マーケティング・ブランディング書評

ファンベース 〜 支持され、愛され、長く売れ続けるために

マーケティング・ブランディング書評
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さとなおさんこと佐藤尚之さん著の「ファンベース 〜 支持され、愛され、長く売れ続けるために」という本を読んだのでご紹介しよう。

去年2019年の年末にたまたまFacebookを眺めていたら、お友達がこの本を読んで称賛している投稿が流れてきた。

そのとき投稿していたお友達が誰だったかは失念してしまったのだが、その書き込みを見て何の気なしにAmazonで本書を買った。

さとなおさんとは一度パーティーでお会いしたことがあり、Facebookでも繋がっている。

それに、何といってもさとなおさんも僕も1996年のインターネット黎明期から「ホームページ」を立ち上げ活動していた「同期」みたいな感覚もあった。

これまでさとなおさんの書籍を読ませてもらう機会がなかったので、軽い気持ちで手に取ったのが、これが何とも素晴らしく深く豊かな一冊だった。

B to Cのマーケティング、広告・宣伝的立ち位置で書かれている本だが、C to Cビジネスの僕にもビンビン響く内容だった。

さっそく紹介しよう。

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「好意」を「資産化」して積み上げていこう

「物が売れない時代」と言われて久しい。

多くの企業は新規顧客の開拓に必死になって数々のキャンペーンを行っている。

しかし、それら多くの企業はとても大切なことを見誤っている。

それは、大切にすべきターゲットを間違っていることだ。

本当に大切にすべきターゲットとは、まだあなたの商品やサービスを知らなかったり興味を持っていない新規見込み顧客ではない。

まっさきに大切にするべきなのは、あなたの商品やサービスが大好きで何度もリピート購入してくれている「ファン」の人たちだ。

本書のタイトル「ファンベース」は、字面だけ見ると意味が分かりにくいかもしれない。

「『ファン』作りを『ベース』にしたマーケティング、広告戦略」というイメージで捉えると分かりやすいのではないかと思う。

ファンベースを考えずに施策を講じる企業は単発でぶつ切りのキャンペーンを打って終わってしまっている。

デートで例えるなら一回目のデートで好感触を掴んでいるにも関わらず、放置して二度と誘わないし口説きもしない、みたいなものだ。

短期的な単発のプロモーションと併行して、ファンの「好意」を「資産化」して積み上げていく施策を設計することが大切なのだ。

本書の帯には「共感→熱狂」「愛着→無二」「信頼→応援」と書かれている。

すでにあなたの商品に共感を持ってくれている人があなたの商品に熱狂するように、好意を資産化して積み上げる施策。

あなたのサービスに愛着を感じている人を後回しにして新規開拓をするのではなく、あなたのサービスをオンリーワンと思ってくれるように努めること。

それがファンベースの考え方なのだ。

ファンとともに変化・成長し未来の価値を創出していく

さとなおさんはファンのことを言い換えれば「支持母体」であると書いている。

「ファンを大切にして、ファンとともに変化・成長し未来の価値を創出していく」姿勢が重要だとも書いている。

単にファンから儲けようとする「ファン・ビジネス」や「ファン・マーケティング」とは異なる。

逆の言い方をすれば、ファンを大切にする『ファンベース』抜きには、もはや中長期的な売上増は見込めない時代になってきているのである。

本書で引用されているある飲料メーカーでは、コアファンとファンによる売上が占める割合が全体の90%(!)にもなっている。

コンビニでもスーパーでも飲料の棚には数多くのメーカーの様々な種類の商品が並ぶ。

定番のものもあれば短期的なスポット商品もあるが、その中から自社の商品を選んでもらうのは大変なことだ。

しかし、ファンからすれば、どんなに他社の商品がたくさん並んでいようとも、あなたの商品を目がけてまっすぐに進んできて商品を手に取ってくれるのだ。

そんなありがたい存在を失い他社に渡してしまうことがないよう、ファンにいかに喜んでもらい満足してもらうかの工夫をすることが非常に重要になっているのだ。

ファンが新たなファンを作ってくれる

本書の中でさとなおさんが「ワンピース歌舞伎」に関するエピソードを紹介している。

年に1〜2回のペースで歌舞伎を鑑賞しているというさとなおさんは、当初は市川猿之助の「スーパー歌舞伎II ワンピース」(以下「ワンピース歌舞伎)」にまったく興味がなかったという。

原作「ワンピース」は全巻読んでいて、だからこそあの作品を歌舞伎にするなんて「痛すぎる」と感じたのだそうだ。

ところが、さとなおさんの友人がワンピース歌舞伎を観に行きSNS上で激賞したのだという。以下引用しよう。

友人がSNS上でワンピース歌舞伎を激賞したのである。「これぞエンタメ頂上決戦!」「すぐ観に行け!」「できれば一番高い席で見ろ!」「見逃すと人生の損!」「私を信じろ!」と、心からの言葉で推奨してあった。

ボクは激しく心を動かされ、次の瞬間、サイトに飛んでポチッと購入ボタンを押した。一番高い席がまだ数席空いていたのでその友人を信じてエイヤっと買ったのである。結果、本当に「見逃すと人生の損!」であった。世界のエンタメの頂上だと思ったし、ボクもSNSに激賞投稿をした。新規顧客になるはずもなかった人間がいきなりファン側に回ったのである。

もうこうなるとほとんど宣伝部員である。友人に会うたびに「ねぇ、あれ観た?え、まだ?すぐ行け!信じろ!」と強く薦めた。そしてボクのセンスを信頼してくれている何十人もの「ワンピースを歌舞伎で?」という疑念を持っていた友人が、実際に観に行った。(中略)みんな「本当に観にいってよかった!」「見逃さなくてよかった!」と感動メッセージを送ってくれた。

この文章を引用している段階で、すでに僕(立花)までが「ワンピース歌舞伎」を観たくて仕方がなくなってきている(笑)。

このような「ファンが新しいファンを呼ぶ」現象は、SNS時代では当たり前のようにあちこちで起こっている。

僕自身ずっと愛用しているiPhoneケースのabicaseをブログやSNSを通じていったい何人に薦めたか分からない。

いま愛用している醤油もバルサミコ酢もプロテインも、友人がSNSで紹介しているものを購入して自分が今度は宣伝部員になっているパターンだ。

ハッキリ言って醤油なんてコンビニでもスーパーでもどこでも売っている。

でも調味料は毎日身体に入れるものだから、遺伝子組み換えじゃない大豆で、アルコールなどを使っていなくて、さらにできたら非加熱で、なんてことを考えた。

そのときに信頼できるSNS上の友達がオススメの醤油として薦めていた醤油を僕は速攻で買った。そして気に入った。

今では毎回松山の醤油を高い送料を負担して定期的に通販で購入している。

そしてもちろん自分でもSNSとブログでその醤油のことを書き、友達にも薦めている。

この記事を読んでいる皆さんもその醤油が気になって仕方がないだろうから、リンクを貼っておこう。

愛媛松山・田中屋の天然醸造・純正醤油 〜 これが本当のしょうゆの味なのかと驚愕する美味さ [商品レビュー]
先日初めて通販で購入して日々感動している愛媛県松山市の田中屋謹製「純正濃口醤油」をご紹介しよう。 買った最初の日に厚揚げと大根おろしにかけて食べたのだが、そのときの感激を今でもハッキリ憶えている。 というか、いまも毎日食事のとき使っているわ...

ちなみにその醤油の通販サイトはアフィリエイトをやっていないので、僕は一円の儲けにもならないが、そういう問題ではないのだ。

ファンはあなたの会社の売上を支え、あなたの商品を支持し応援してくれ、さらに周囲にあなたの商品を宣伝してくれる。

こんなありがたい存在を特別に扱わずして何がマーケティングだろうか。

まとめ

ご覧ください。この付箋の数を。

付箋が多すぎて、もうわけが分からなくなったので、特に重要な場所の付箋はびろーんと長く目立つようにした。

この「びろーん付箋」が登場する本は僕の中の「ホームラン本」なのだが、本書はびろーん付箋までもが多くなりすぎて、もう何がなんやら。

いわば昔のヤクルト vs 西武の日本シリーズで杉浦が放った「延長代打逆転満塁サヨナラホームラン」みたいな本だった。

本書「ファンベース」では、「共感」「愛着」「信頼」をいかに「熱狂」「無二」「応援」に育てていくかについて詳細に書かれている。

この書評ではとても全部をお伝えすることはできない。

B to C的視点で書かれている記事だけど、一人ビジネスでもまったく同じスタンスで応用できるものなので、是非一人社長や飲食店オーナーなどにも読んでいただきたい。いや、俺を信じてとにかく読め!と言いたい。

そして僕自身、友人がSNSで本書を薦めていたのでその友人の言葉を信じて本書を手に取って読んだ。

そしてその内容の素晴らしさに打たれ、こうして激賞する書評を書いているわけだから、まさに本書に説明されているとおりの行動を取っているわけだ。

僕のこれからのビジネスに大きな気付きと方向性を与えてくれた一冊。

超オススメです!!

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