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ワンクリック — Amazonを作った天才ギークの半生!めっちゃオススメ!!

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ITで世界を変えた男たち。

皆さんは誰を思い付くだろうか。

スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツ、グーグル創業者の二人ラリー・ペイジとサーゲイ・プリン。

こういった顔が思い浮かぶのではないだろうか。

だが、もう一人、あまりメディアの前に登場しない、謎めいた人物のことを忘れてはならない。

その男の名前はジェフ・ベゾス。米Amazon創業者にして最高経営責任者である。

このブログの読者であれば、Amazonの凄さを熟知している方も多いと思う。

オンライン書店としてスタートしたAmazonは、その後CD、DVDなどに分野を広げ、さらにその後は家電やファッション、食料品などにも進出、いまでは「ないものはない」といっても過言ではないほど、商品分野は多岐に渡っている。

また、電子書籍への移行を積極的に牽引、日本では大幅に発売が遅れたが、Kindleストアと端末Kindleによる電子化の波の先頭に立っているのだ。

さらに、企業向けのサーバーのホスティングという縁の下の力持ちとしても大きな存在感を示しており、大手企業サイトの多くがAmazonのサーバーによって運営されている(だからAmazonのサーバーが落ちると多大な影響が出る)。

 

 

そんなAmazonをゼロから作り上げた男、それがジェフ・ベゾスだ。

ベゾスは日本ではあまり名前を知られる人間ではなかったが、今回ベゾスの半生をまとめた本が出た。タイトルはずばり、「ワンクリック」だ。

 

ワンクリック―ジェフ・ベゾス率いるAmazonの隆盛リチャード・ブラント 日経BP社 2012-10-18
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ベゾスの生い立ちから現在の野望までを丹念に追いかけたこの本を読めば、Amazonとベゾスのすべてが分かる。

そしてこの話が、まさに現代アメリカのサクセスストーリーそのものという展開で、読んでいてすごく興奮するし、引き込まれるのだ。

この本の凄さは実際読んでいただかないと伝わらないのだが、僕なりにハイライトをまとめてみようと思う。

 

 

 

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ワンクリック —  Amazonを作った天才ギークの半生!めっちゃオススメ!!

 

「ワンクリック」でもまだ不満

ご存知のとおり、Amazonはオンライン小売店である。

実際の店舗がある場合とオンラインでは、顧客満足を高めるための手法が異なってくる。

Amazonが向かった究極の顧客満足、それは「人間の介入を最小限度にする」ことで、商品の選択から買い物、到着までの「買い物体験」全体を最適化することだったのだ。

 

 

Amazonで買い物をした多くの人が分かると思うが、Amazonで一度買い物をすると、「この商品もおすすめ」というメールが届いたり、次回サイトにアクセスすると、「立花岳志さんへのおすすめ商品」がリストで表示されたりする。

さらに、自分が探している商品をクリックすると、「この商品をチェックした人は、こちらも見ています」や「あわせて買いたい」などのリンクも表示される。

 

 

これらは、ベゾスがAmazonを単なる買い物のサイトではなく、「買い物を楽しめる場」にするために、コツコツとサイトを改良し続けた成果なのだ。

リアルな書店であれば、座り心地の良いソファーを置いたり、サービスとして無料でラテを配布したりできる。だがオンライン店舗ではそのようなサービスはできない。

その代わりとして、ベゾスは店舗となるAmazonのWebを、究極まで使いやすくし、品揃えを圧倒的にし、商品の到着を限界まで早めることを目指したのだ。

 

 

Amazonのサービスを「無機質」「味気ない」「機械的」と感じる人もいるだろう(僕も感じる)。だが、彼の哲学によると、「人間の介入は必要悪」なのだ。

出来る限りの機械化・電子化を進めることで、顧客がオンライン・ストアに求める「楽しさ」「品揃え」「到着の早さ」、そして「安さ」を追求した。

それが現在のAmazonの姿なのだ。

 

 

 

生まれながらのギーク・アントレプレナー

ベゾスは1963年にアメリカ・ニューメキシコ州アルバカーキで生まれた。

父は北欧系の男だったが両親が間もなく離婚し、ジェフは母親に育てられる。

その後母親はキューバ系の男性と再婚し、ジェフはその男性の子どもとして育てられた。

ジェフは実父のことを覚えていないし、こだわりもまったくないようだ。

「私が父と呼ぶのは、私を育ててくれた人物ですから」と割り切っている。

 

 

子どもの頃から機械いじりが大好きで並外れた集中力を発揮したジェフ少年は、コンピュータに夢中になり、プリンストン大学でコンピュータ・サイエンスを専攻する。

そして大学卒業後に彼が働く場所として選んだのはウォール街、金融ビジネスだった。

金融ビジネスといっても、ベゾスが選んだ道は、トレードのシステム構築だった。

当時はまだインターネット普及前の時代で、証券や金融商品の取引に使える優れたコンピュータ・システムがない時代だった。

ベゾスはそんな時代のウォール街で、めきめきと頭角をあらわし、26歳でバンカーズトラストの最年少副社長に就任する。

そしてベゾスは、ある革命的なモノと出会うことになる。

「インターネット」だ。

 

 

 

Amazonは本屋でなくても良かった

インターネットの圧倒的な可能性に触れたベゾスは金融ビジネスで働くサラリーマンとしてのキャリアを終え、自らのビジネスを興す決断をする。

多くの歴史に残る起業家たちは、自分が取り扱う製品に圧倒的な情熱を持ちビジネスを立ち上げる。ジョブズしかり、ゲイツしかり。

だが、ベゾスは本が大好きだから本屋を始めたのではなかった。彼はビジネスとしての勝算を計算し尽くした結果、書籍をオンラインで販売する、という選択をしたに過ぎない。

「良く知られた製品であること」「市場が大きい」「仕入れが容易」「送料が安い」「オンライン販売の可能性」などを吟味した結果が書籍だったのだ。

立ち上げ時から複数分野の商品を扱うことはリスクと考え、当初は取り扱いを書籍に限定することにした。

だが、それは裏を返せば、ベゾスはAmazon立ち上げ時から、将来は別ジャンルの製品へも取り扱いを拡大することを計画していたことを意味するのだ。

 

 

 

利益を出さずに拡大し続ける

Amazonは1994年、ベゾスを含む4人のメンバーで立ち上がった。当初は「カダブラ」(「アブラカダブラ」の「カダブラ」)という社名だったが、7ヶ月後にAmazonに変更された。

その後ベゾスが採用した戦略は、その後のIT企業の立ち上げで多用され、一般的となったものだ。だが、当時は誰も思い付かない無謀とも揶揄された方法だった。

それは、「利益を出そうともせずに拡大し続けること」だ。

 

 

創業当時はベゾス個人が前職で蓄えた私財を投じて運転資金とし、続いては父親や家族に株を売却して資金を得た。

ドアの廃材を使ったデスクを使い、ベゾス自身も書籍の梱包作業を行なうようスタートアップだった。

インターネットが爆発的に普及し始めた時期だったが、競合他社がまだ参入していない時期だったことも後押しし、スッキリした最低限のデザインのサイトへの訪問者が殺到し、値引き販売も功を奏してビジネスは急激に拡大していく。

そして投資ファンドから資金を得たベゾスは、さらに猛烈な勢いでビジネスを拡大させる。

Amazonの至上命題は「早く大きくなる」ことだったのだ。

 

ベゾスは1997年のインタビューでこう答えている。

 

「利益は出ていません。出そうと思えば出せますけどね。利益を出すのは簡単です。同時に、愚かなことでもあります。我々はいま、利益になったはずのものを事業の未来に再投資しているのです。アマゾン・ドットコムでいま利益を出すというのは、文字通り最悪の経営判断だと言えます」

 

1997年にはベゾスはAmazonの株式を上場し、株価は1年後には10倍に跳ね上がる。だが、その間もAmazonは利益をまったく出さずに急拡大を続ける。

取り扱い製品を増やし、今やAmazonの代名詞ともなった巨大な倉庫を作り、競合他社を打ち負かすために利益を犠牲にして安値販売をしてシェアを高めていく。

今やすべてのIT系のスタートアップ企業が採用する戦略は、ベゾスの頭脳から生まれたのだ。

 

 

 

Kindleはサービスだ!

利益を出さずに拡大を続け、企業価値を高め株価上昇を目指す。

Amazonのこの戦略は2000年のドットコム・バブルの崩壊により危機に陥る。

株価90%下落という危機に直面したベゾスは大きく方針を転換し、利益を出す体質へとAmazonを生まれ変わらせる。

利益を生み出す体質になったAmazonは復活し、そして2007年、ベゾスは大きな賭けに出る。

電子書籍市場を生み出す、という賭けだ。

 

 

音楽は、AppleのiPodの登場で、それまでのレコード・CDという物理的制約から解き放たれ、完全に電子化の方向へと進んだ。

だが、書籍に関しては、当時電子化の波はほとんど起こっていなかった。

市場がない場所に、世界一の巨大書店となったAmazonを率いるベゾスが、Kindleという端末を武器に殴り込んだのだ。

 

 

アメリカのAmazonでは、大半の電子書籍は紙の本よりも大幅に安い、9ドル99セントで売られている。

この価格だと、電子書籍が一冊売れるごとに、約5ドルの損失がAmazonにもたらされてしまうのだ。

それでもベゾスは損失覚悟で電子書籍を推進する。

それがベゾスの賭けなのだ。

電子書籍が必ず世界を席巻するというビジョンを掲げ、わざわざ赤字を出しながら、赤字が出る電子書籍の販売比率を高める戦略が取れるのは、世界でも彼ぐらいしかいないのではないだろうか。

 

 

そして2007年発売当初は399ドルだったKindle端末はどんどん価格が下がり、日本での発売予定価格は7,980円である。

Kindleの価格は直線的に下がっており、近い将来無料になるのではないかという憶測も立つほどだ。

Kindleはサービスである

この言葉の裏には、Kindleという端末で利益を出すのではなく、電子書籍市場を地球上に「創造」するために必要なインフラとして、Kindleを利用者全員に無料配布することも厭わない、というベゾスの強い決意が見て取れるだろう。

 

 

 

Amazonは宇宙を目指す

書籍からスタートし、あらゆる分野の商品を取り扱い、海外にも進出したAmazon。

その豊富なIT経験と知識から、企業のサーバー・ホスティング事業も急拡大している。

しかし、ベゾスの野望が現在向かっている先は、彼が幼少時代から憧れ続けた「宇宙」である。

 

 

Amazonは2000年に人知れず子会社「ブルーオリジン」を設立した。民間宇宙開発事業を行なう会社だ。

第2次世界大戦後に米ソが競うように国の威信をかけて宇宙開発を競った時代は終わった。

今やNASAの予算も削られ、スペースシャトルの飛行も終了した時代に、ベゾスは民間企業として宇宙を目指しているのである。

 

 

ベゾスはどうやら本気である。2010年には民間企業として、NASAから370万ドルの開発予算の獲得に成功し、翌年もNASAの選定企業に選ばれている。

「顧客第一で、安心・安価で楽しめる宇宙旅行を提供する」

彼ならひょっとすると、本当にやってしまうかもしれない。

ギークなアントレプレナーの目には、何が見えているのだろうか。

 

 

 

 

 

まとめ

Amazonを利用しているユーザーは、人間の存在を感じさせないAmazonに「冷淡」「機械的」と感じることも多いのではないか。

また、値引き販売を承諾させる強引な契約を出版社に強要するなどの噂もあり、「辣腕」「強欲」などという面も報じられている。

 

 

Amazonとベゾスにそういった側面があることは事実だろう。

だが、それらの「冷淡さ」「強引さ」が、世界の電子書籍市場を開拓し、その日に注文した商品が夕方には届く、そんな夢のような世界を切り開いてきたという一面もあるだろう。

 

 

電話番号も、E-Mailアドレスも、本社所在地すら記載されていない企業。まさにサイバーの申し子のようなデジタル企業、それがAmazonだ。

だが、そのAmazonを率いる49歳の男は、熱く燃えた使命感とビジョンを持ち、「人間の介在は必要悪だ」という哲学を貫いて、彼が描く「理想の顧客サービス」へと邁進しているのだ。

 

 

彼が描く次の戦略が生み出す結果を、早く見てみたい。

この本を読んで、強くそう願うようになった。

井口耕二さんの翻訳も素晴らしく、グイグイ引き込まれ一気に読める。

超オススメの一冊!是非お試しあれ!

 

 

ワンクリック―ジェフ・ベゾス率いるAmazonの隆盛

リチャード・ブラント 日経BP社 2012-10-18
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