皆さんはToDoリストを使っているだろうか?
僕は昨年11月からToodledoというタスク管理ツールに移行し、一日のすべてのタスクを1分単位で管理する手法を採用した。
Toodledoの解説エントリーはこちら↓
Toodledoへの移行は、「ライフハック心理学」の佐々木正悟さんの著書「クラウド時代のタスク管理の技術」に強くインスパイアされて決心した。
クラウド時代のタスク管理の技術―驚くほど仕事が片付いてしまう!佐々木 正悟 東洋経済新報社 2011-11-25 売り上げランキング : 3559
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この本の書評エントリーはこちら。
さて、実際に自分の日常生活のほとんどをToodledoに放り込んで、Togglで時間計測してみると、とても興味深いことが分かった。
それは、僕らの日常のほとんどの業務は繰り返しである、つまり「ルーチン作業」であるということだ。
通勤もそう、買い物もそう、もちろん洗濯も掃除も食事も睡眠も、何もかもが一定の間隔で繰り返されているのだ。
この事実に僕はひどく当惑した。
このタスク管理システムとを採用するまでは、僕は日々の生活というのは一日一日異なっているものだと思っていた。
No Second Life、人生は一度きり。そして今日と同じ日は二度と来ない。
そう思っていた。
もちろん今日という日は一度きりで間違いない。明日は今日とは100%別の1日だ。
でも、僕が今日やることと明日やることの間には、実はわずかな差しかない。
その事実を、タスク管理システムがイヤというほど教えてくれた。
例えば、「バターがなくなったら買いに行く」ということを例にする。
今までなら、「バターがなくなったら買う」という行為は、その日バターがないという事実を持って発生する「突発的なタスク」だと僕は考えていた。
でも事実はそうではない。
僕は今までの人生でいったい何回バターを買っただろう。
そう、バターを買うというのは、一定のペースでバターを消費しているという事実を理解して、消費ペースが把握できれば、ルーチン化できてしまうのだ。
タスクがルーチン化されるということは、「予測が可能になる」ことを意味する。
「だいたい一ヶ月に1度バターがなくなる」ことが分かっていれば、その週の買い物にあらかじめバターを追加しておけばいいのだ。
そして買い物だけではなく、家賃の振り込みも可燃ゴミ出しもブログ更新も書籍原稿の執筆も、すべてがルーチン化できてしまうのだ。
人生における多くの物事がルーチンに落とし込めるとすれば、僕らは「ルーチン力」を徹底的に強化すべきだ。
日々の多くの時間を〆るルーチン・タスクがキレイに負荷なくこなせれば、すなわち僕らの人生の負荷も大きく軽減されるからだ。
そんなことを真剣に考えていたら、こんな本に出会うことになった。
タイトルはそのままズバリ、「ルーチン力」。タスク管理の鬼神、佐々木正悟氏の本だ。
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この本では僕ら「ルーチン力強化」に慣れていない人が、どうやってルーチン力を身につけて行くかが分かりやすく書いてある。
上述した「クラウド時代のタスク管理の技術」が難し過ぎて分からなかったという方にも分かりやすい構成になっている。
その中から、僕なりにまとめた「ルーチン力」強化の10カ条を紹介しよう。
1. 「時間が足りない」と感じるなら仕組み力を鍛えよう
世の中には本当に急がないといけない仕事もある。
それは圧倒的事実だ。
でもそれを前提として考えても、僕らの仕事が常に「大至急」ばかりなわけはない。
多くの仕事はきちんとデッドラインが決められ自分でコントロールできるような納期があるはずだ。
ところが、僕らはその仕事に取り換えるのを、ついつい先延ばししてしまう。
「まだあと10日もあくからいいや」という具合にだ。
そして仕事をどんどん先延ばししている間に刻々と締切が迫り、結局締切直前になって大慌てで取りかかることになる。
しかも大慌てで翌日締切の仕事に掛かり切りになるため、他の仕事は全部先延ばしになり、後日また慌てることになる。
これの繰り返しでは、良い仕事はできない。
僕らが仕事を先延ばししてしまうのは、人間に未来の時間を正確に見積もるという能力が備わっていないからだ。
「今日は時間がないから明日に」。
僕らはそう言って平気で仕事を翌日に送るが、翌日は今日よりずっとヒマなのだろうか?
絶対そんなことはない。明日は明日で朝から夜までギッシリとやることが詰まっているのだ。
それでも僕らは、「明日は今日より楽だろう」とか「明日の自分は今日よりもっと上手くできるだろう」と思ってしまう。
そんな僕らに必要なのは、「仕組み」だ。
明日にもしっかり予定があると脳が理解できる仕組み。
それこそが、ルーチン力なのだ。
2. 時間を「量」で捉えよう
僕らには1日24時間しか与えられていない。
その24時間に30時間分の予定を計画して突っ込んでも、6時間分が溢れて終わりだ。
1日や2日なら「徹夜する」とか「手を抜いて急ぐ」が有効かもしれないが、そこはギリギリの帳尻合わせだ。
毎日徹夜していれば倒れてしまうだろう。毎日手を抜いていたら仕事の質が低下して自分の首が絞まるだろう。
そんなやり方では仕事は正しく進まない。
だからこそ、時間をお金と同じように、「量」で可視化することがルーチン力強化の第一歩だ。
具体的には、Toodledoのような時間見積もりが可能なタスク管理ツールに作業にかかる見込み時間を入力してもいい。
もしくはGoogleやiCalなどのカレンダーに自分のタスクを入力してもいい。
カレンダーを利用する場合、重要なのは、何時からスタートして何時に終わるのかが大事なのではなく、自分の持ち時間と自分のやるべきことの総量が、足りているのかどうか、ということだ。
9時に仕事を始めて18時に終えるなら、そこには9時間しかない。
その9時間には、会議があったり食事をしたり、トイレに行ったりもするだろう。
さらに不意に上司に呼ばれたり緊急対応が必要な電話がかかってくるかもしれない。
そんなこんなを考慮して、自分がやるべき仕事の総量が何時間分あるのか。
これを把握するためには、時間を「量」で捉えるのが一番の近道だ。
そしてそのためには、自分のタスクを分類して時間ログを取り、見積もりとの誤差を計測する方法が一番簡単だ。
3. すべての仕事はルーチン化できると考えよう
仕事には長期プロジェクトもあれば週単位の繰り返しも、さらには毎日こなす日次タスクもある。
現実にはこれらのタスクはすべてルーチン化することができる。
長期プロジェクトの場合も、上流から下流に向けての全体像を組み、日々自分がどの位置にいるべきかを予測し、その結果を計測することでルーチン化が可能だ。
また一週間単位の仕事なら、月曜日から金曜日までに、それぞれのステップを踏むことで、特定の日に高い負荷がかからずに仕事を回すことができるようになる。
複雑な仕事、大き過ぎる仕事はかみ砕けるまでにバラすこともポイントだ。
そうすることで、すべての仕事はルーチン化できるようになる。
4. 仕事は締め切りまでの日数できっちり分割しよう
納期が先の仕事を開始する時、どのように考えるだろうか?
「納期まで一ヶ月もあるから、納期一週間前から始めればいいや」。そう考えていないだろうか?
この考え方だと、高い確率でスタート予定の一週間になっても仕事は始められず、ギリギリになって慌てて取りかかることになる。
仕事をしなかった3週間の間に仕事に対するモチベーションは下がり、記憶はあいまいになり、すっかり億劫になってしまうからだ。
僕自身も以前はこのパターンにはまることがとても多かった。
この罠を防止するためには、仕事が開始された日の時点で、見積もり時間を日数できっちり分割して、すぐに取りかかることだ。
納期までに余裕があるから、一日あたりの所要時間はごくわずかだし、心理的ハードルもほとんどない。
少しでも取りかかることでモチベーションが高まると同時に全体の作業時間の見積もり精度も高くなる。
「1日10分では作業に集中する前に時間が過ぎてしまう」という反論もあるかもしれない。
それであれば、納期ギリギリに取りかかるのではなく、すぐに取り掛かり、自分として集中できる時間を使って「スタートダッシュ」をかける。
これによって仕事は大きく進むし、精神的にも楽だ。
僕自身も以前は「締切効果」を利用して一気に仕上げる形だったのだが、締切間際に一気にやる方法はやはり負荷が高い。
負荷を分散していくことで、仕事の質も高まり負荷は下がる。これこそがルーチン力だ。
5. オープンリストを仕事で使わない
仕事で使うToDoリストには二種類がある。
一つは「オープンリスト」。そしてもう一つが「クローズドリスト」だ。
オープンリストはその名の通り、「開いている」リストだ。
ToDoの一番下の行に次に発生したタスクが追加され、そのタスクも今日片づけるべきことになる。
このリストを使っていると、仕事はどんどん追加され、終了時間のメドが立たない。
一方のクローズドリストは、一日の始めに「今日のタスクはこれだ」と決めてしまい、追加を許さないスタイルだ。
追加されたタスクは「翌日以降のToDo」として扱われるので、その日の仕事を圧迫しない。
仕事をしていれば、どうしてもその日のうちに片づけなければならない案件も発生するだろう。
それは承知だが、「原則」として、一日の頭に自分で作ったリスト以上の仕事はしない、と決めることが大切だ。
その原則があったうえで、どうしてもその日のうちに対応すべき案件には例外として対応する。
リストをオープンで使っている人がいたとしたら、是非クローズドに変更することをお奨めする。
これだけで、自分のルーチン力は相当高まるだろう。
ちなみにこのクローズドリストの考え方は、E-Mailやメッセなどの返信などにも応用できる。
届いたメールに片端から即座に返信していると、いま返信したメールにさらに返信がきたりして、いつまで経っても仕事が終わらない。
「今日届いたメールには明日返信をする」というルールを明確にすると、翌朝の時点で、その日返信すべきメールの数と内容が把握できている。
これによって「メール返信」作業の工数見積もりの精度は高まり、割込みの発生する確率も低下する。
もちろんこれは「原則」であって、どうしても返信すべき「例外」の存在を否定しているわけではない。
6. プレゼン資料も「ルーチン」で作ろう
プレゼンテーション資料の作成や企画書作成などは、ルーチン化しにくい作業という認識の方も多いだろう。
僕も仕事柄講演資料や企画書を作る機会が多いが、実はプレゼン資料作成もルーチン化することが可能だ。
まずは全体のアジェンダを作り、その後はそれぞれの項目に思い付く言葉をどんどん放り込んでいく。
言い残したり言い忘れたりすることが怖いので、とにかく全部書いてしまうのだ。
時間に余裕がないと、丸一日を資料作成に費やしウンウン言うことになるが、ルーチン化された軽いタスクでは、ひたすら思い付くキーワードを入れ続けるだけでも、100ページを超えるボリュームになる。
キーワードが出尽くしたらブラッシュアップしていくのだが、その際にもう一つ有効なのが、資料の使い回しだ。
自分が過去に作成した使用から流用できる箇所があれば、効率を大幅に上げられる。
これらのステップをリスト化して必ず踏むことで、プレゼン資料作成もルーチン化できる。
7. アナログ整理もルーチン化しよう
僕は運用したことがないのだが、この本で佐々木さんが野口悠紀雄さんが提唱した「超」整理法でのアナログ整理を奨めている。
僕自身アナログ書類や書籍などのルーチンでの処理はまだうまく運用できておらず、今後の課題だったのでとても参考になった。
「超」整理法は日付順に書類や資料を封筒に入れて分類して、使ったものや最新のものを一番手前に並べ、奥に行くほど古く使われない資料という、時系列で並べる処理方法だ。
この方法を使うことで、良く使うものと最新のものが常に手前にあり、一番奥にあるものは、「古くて不要なもの」か「古いが捨てられない大切なもの」のいずれかに分類される。
この整理法を使い続けると、最新の部分は必要なので勝手に整理されるようになり、一番奥に押し出されるものから、必要なものを残し、不要なものを捨てるというルーチン化が可能になる。
この方法は興味深い。
「超」整理法については以前本だけ読んで実践できていないので、再読したうえで採用を検討しようと思う。
8. ルーチンのボトルネックをチェックして進化させよう
皆さんにも経験があると思うが、ルーチン化したはずが、うまく回らないことが良くある。
ボトルネックとは、この場合、「1時間で見積もったのに3時間かかっていて、結果として他の作業を圧迫している」もの。
そしてもう一つは、「2時間で見積もったのにまったく手がつけられず、完全に先送りされた」もの。
この二つだ。
見積もり時間を大幅に超過して作業してしまう場合は、ログを確認して次回から作業予測時間を長く取り、そしてタスクを2つ以上に分割する。
一つのタスクが2時間や3時間と大きくなり過ぎていると、他のタスクとの調整が難しくなり、予定が狂う元凶となるからだ。
そしてもう一つの問題、見積もったのにまったく手がつけられず、先送りされるケース。こちらは大問題だが、実は頻繁に起こっている。
このようなケースは、作業の心理的負荷が高く「やりたくない」という意識が先送りを生んでいるので、タスクを取り掛かれるまで小さく分割してみると上手く行くケースがある。
僕自身も朝一番に90分のタスクを入れたものの先送りがたびたび起こり、30分のタスク3つに分割したところ、面白いようにスイスイ進むようになった経験がある。
このように、「上手く進まない」箇所には必ず理由と対策があるので、それをチェックして改善することで、ルーチン力は確実に高められる。
9. やらない理由を明確にしよう
僕ら人間はとても弱い生き物なので、気分が乗らなかったり疲れていたりすると、何の理由もないのにタスクを先送りしてしまう。
だが、この先送りがたびたび発生すると、仕事は進まず日々のスケジュールは混乱し、そしてあなたは自分に対しての自信を失うだろう。
それを防ぐためには、その日のタスクを先送りしたくなったら、「何故先送りするのか」の理由を自分に説明するようにする。
もちろん「面倒だから」では理由になっていない。
「もう今日は遅いから」という理由だったなら、「何時に寝る?」から「何時まで寝られる?」「それでもダメか」なとと導いていくことで、自然と「やっぱりやっておくか」という気持ちになる。
そして明確な理由があって先送りを決断する場合にも、「○○という理由で先送りした」と腑に落ちているので、自分に対しての失望がなく、気持ちも落ち込まない。
10. やりたい仕事を最優先で繰り返そう
僕らはどうしても「やらないとまずい仕事」「やるべき仕事」から手を付けてしまう。
社会的生活をしているからには、他人に迷惑を掛けたり上司から睨まれたり取引先から怒られたりしたくない。
だからどうしても「やらねば」ということから手を付け、結果として「やりたい」仕事は後回しになっていく。
一日の最後にひっそりと割り当てられている「やりたい」仕事は、割込みや疲労、飲み会の予定や忘却などのさまざまな理由で実行されにくい。
なかなか実行されないルーチンは身につきにくく、いつまで経ってもやりたい仕事に対するスキルが上がっていかない。
「やりたい」も「やるべき」もルーチンで回すのなら、「やりたい」は最優先で取り組もう。
どうせ「やるべき」仕事はやらざるをえないのだから、それら「やるべき」仕事以上の優先度を設定して、「やりたい」仕事のスキルを高めていこう。
まとめ
「何もかもルーチン化してしまったら、日々のワクワク感がなくなるのではないか?」
「1分単位でルーチン化なんて、窮屈で死にそう」
そんなことを言われることがある。
でもそれは実は正反対だ。
ルーチン化できるということは、仕事に対する自動化が進むことであり、スピードアップもできることを意味する。
どんどんタスクをこなせば見積もり精度も高まり、習熟化によりどんどん仕事が速くなる。
仕事が速くなれば、そこに今まではできなかったことをする時間が生まれることになる。
最初の例で言うと、「あれ?そろそろバターなかったんじゃなかったかな?」と心配して大切な脳を浪費せず、ただ淡々とバターを買い、その心の余裕を次の仕事のアイデアや休暇のことなどを考えることに使えるようになるのだ。
ルーチン化は地味で詰まらない作業と思うかもしれない。
だが、1日24時間、365日を自分がコントロールできているという充実感を得られるのは、実はこのルーチン力を鍛える以外の方法ではできないのではないかと感じることがある。
僕自身、まだまだな部分が多いのだが、徐々に究極の「タスク自動運転」を目指し、邁進したい。
これまで「ルーチン化」なんて考えたこともないという人も、いろいろ試したけどダメだという人も、是非一読してみて欲しい。
ルーチン力、実は凄い破壊力。試して損はない!
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著者/出版プロデューサー/起業支援コンサルタント/ブロガー/心理カウンセラー。
あまてらす株式会社 代表取締役。
著書に「やってみたらわかった!40代からの「身体」と「心」に本当に良い習慣」「起業メンタル大全」「「好き」と「ネット」を接続すると、あなたに「お金」が降ってくる」「ノマドワーカーという生き方」など全9冊。
神奈川県鎌倉市の海街在住。