余談だが、僕が椎名林檎を聴くようになったのは驚くほど遅くて、何と去年の1月である。この時にファーストアルバム「無罪モラトリアム」を聴いてその完成度とカリスマ性に圧倒され、以来すっかり彼女の音楽に引き込まれてしまった。

で、久し振りのソロ名義での新作発表ということで、このアルバムは予約を入れて発売日当日に聴いていたのだが、しっかり聴き込んでからレビューを書こうと思っていたら、ついつい遅くなり、今日になってしまった。

というわけで前置きが長くなったが、この「三文ゴシップ椎名林檎 - 三文ゴシップの世界を言葉で現すと、「余裕」「色香」「大人」「ゴージャス」「上機嫌」のような言葉が思い浮かんでくる。とにかく豊かで美しく、しかしきちんと尖っていてカッコ良く、しかも欲求不満をぶつけるような世界観ではなく、全体的に機嫌良くまとまっている。大人だなあという感じなのだ。

初期2作のような若さ故の暴走機関車ではなく(あの世界観も大好きなのだけれど)、30代の大人が作り出す音楽、それがこのアルバムを通じて感じられる世界だ。本作のテーマは「ヌード」だそうで、そのコンセプトはジャケットやライナーノーツにも表れているし、目に見える部分だけではなく、音楽にも良く浸透しており、全体としてとても色っぽい。

もはやロックやパンクと言った枠を超えて、時にはジャジーに、時にはポップに、そして時にはクラシカルに、その世界観を変えてしまう。まるで相手や場所に応じて洋服や髪型を自在に変えつつも、常に存在感を失わない美しく魅力的な女性の変わり身を見ているようだ。

アルバムの中で特に好きな3曲を挙げれば、一曲目の「流行椎名林檎 - 三文ゴシップ - 流行、二曲目の「労働者椎名林檎 - 三文ゴシップ - 労働者、そして13曲目の「余興椎名林檎 - 三文ゴシップ - 余興である。どの曲もこのアルバムではアップテンポで比較的ロックしている曲だと思うが、どの曲を聴いてもやっぱり「大人」で「豊か」で「色っぽく」、そして「上機嫌」。実にカッコいい。

椎名林檎のライブにはまだ一度も行ったことがないが、このアルバムを聴いて、改めてライブを聴きに行きたいな、と思わせられた。力強い意欲作だよね。カッコいい。

あ、そうそう、このところ音楽はiTunes Storeからダウンロードしていたんだけど、このアルバムからはまたCDを買うようになった。理由は幾つかあって、それはまた後日書こうと思っているのだが、今回の初回限定版の肌色盤はとてもカッコ良かったことは確か。

 

三文ゴシップ
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Bogalusaの"Talking aboud Dime"を購入して聴き終えた。

"Bogalusa"というバンドは僕は一昨日まで名前すら知らなかったのだが、このバンドのヴォーカリスト、写真右の男は10年前から知っている。その名は藤岡テッシン。

Bogalusaを知らない人でも、テッシンのことを知っている人は多少はいるのではないかと思う。テッシンは今から10年ほど前に、吉祥寺や下北沢、町田などを中心に活動する、ストリート・ミュージシャンだった。

バンド名はメンバー変更と共に何度か変わったと記憶している。"Messin with Tessin"だったり、"テッシン with Hisピンハネ5"だったり。

だが、メンバーが変わってもいつも彼の演奏する曲やスタイルは変わらなかった。古い古いオールドジャズやJiveを中心に、そこにサッチモが入ったり彼ら自身のオリジナル曲が加わったりしていた。

もう10年以上前、僕はたまたまテッシンのストリートでの演奏を聴き、彼と知り合いになった。お客の少ない夜だったこともあり色々話をし、毎週金曜日に吉祥寺で演奏をしていると教えてもらい、それ以来何度も彼らの演奏を聴いた。本当に毎週のように聴いた。ライブハウスにも聴きに行ったし、挙げ句の果てに僕の結婚パーティーにまで来てもらい演奏してもらったりもした。

それから時は流れ、僕は吉祥寺の街から離れ、テッシンのライブに行くこともなくなった。たまに「元気でやってるかなあ」と思い出しつつも、僕は毎週末に飲み歩くこともなくなり、彼が演奏してくれた結婚パーティーで一緒になった女性とも別れ、10年前のことは遠い昔のことになってしまっていた。

今回ちょっとしたことからテッシンがまだ演奏活動をしているかを調べようと思い、彼の名で検索したところ、2つのことを発見した。

一つは彼がBogalusaというバンドを結成し、CDが発売され、Amazonでも購入できるようになっていること。

そしてもう一つは、テッシンは一昨年の9月に自殺してしまい、もうこの世にはいなくなっていた、ということ。

CDが出たのが2007年4月、そして彼が亡くなったのが同じ年の9月だったそうだ。

一体彼に何があったのか、今となってはもちろん分からない。もう2年も前のことなのだ。

放心しつつAmazonにCDを注文し、ついさっきCDが届いた。まさかテッシンのCDがアマゾンで翌日配送される時代がくるとは。

そして流れ音を聴く。やっぱり泣けるね。当時のパフォーマンスでも演奏していた懐かしい曲が何曲か入っている。"Chop, Chop, CHarlie Chan"や"One Scotch, One Bourbon, One Beer"、それに名曲"Minnie the Moocher"も収録されていた。

CDで聴くテッシンの声は当時と変わっておらず、でも、レコーディングだったせいか、妙にかしこまっていて、ちょっと窮屈そうに歌っているようにも聴こえた。でも彼の歌がこうして聴けて良かった。CDがなければ、もう二度と聴くことなんてできなかっただろうから。

でも、あの、彼らのオリジナル、「吉祥寺のサンロード」の歌が入ってなかったのは残念だった。タイトルも知らない曲だけど、彼らのパフォーマンスがどんどん人気が出てお客さんがたくさん集まるようになって、あの「吉祥寺のサンロード♪」と彼が歌うと、すごく盛り上がったなあ。

テッシンどうもありがとう。もう会えないのはとても残念だけど、テッシンの歌声とあのパフォーマンスは永遠だよ。このCDは大事に聴かせてもらう。さようなら。

 

TALKING ABOUT DIME
TALKING ABOUT DIME
アーティスト:bogalusa

レーベル:Get Hip RECORDS/ゲットヒップレコード
リリース:2007-04-25
ランキング:25646位
Amazon.co.jp で詳細を見る

 

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