エッセイ書評

まな板の上の鯉、正論を吐く by 堀江貴文 〜 ホリエモン久々のスマッシュヒット!! [書評]

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ブックレビュー2010年61冊目は堀江貴文氏著、「まな板の上の鯉、正論を吐く」を読了。

このエントリーでは堀江氏を親しみを込めてホリエモンと呼ぶ。その方が個人的に馴染があるので。

ホリエモンのことはライブドア社長時代から一貫して好きで、彼の著書も社長時代に出たものも含めてかなりのものを読んできている。

だが、正直「徹底抗戦」以降、つまり彼が逮捕された後の著書には、どうも違和感が残るものが多かった。

その違和感とは何なのだろうと考えていたのだが、本書を読んでやっと理由が分かったような気がする。

最近の彼の著書に一貫して流れているのは「怒り」と「恨み」に似た負のエネルギーなのではないかという気がしたのだ。

僕の目には彼の逮捕から裁判に至る流れは、他の同類の事件と較べて異常に厳しく取り扱われているように感じる。

それに、そもそも本当にそれが犯罪なのかどうかも分からない段階から、「ホリエモンは金の亡者」だとか「暴力団とつながっている」などという噂がそのまま流され、完全に犯罪者扱いされた。

もともとホリエモンの言動には扇動的なところがあるし、それは良い意味でも悪い意味でも誤解を招きやすいことは確かだろう。

だが、彼を巡る一連の物事の進行は、あまりにもひどい、というのが、正直な僕の感想だ。

そして彼の著書には、そういった不条理な扱いを受けたことに対する怒りや恨みが、エネルギーとして満ちてしまっていたのだと思う。

直接事件について触れた文章ではなくても、全体のトーンにそういったオーラを感じてしまう。

だが、本書は久々に前向きで明るく、無邪気でエネルギーに満ちた、そして恐ろしく頭の良い、本来のホリエモンの姿を見ることができ、読んでいて楽しかった。

本書がそのように明るいホリエモンを惹き出せたのは、大きく以下の3つの理由からではないかと感じている。

1. Q&A方式のランダムで短い話題がホリエモンの頭の回転と合っている

ホリエモンの本を読むたびに、いつも感じるのは、この人は恐ろしく頭が良い、ということと、説明が下手だ、ということだ。

ブログやTwitterでのツイートを見ていても、せっかく人とコミュニケーションを取ろうと試みている癖に、説明は「めんどくさい」といわんばかりぶっきらぼうなものになっているケースが多い。

「分からないヤツになんか分かってもらわなくたっていいよ」と行間に書いてある。

それが本書では、質問に短い文書で回答をする、まるでTwitterの問答のようなテンポの良さで書かれており気持ちが良い。

2. いらつく話題、馬鹿な質問がない

上記からの続きだが、Q&A形式での進行に際して、実際のTwitterでは、フォロワーからの的外れと思われる質問に対しては露骨にいらついた言葉で回答をしてしまい、読んでいるこちらのテンションを下げさせるシーンも多い。

それに対して、本書では、きちんと彼が気持ち良く回答できる話題に厳選されており、従って切れ味も良く機嫌も悪くない、良いホリエモンが登場している。

3. タイトルの効果

タイトル、そして全文、さらに最後の方で、ホリエモンは裁判の行方に関しての諦観の念を表明している。

従来の怒りや恨みといったステージから、一歩達観のレベルに近づいたような雰囲気だ。

この境地が、おそらく本書から「毒抜き」効果を惹き出し、読む人に安心感を与えることに成功しているように思う。

というわけで、楽しいホリエモン、良いホリエモンが満載の本書はなかなかのお奨め。

裁判が終わって全部が片づいたら、またこういう元気で楽しいホリエモンをたくさん見せてもらいたいものだ。

期待している。

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