精神科医の飯塚浩さん著「メンタルを強くする食習慣」という本を読んだのでご紹介。
スーパーエイジング(アンチエイジング)、食事・栄養という分野は僕が率先して学び続けている分野である。
この分野で面白そうな本を見かけたらすぐに手に取るようにしている。
この「メンタルを強くする食習慣」も書店で見かけてすぐに手にした1冊だ。
専門家による詳細な解説があり、一部ついていけない箇所もあったが、改めて自分の知識を高めることができた。
さっそく紹介しよう。
医学は発展しているのにメンタル疾患は激増している
著者の飯塚さんは精神科医である。
飯塚さんが医師になった30年前は、精神科の患者自体非常に人数が少なく、重症の人が中心だった。
30年経った今、重症患者は明らかに減少したという。
しかし代わりに「だるい」「眠りにくい」「気分が重い」といった軽めの症状を訴える患者は桁違いに増えている。
メンタルに限らず「一応仕事をこなせてはいるが健康ではない」といった慢性的な不調を抱える人が、すべての年齢層において激増しているのだ。
飯塚さんは次のように書いている。
「 医療は進歩しているのに、原因のわからないさまざまな慢性疾患が総合して増えているのです。そして、この傾向が見られるのは、人類の長い歴史においてここ50年くらいです」。
現代医学は「救命救急」の分野で目覚ましい発達を遂げてきた。
しかし現代に激増している不調の多くは救命救急ではなく「慢性疾患」である。
これら慢性疾患に関しては現代医療は「お手上げ」と飯塚さんは述べている。
飯塚さんは鳥取県米子市でクリニックを開いており、年間1万6,000件もの診療を行っているという。
多くの人は慢性疾患や不妊、ガンなどで訪れるが、その8割の人が来院から1〜2週間でかなり症状が楽になる。
飯塚さんは「薬は”救急救命”として使うに留める」という方針で診療を行い、大きな成果をあげている。
その代わりに「慢性疾患のベースとなっている要因を、食生活を中心とした生活習慣改善やマインドセットを変えることにより取り除く」という手法を採っている。
現代ならではの「見えない敵」に対しては、正しい知識をもって臨むことが大切なのだ。
「血糖値スパイク」は現代病をすべて悪化させる
「血糖値スパイク」とは、血液中のグルコース(血糖)が急激に上がって、急激に下がることを指す。
ふわふわの白いパン、白米ごはん、うどんやパスタなどの麺類、白い砂糖が入ったケーキやアイスクリーム、甘いジュースなど「糖質」を多く含む食べ物を大量に摂取することで「血糖値スパイク」が起こる。
大量のグルコースが血液内に流れ込んで血糖値が急上昇すると、脳は血糖値を下げるホルモン「インスリン」を膵臓から大量に分泌させる。
インスリンが大量に分泌されると急上昇していた血糖値がジェットコースターのように急降下する。
この血糖値の乱高下を「血糖値スパイク」と呼ぶ。
血糖値が急降下すると激しい眠気やだるさが起こり、ひどい時には失神することある。
血糖値の急降下に対処するため交感神経が過剰に興奮してアドレナリンが大量分泌されることで動悸が起きたり不安感、イライラ、落ち着かないなどの症状が起きる。
また夜間の血糖値スパイクは歯ぎしり、寝言、悪夢、頻繁な寝返りなどを引き起こす。
メンタルの不調を訴える人の多くにこの血糖値スパイクが起こっているという。
また血糖値スパイクは短期的な不調だけでなく、長期的にも我々の身体に致命的な影響を与える。
血糖値が乱高下することにより活性酸素が大量に発生して血管の内壁を傷つける。
血管の傷を修復するために免疫細胞が集まることで血管壁が厚く硬くなり、動脈硬化や心筋梗塞などの「血管イベント」を引き起こす要因になる。
また、血糖値スパイクは「糖化(グリケーション)」を引き起こす。
糖化とは、糖が体中のたんぱく質にぺたぺたとくっついてしまいたんぱく質が機能できなくなることを指す。
ヘモグロビンという酸素を運ぶたんぱく質が糖化してしまえば酸素を運べなくなってしまうし、コラーゲンが糖化すれば骨や肌が老化してしまう。
糖化の最終段階はAGEs(最終糖化産物)と呼ばれ、活性酸素を発生させ続け、糖尿病、ガン、アルツハイマー型認知症、メンタル疾患などを引き起こす。
このように血糖値スパイクはすべての現代病を悪化させる要因となる。
糖質の過剰摂取がその要因なので、GI値が低く血糖値を急上昇させない食生活に改善することが大切だ。
たんぱく質、ビタミン、ミネラル、食物繊維、グルテン、カゼイン、興奮毒素、農薬、加工食品、添加物
ほとんどの現代人に不足している栄養素がたんぱく質、ビタミン、ミネラル、食物繊維である。
反対にほとんどの現代人が過剰に摂取しているのが糖質と脂質である。
また、小麦製品に含まれるグルテン、乳製品に含まれるカゼインなどはアレルギー反応を起こすことが多いが、ほとんどの人は意識せずに摂取している。
ほとんどの人が知らない「興奮毒素」にも注意が必要だ。
加工食品に調味料として加えられるグルタミン酸やアスパラギン酸、それに糖質オフ系飲料などに使われる人工甘味料の「アスパルテーム」などは脳内の神経細胞を異常興奮させる。
前述したグルテンは4割がグルタミン酸であり、カゼインにも2割のグルタミン酸が含まれる。
また農薬はじめ乳化剤、保存料、防腐剤、PH調整剤、増粘剤、結着剤、ゲル化剤、リン酸塩、加工でんぷんなどがあらゆる加工食品に含まれている。
これらの添加物は身体にさまざまなダメージを与える怖れがある。
できるだけ加工食品を避け、ホールフード(丸ごと食)を選ぶことで、毒を身体に入れないようにすることが大切だ。
具体的に摂るべき栄養素や食材に関しては本書で詳細に説明がされているので気になる方は精読してみて欲しい。
まとめ
本書ではメンタルだけではなく身体の不調も含めた「現代病」ともいえる「慢性疾患」に対して食事・栄養を改善することで不調を取り除く方法が詳細に説明されている。
かなり専門的に突っ込んだ箇所もあり、専門用語やアルファベットの略語が続き難解な箇所もあるが、専門的な部分は理解できなくても効果・効能が明確に書かれているので問題ない。
糖質やたんぱく質、それに添加物、良いアブラと悪いアブラなどお馴染みの話も鋭い、でも分かりやすい解説が加えられていて、実践に移しやすい。
メンタル疾患は我々の食べ物と生活習慣の変質によって起こっている。
漫然と食べていてはだめで、知識を得て対策を講じることが大切だ。
網羅的で詳細な解説が素晴らしい一冊。
オススメです!!
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著者/出版プロデューサー/起業支援コンサルタント/ブロガー/心理カウンセラー。
あまてらす株式会社 代表取締役。
著書に「やってみたらわかった!40代からの「身体」と「心」に本当に良い習慣」「起業メンタル大全」「「好き」と「ネット」を接続すると、あなたに「お金」が降ってくる」「ノマドワーカーという生き方」など全9冊。
神奈川県鎌倉市の海街在住。