いま日本は大きな変革期に入ろうとしている。
バブル経済の崩壊から長い不況の時代が続いた日本。
グローバル化の波が押し寄せる中少子高齢化で人口減が迫る。
そんな中で起きた大震災と原発事故。
これからの日本はどうなってしまうのだろうか。
多くの人は不安に感じているだろう。
そんななか、「日本人の未来は明るい」と断言する人物がいる。
神田昌典氏である。「非常識な成功法則」をはじめ、多くのベストセラーを輩出した作家であり、コンサルタントでもある大物だ。
そんな神田氏が最新刊「2022 — これから10年、活躍できる人の条件」という本を出版した。
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そしてこの本で神田氏は多くの衝撃的な予言をしている。
このエントリーでは、本書からキーワードを10抜き出して、今から10年後の日本と日本人が生きる世界について書いてみようと思う。
ライフハック的に僕らの生活をすぐに変える「ワザ」のようなものではないが、日々生きるバックボーンとして参考になる部分があれば幸い。
それではいってみよう。
大転換の10年を力強く生き抜く人に送る10のキーワード
1. 時代の潮流を70年サイクルで捉える
僕らは日々の生活に追われてなかなか気づかないが、時代には大きなうねり、潮流がある。
神田氏はその潮流は70年サイクルでやってくるという。
多少の誤差はあるが、大きく見ていくと、この流れに沿っているという。
徳川幕府が崩壊して大政奉還が行われ時代が明治となってから太平洋戦争が終わり大日本帝国政府が崩壊するまでが約70年。
そしてGHQ主導の戦後日本国が誕生してから今年で67年が経とうとしている。
そして時代が劇的に変化する時には、常に大きな災害やトラブルが起こるものだ。
明治維新の時も国は乱れ、多くの死者が出た。太平洋戦争末期の惨状は言う必要もないだろう。
そして2011年3月11日に発生した大震災と原発事故。
神田氏は、今回のこの災害を、「終わりではなく変化の始まり」と断言している。
これから2015年ごろまでの間に、明治維新や終戦に匹敵するような、大きな変化が日本に起こるというのだ。
昨日と同じ明日がまた来るとは限らない。危機に備えよということだ。
2. 戦争より祭りを
これからの10年の間に、日本は大きな転換点を迎える。
2015年前後にそのピークが来ると神田氏は主張しており、その過程において僕ら平和な時代に育った日本人が経験したことがない試練も起こりえると書いている。
歴史を振り返っても、一つのシステムの崩壊はある日突然やってくるのではない。
江戸幕府から明治政府へのシステム変更も、何段階ものステップを踏み進んでいった。
太平洋戦争における旧政府の崩壊も、長い時間をかけて徐々に進んだものだ。
一つのシステムが崩壊する時には、山積してきた「隠れた問題」が一気に噴出し、我々国民はとばっちりを食うことになる。
いくら我々が「おれたちは悪くない」と叫んでも、どうにもならないことなのだ。一つのシステムが死ぬというのはそういうものだと諦めるしかない。
だが、同じ危機でも乗り切り方を考えることで、その方向性は大きく変わってくる。
神田氏はその選択を「戦争か祭りか」としている。
江戸末期、まさに大政奉還の年に日本各地で発生したと言われる「ええじゃないか」という騒乱。
神田氏は扇動した黒幕がいたはずと説いているが、日本各地で乱痴気騒ぎが発生したという。
他人の家にも土足で上がり、家のものを持ち去ってしまう。それでも「ええじゃないか」と許し合う状態。
価値観が大転換してどうなってしまうのか分からないという時期に、「集団死」を選んでしまったのが太平洋戦争末期の日本政府だ。
そして江戸末期の黒幕氏は、「集団死」の代わりに「祭り」を選び、結果として一般国民の死者を最低限に抑えることができたと説く。
集団ヒステリーを起こし悲観的にならず、「どうなったってええじゃないか」という心を持つことが大切だ。
3. 日本再浮上のキーワードは「東アジア圏」
神田氏の予測では、これからの10年、中国、台湾、韓国は躍進し、日本はさらに沈没する。
だが、これはそれぞれの国がバラバラに存在し続けた場合のことだ。
ここで重要になってくるのは、我々日本人が持つセルフイメージだ。
日本以外の東アジアの国々はまさに絶好調である。
だが絶好調とはいえ、それらの国々は、まだまだ荒削りで文化的にも成熟していない。
それらの若く勢いのある国々を「儒教」というキーワードで結びつけ、ヨーロッパのEUのように「東アジア圏」を形成すべきと神田氏は説く。
もちろんそのためには、僕ら日本人は日本に引き篭もっていてはダメで、アジアの人々と積極的に交流していかなければならない。
だが、日本単独では人口は減り続け、借金を返済できるメドもないなかで、ただ引き篭もっていることに意味はあるのだろうか。
勢いのある東アジアの国々が求めるのは、多くの日本人が既に身につけている「知恵」や「ノウハウ」なのだ。
彼らと組むことで日本は必ず復活できる。それが神田氏の主張だ。
4. 会社はなくなる
既に多くの会社員の人が、この10年に起こった変化に戸惑っているのではないだろうか。
若手も例外なく変化を体感しているだろう。
定期昇給がなくなった。自分の下に新入社員が入ってこないなど、組織が変調を来していることを示す症状があちこちに出ている。
ドラッカーが予言したことが現実となっているのだ。
「人間の寿命よりも企業の寿命が短くなる」と。
企業という不変でずっとなくならない大きなものという「器」は徐々に消えていく。
会社に勤め続けたくても、その会社が永続的には存在できないのだから、当然社員は会社の消滅と同時に放り出されていく。
僕らはこれからどのように働いていくのか。
硬直化して短命になる大企業に代わって、NPOやフリーランスの集合体など、アメーバのように形に囚われない働き方が受け入れられていく。
社会が劇的に変化する時代は、土地や時間に縛られる働き方をしてはいけない。
会社という「器」に使われるのではなく、器を使いこなす新しい社会が生まれるのだ。
5. エクスフォメーション
従来の価値は「インフォメーション」だったという。
これからの価値は「エクスフォメーション」に変化する。
今までは情報を自分に採り入れること、「イン・フォーム」に価値があった。
入試でも、いかに正確に自分の中に情報があるか = 暗記できているか、が価値とされてきた。
だが、インターネットが完全に普及した時代に、検索エンジンを利用しないで情報を丸暗記していることに、何の意味があるだろうか?
試験会場にiPhoneを持ち込んで、Wikipediaで解答を検索して書き込めばカンニングになるが、日常生活において、ただ知識を持っていることの意味は急速に失われている。
検索できない答えにこそ、価値がある時代になった。
だからこそ、これからは情報を得たことで変化した自分のことを、いかに表現できるか、「エクス・フォーム」がとても大切となる。
ブログでもいい、TwitterでもFacebookでもいい。
自分の言葉を外に出して表現していくことに大いなる価値が生まれる時代だ。
そしてその表現が磨かれ人と人が繋がっていくことで、知識を想像し、新たなリーダーが生まれて行く。
日本再生の鍵は、新しい時代の新たなリーダー作りなのだ。
6. 40代が時代のはざまにかける橋
40代のサラリーマンが、いま一番時代的に苦しい立場にあると著者は書いている。
いわゆるバブル入社組と言われる層で、旧来の価値観で若い時代を過ごしてしまっている人も多いという。
重い住宅ローンを背負い、会社一筋で働いてきた世代。
ところが、この世代を会社はターゲットとして切りたがっているという。
人数が多く年齢が高いため給与も高めだからだ。
だが、40代の人々は独立・起業という発想に慣れていない。
そして希望退職を受け入れた多くの40代は、迷った揚げ句ずっと条件の悪い職に再就職するという。
ある場合は清掃員、ある場合はタクシーの運転手など。
神田氏は、これら40代の人々こそ、勇気を持って独立・起業すべきと説いている。
若いリーダーたちが生まれて時代を引っ張るにはまだ時間がかかる。
そして旧システム側の高齢者たちは完全に硬直化し、もはや崩壊を待つだけだ。
多くの40代離職者は、20年以上会社で仕事に打ち込んできた知識とノウハウを持つ。
日本再生の主役ではないが、名わき役となるのが、40代なのだ。
7. ライフワーク
会社の寿命がどんどん短くなるということは、一つの仕事にいつまで従事できるか分からないことを意味する。
以前なら新入社員で入社したら、定年まで勤め上げるのが「美」とされてきたが、それは過去の話だ。
そんな時代だからこそ、「好きなこと」を仕事にして欲しい。
本当に熱中できる仕事を選ぶべきだと神田氏は説く。
多くの起業家の人たちは、「勘違い」で起業してしまうのだという。
神田氏は多くの企業のコンサルをしてきたが、ごく普通の人たちが起業家やフリーの人たちと触れているうちに、「こんなに楽しそうでラクなら自分もやってみるか」と始めてしまうのが実態だという。
ただ、最初から「ライフワーク」と思える仕事になんか出会えないだろう。
だからこそ、シミュレーションをたくさんしようと神田氏は提案している。
友達と集まって、遊び感覚で、「こんなことって仕事にならないだろうか?」とイメージしてみる。
一人で自分のアイデアをノートに書き出して妄想してみる。
何度もそれを繰り返しているうちに、「これだ!」というものと出会える時があるのだ。
それがライフワークと出会えた瞬間だ。
8. 「脳」 = 「資本」の時代
モバイルとクラウド、そしてグローバル化によって、僕らの仕事の価値観は根本的に変わりつつある。
以前であれば独立してフリーになるということは、企業の下請けを意味していた。
神田氏は書いている。「脳」 = 「資本」の時代においては、資本家になるか労働者になるかは、選択でしかない。
以前であれば、会社を飛び出して独立するには、とてもハードルが高かった。
クラウドでつながって自宅で仕事なんてできなかったから、オフィスがなければ社員も雇えない、信用がなければウェブ決済用のクレジットカードも作れなかった。
ところが今は資本金はいらない、オフィスもバーチャルでOK。携帯とパソコンさえあれば誰でも簡単に独立できるようになった。
独立することは以前は「選択」することすらできない人がほとんどだった。
だが、今は独立するか労働者として雇用されるかは、本人の選択肢になったのだ。
しかし、独立して「何をするか」という問題がつきまとう。
だからこそ、良い時も悪いときも一生続けられる「ライフワーク」を見つけることが大切なのだ。
9. 「現実を見ろ」というアドバイスは聞くな
次の時代を作るのは若い世代だ。これは間違いない。
だが、往々にして若い世代の素晴らしいアイデアを、年長者が潰してしまう。
そしてその時に語られる常套句が「現実を見ろ」だと神田氏は指摘している。
そんなアドバイスは聞くな。
時代が大きく変わる時に、旧体制側の価値をしっかり守った人は、時代が転換すると犯罪者になることもある。
1940年にエリートが進む道として用意されていた、海軍という道を子供に進ませた熱心な親は、終戦により自らの子供を「戦争犯罪者」に仕立ててしまうこととなった。
今の状況をベースに未来を見てはいけない。
特に時代が大きく変化する時こそ、夢を語り大志を抱くべきなのだ。
10. まとめ 時代を作るのは我々だ
このブログの読者の方の多くは、20代後半から30代、40代にかけてだろう。
僕らの世代は、終戦後の高度経済成長も一段落して、戦後日本というシステムが成熟した後の時代にしか生きていない。
つまり、もう出来上がったシステムの経験しかないのだ。
でも、僕らの2世代上の人たちは違う。
226事件、日中戦争、そして太平洋戦争を経験し、肉親を失った人もたくさんいる。
そしてそこから戦後の大混乱と高度経済成長という大転換を生き抜いてきたのだ。
そして次の大転換期はもう目の前にやってきている。
というか、もう始まっているのだ。
そして次の大転換期において、主役となるのは僕や、このエントリーを読んでくれているあなたたちの世代なのだ。
大転換期においては、「今までと同じこと」をしていてはいけない。価値観が大きく変わるからだ。
大きく時代が変わるのだということを強く意識して、価値観の変化をしっかり見定めよう。
そして「集団死」のような選択は絶対に避け、「カオス」を楽しむ「祭り」を経て、まったく新しい時代を作っていこう。
10年後に力強く新しく生まれ変わった日本とともに生きるために、これからの10年を本気で乗り切ろう。
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著者/出版プロデューサー/起業支援コンサルタント/ブロガー/心理カウンセラー。
あまてらす株式会社 代表取締役。
著書に「やってみたらわかった!40代からの「身体」と「心」に本当に良い習慣」「起業メンタル大全」「「好き」と「ネット」を接続すると、あなたに「お金」が降ってくる」「ノマドワーカーという生き方」など全9冊。
神奈川県鎌倉市の海街在住。