「変態ギタリスト」などとしばしば言われるスティーヴ・ヴァイ、2005年の作。
ジャンルは何かといわれると、いちおう世間ではハードロックとかヘヴィメタルと整理されるようですが、実際そんな枠ではおさまらない幅広さと自由奔放さと圧倒的なオリジナリティーを持っている人です。
バークリー音楽大学出身、高度な音楽知識と超絶ギターテクニックの持ち主ですが、そんなことを超えて、イマジネーションの表現のためにすべてはある、ということを体現しているかのようです。
一般的にハードロック/メタル系というと、ダークで攻撃的なエネルギーをゴリゴリ押しまくるような音楽も少なくありませんが、この人の音楽はそういう意味では全く逆に、基本的にすごくポジティブで光が溢れていて、宇宙へと広がっていくような大きさを感じます。
であるとともに、すごくやんちゃ、エネルギー過剰、複雑、変態。
受けつけない人は受けつけないであろう、独特な世界であることも確かかもしれません。
1990年の「Passion and Warfare」も名盤だと思いますが、それから15年の後の本作は、その過剰なエネルギーと変態ぶりは相変わらず,さらに大人の余裕と成熟を感じるできあがりで、私なんかは思わず「あのやんちゃな青年がすっかり大人のいい男になって・・・」という感慨を抱いてしまいます。
やっぱり音楽ってその人が生きてきた姿そのまんまが出るんじゃないだろうか。きっとこの人は良い家族に恵まれ、愛を知り、自分を見失わずに心豊かな人生を生きてこれたんだろうなー・・・と想像してしまえるのは何故だろう・・?
ドラマ「医龍」のテーマ曲に使われたというM1「Building the church」、レッドツェッペリンの「Kashmir」をトリビュートしているのかな?と思わせるM2「Dying for your love」、ファンキーなM5「Fire wall」。これらは比較的聴きやすくカッコよい曲。
それからM7「Lotus feet」は壮大な泣きのバラード。
ちなみにこの人のアルバムではいつも7曲目がバラードになっていて、90年の「Passion and Warfare」でも7曲目にすばらしいバラードが入っていましたが、ご本人にとって7曲目のバラードというのは特別な思いがこもっているのだそうです。
その7曲目ばかりを色んなアルバムから集めてまとめた「The 7th Song」というアルバムも出ていて、こちらも味わい深いです。
あまり語る人はいないけれど、10曲目のアコースティックギターによる優しさあふれる曲「I'm your secrets」はまさに、大人だねえ〜という1曲。 壮大な曲も良いのだけれど、こんなこぢんまりした曲にも名曲があります。
Sony Japan (2007-10-30)