ノンフィクション書評

格差の壁をぶっ壊す! by 堀江貴文 〜 違和感あり!でもそこそこ面白い [書評]

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ブックレビュー2010年の44冊目はホリエモンこと堀江貴文氏著、「格差の壁をぶっ壊す!」を読了。

面白いのだが違和感がある。違和感はあるのだが面白い。読了してそんな相反する感情が読後感として残った。

その違和感とは何なのだろう。ちょっと考えてみたところ、以下の3つの要因が挙げられるのではないかという思いに至った。

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格差の壁をぶっ壊す! by 堀江貴文 〜 違和感あり!でもそこそこ面白い [書評]

タイトルと内容のギャップ

 そもそもタイトルと内容が合っていない。

いや、合っていないのではなくて意図的にずらしているのだろう。

僕が本書を読む前にこのタイトルから受けた印象は、格差社会を乗り切るための自己啓発書的なものか、もしくは格差社会の発生原因の分析と今後の展望みたいな内容かと思った。

だが実際は、堀江氏の主張は「そもそも格差などというものは存在しない」、または「格差はあることはあるけれど、そんなものは気にするほどのものではない」というスタンス。

そして、その格差社会の到来を喧伝するマスメディアを批判する内容となっている。

このタイトルは「釣り」なのだろうか。

だとしたら不発だと思う。

意図的にタイトルと内容をずらしたなら、申し訳ないが僕はその意図が良く分からない。

著者と内容のギャップ 

そもそも何故日本のITバブルの寵児であり、六本木ヒルズの豪邸に住む堀江氏が「格差」なのか。

この疑問は読了した今も残っている。

世代間格差に苦しみ、さらに本書で言うところの「恋愛格差」に苦しみ結婚もできずにいる「非モテ系男子」へのエールという側面が色濃いような印象だが、ならばもうちょっとターゲットを絞ったほうが良いのではないか。

「情報」と「主張」のギャップ、「客観」と「主観」のギャップ

本書の前書きで、堀江氏は「可能な限り公的なデータを揃え、そこを出発点に語っていきたい」と述べており、実際各章の冒頭は統計データに基づいた状況説明からスタートしている。

統計からスタートしているという意味では、著者の言うとおり展開している。

しかし、その統計データに対する反証を著者が述べる際に客観的データが全く用いられていないため、堀江氏のせっかくの主張がとても表層的に感じられる。

一番分かりやすい例としては、男女格差の項で、冒頭で世界経済フォーラムが算出したジェンダー・ギャップ指数を引用して日本は134位中75位だったという「事実」からスタートしているのに、堀江氏の反証は以下の通り。

少なくとも私の周りを見ている限り、男女格差を気にしているような人はほとんどいない。男性も女性も、分け隔てなく仕事と向き合っているという印象が強い。

上記の通り、まったく何のデータも用いられておらず、僕に言わせると反証にすらなっていない。

以上3点のギャップから感じられた違和感を総合するに、本書のベースにあるのは著者堀江氏の、「出る杭が打たれた」という恨みではないかと類推する。

本書の帯には「ホリエモンが明かす13の格差サバイバル術」とあるが、本書には自己啓発書的要素はあまりなく、どちらかといえばエッセイ的な側面が強い。

著者が自分の知識と経験をベースにして自分の意見を書き殴っているという意味で、大前研一氏の著書に似たテイストを感じる。

ただ、内容はあまり整理されておらず、断定的な物言いの割に根拠やデータが出てこないので論理的に響かない。

それでも冒頭に書いたとおり、「面白い」と思わせてしまうところが、ホリエモンのホリエモンたる所以なのだろう。

でもこのタイトルはやはりちょっといただけない。

エッセイと割り切ってもっと自己主張したほうが、書き手にとっても読み手にとっても気分がスッキリすると思うが、いかがだろうか?

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