2009年3月アーカイブ

3月、私の教えている音楽学校でもそろそろ1年間のコースが終わり、生徒が進級や卒業していきます。

1年または2年という期間で生徒さんとおつきあいしていると、「最初こうだった子が今はこんなになってる」という、嬉しい驚きと感慨を感じることがあります。


A子ちゃんもその中の一人。ピアノとアレンジ両方見ていた子です。

もともと大人しくて引っ込み思案なタイプ。来た最初のころは、私が何か尋ねても蚊の鳴くような声で返事もよくわからないようなかんじ。

私もつい「どうしたいの?こうなの?ああなの?」と余計に押してしまって、ますます困らせてしまったようなこともありました。

とにかく自信がない。どうしたらいいかわからないんですね。

思えば私自身も似た道を通ってきました。「こうしなさい」と言われた事に素直に従って育ってきたいわゆる「よい女の子」は、逆に「自分がどうしたい」なんてことはわからなかったりするのです。そういう回路がないといってもよいかもしれません。

そんなことよりここで「どうしなければならないか」を一生懸命探ろうとする。頭の中は「これは合っているかしら、先生はどう言うかしら・・・」ということばかり。だからジャズやポップスのピアノで「自分の思ったようにやってごらん」なんて言われても真っ白になっちゃうんですね。

そんなA子ちゃんは、出しているピアノの音も弱々しいタッチで、どうしても右手のメロディーが前に出てこないというのが最初の頃でした。これはいくら私が「もうちょっと強めに弾いて」とか言ってもどうにもなりませんでした。


しかし1年め過ぎた頃から、ちょっとずつ変わってきました。

メロディーとコードだけの譜面を見て自分でアレンジして弾くことに挑戦していると、意外な事に実は「ここはこういう音がほしい」というこだわりが彼女の中に密かにあることがわかってきました。それを形にして決定するのにはずいぶん時間がかかったりするけど、実はけっこうセンスが良かったりします。彼女の中にはちゃんと美しい音楽性と自分の意思があったのです。

ならば、どんどんそれを出せるようになろう。

あなたがそう思った、ならばそれが一番大事。それが正しい。

「自信がある」というのは「私はこれができます」と堂々と言えることではなくて、自分の感じ思うことをそれでいいと思えることを言うのだと、私は思っています。

そう思ったことをその通り行動して形にする。そうやってA子ちゃんにはそういう「自信」をつけていってもらいたいなと思ったのは、何より私自身がそういう道を辿って、結果として昔よりはるかに安心して生きていけている実感があるからです。


そうやってゆっくりですが、一つずつA子ちゃん自身の中から出てきたものを大切にして曲を仕上げていくうちに、彼女が「こっちの方が好き」「こうしたい」ということをだんだん言えるように、そしてこだわりのアレンジを作って弾いてくるようになってきました。ピアノの音もずいぶん力強くなっています。

不思議なもので、だんだんファッションもおしゃれになってきて、学校のお友達とも楽しくやっているみたい。他の男子生徒から「あ、あのかわいい子ですね」などと言われている事もチラと耳にしてしまいました。自信がついてくるってそういうことなんでしょうね。


そして、今期末のアレンジ実習では、曲に加えて歌詞まで自分で書いて、学校から紹介されたヴォーカリストさんに歌ってもらうお願いと段取りをし、レコーディングでは初対面のミュージシャンやエンジニアさんともちゃんと渡り合って「こうしたいです」と伝えていました。

できた曲も素敵なもので、ミュージシャンの皆さんからも大好評。

この経験はこれからさらなる彼女の自信につながっていくことでしょう。


なんとなんと、あの最初の頃の彼女を思えばこの飛躍はすばらしい!

こんなに変わる事ができる、人ってすごいなーと思います。

この人が結果として音楽家になるかどうかとか、そういうことはわかりません。でもそんなことはある意味どっちでもいいんです。

この2年間という期間の中で、その人の何かが転換し、人として幸せになる力を確実に一つ身につけたということが大切だと思うし、私はそれがなにより嬉しい限りです。

よかったねー。おめでとう!

 

arts&crafts.jpg

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お天気もよかったので、上野でやっている「アーツ&クラフツ展」に出かけてゆきました。

久しぶりの上野公園は、さんざんいた鳩もすっかり減り、以前林の中にあったブルーシートのテント村がきれいさっぱり一掃されて、ずいぶん小ぎれいになっていてちょっとびっくり。それにしてもあそこの住人さん達、追い出されて大丈夫かなあなどとちょっと心配になってしまいました。


さてさて、今回の展覧会は、以前から駅などで見かけるポスターのデザインが好きで、行きたいなあと思っていたもの。

とはいえ、歴史的・学術的な深いことにはそれほど興味も思い入れもない私なので、ほんとにサーッと見た感じですが、確かにキレイ、ステキ、カッコいい・・・そういうものがたくさんあったのは確か。

ただ、全体を通して、やっぱり家具や工芸はその「家」「部屋」「生活」という文脈があってこそ真に輝くのものだなあ、ということを改めて感じました。

それがしかるべきお家の中でしかるべきように使われていたら、きっともっと素敵に見えるだろう、と予想させるような・・・

逆に言えば、ステキな物なんだけど、そういう文脈を外されてポツンとそこに置かれただけの物は、やっぱりちょっとくすんだ過去の「モノ」でしかない・・・という感じを逆に受けてしまったのでした。

由緒あるステキな家具や布や食器を様々に並べて作った「部屋」が、魅力的どころか、何かある種の気味悪ささえ感じるものだったのが、ちょっとショック。

結局、生きている人が、モノに命を与えるんですね、きっと。

そういう意味では、一番生き生きしていたのは最後の物販コーナーだったわ(笑)。

 

というわけで、それはそれ。

ランチは上野駅の駅ビル「アトレ」にある「ブラッスリー・レカン」で。

ここは、銀座の有名フレンチ店「レカン」の廉価版のようなところで、お値段抑えめなのに、そのわりに良い材料でできるだけのことはやっている感じで、好感が持てます。

文化会館でのコンサートが終わった後にも食事ができるくらい遅くまでやっているのもポイント高いのだけど、今日は1600円のランチ+デザートで大満足でした。

先月「笑って生きようぜ!の曲」と題して書きましたが、私にとって作曲は小舟であてもなく漁に出て行くような気分。お魚を獲ってこなきゃいけないんだけど、獲るべき魚がどこの海にいていつつかまるんだかさっぱりわからない、ってかんじです。

結局あの時出した舟はどうなったか、その後のお話です。


いや〜 今回の漁はなかなかハードでした。

あっちの海、こっちの海とさまよい、星も見えない真っ暗な海に漂って途方に暮れた夜も幾日・・・。遥かカリブ海の方まで行ってはみたものの、どうも違うようで。

「釣れたーっ これどうすか!」と市場に持って行ったら「それじゃなくて」と仲買さんに言われちゃったりとかもあって。

慣れない世界一周とかもしてきたけど、結局地元・相模湾沖でよかったみたい。回り回って最終的には、自分の一番得意分野でどうにか道が開けました。なんだ、そうだったのかー。

 

とはいえ今回苦労した漁なので、はっきり言って最終的にどのくらい私の曲が使われるのかとか、今のところよくわかりません。獲ってきたお魚がその後どういう料理になるかは私の知る範囲ではないのでねー。

でも、自分としては一番直球の曲を作ることができたし、自分のするべきことが何なのか、また少し見えた気がしたので、あとの結果はお任せ。これをふまえてもっと先の目標に向かって行けばいいのですから。

 

Explorando




La Sonora Ponceña
Inca (2007-02-13)

 

 

 

 

 

 

 

 

1978年制作、ジャンルでいうとサルサ。

サルサというと一般的にどことなく「キューバの方の音楽でしょ?」っていうイメージを持たれる方も多いようですが、実はサルサはキューバの隣の島であるプエルト・リコ(現在アメリカ自治領)とニューヨークが移民によってコネクションされたところから生まれたと言われています。


「ソノラ・ポンセーニャ」はプエルト・リコのポンセという街出身の50年の歴史を誇るサルサグループで、ピアニストのパポ・ルッカ(Papo Lucca)が全てのアレンジを担っています。

このアルバム「エクスプロランド」は、私がラテン音楽をかじり出した最初の頃に買って衝撃的感動を味わい、その後にわたって自分の中では変わらず名盤であり続けています。

プエルト・リコの音楽は、一般的にサルサやラテン音楽に対して思われているイメージ「熱い、元気、ノリノリ」みたいなところにもう一歩、湿り気と一抹の陰り(哀愁といってもいいかも)が混ざったようなところがあるように感じます。

行ったことはないですけど、音楽を聴く限りけっこう湿度の高い土地なんじゃないかなあ。きっとキューバの方が乾燥してそうだ(根拠なし)。

そしてそれが私が好きな理由でもあります。ソノラ・ポンセーニャの音楽はそのプエルト・リコならではの湿度と一抹の陰り、そしてパポ・ルッカの個性であろう冷静な知性と洒落っ気が素敵にブレンドしているのです。ピアニストとして、アレンジャーとして、その端整な音楽性に惚れ込んでしまいます。


一曲目のベース単独の音が出た瞬間から、うお〜 いい音!

そして最後のCanto al Amor の哀愁ある美しいトランペットアレンジに至るまで、パワフルでありながらスッキリとした音質で描かれる繊細、時に峻厳でさえあるプエルト・リコ絵巻。ジャケット画の意味はようわからんけど(このヒト達のジャケ画みんなそうね・笑)雰囲気よく表してると思います。これお気に入り一番。


ついでですからお気に入り2番は「New heights」1980年

New Heights.jpg

 

 

 

 

 

 

 

3番は「Unchained Force」1980年

Unchained Force.jpg



 

 

 

 

こちら2点はAMAZONに画像がないため、リンクしてません。独自でお探しを。

Sonora Ponceñaサイト(スペイン語)にディスコグラフィ等々載ってます。

ウェブページ

Powered by Movable Type 4.23-ja

このアーカイブについて

このページには、2009年3月に書かれたブログ記事が新しい順に公開されています。

前のアーカイブは2009年2月です。

次のアーカイブは2009年4月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。