ノンフィクション書評

村上春樹ロングインタビュー掲載! 考える人 2010年 8月号 〜 濃密で力強い3日間!! [書評]

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ブックレビュー2010年の80冊目は、雑誌「考える人  2010年夏号」を読了。

「考える人」という雑誌の存在自体今回初めて知ったのだが、新潮社が出版している季刊誌で、いかにも大人向けの落ち着いた雰囲気の、読み物中心の雑誌である。

今回のお目当てはもちろん村上春樹氏のロングインタビューである。ニュースサイトでこの記事のことを知り、発売前にアマゾンに予約を入れて手に入れた。

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村上春樹ロングインタビュー掲載! 考える人 2010年夏号 〜 濃密で力強い3日間!! [書評]

インタビューは箱根のホテル二泊まり込みで3日間というスケールの大きさで行われ、雑誌サイズの3段組でも80ページという凄いボリュームに圧倒された。

また、文章と同時にインタビュー時にホテル周辺で撮影されたスナップショットも掲載され、村上春樹氏の近影がたくさん見られるのも嬉しい。

インタビューは村上氏の作家としてのキャリアを振り返るところからスタートし、その後で皆が今一番知りたい、最新作1Q84についての話題へつ続いていく。

「ノルウェイの森」と「1Q84」という、二つの巨大ヒット作の比較が面白かった。

ファンなら誰しもが納得することではないかと思うのだが、「ノルウェイの森」は、村上氏の長編の中ではもっとも村上氏らしくない作品だろう。

そして彼自身も「ノルウェイ」は実験的作品で、自分のメインストリーム作品ではなかったと述べている。

そして、意図的に自らのスタイルから逸脱させた作品が猛烈なヒット作となってしまったことで、強い違和感を感じたということも告白している。

それに対して1Q84は、村上氏の今までの全ての作品のエッセンスがギッシリ詰まった、まさにメインストリーム中のメインストリームとも言える長編で、著者自身が強い手応えと達成感を持って世に送り出したということが分かる。

1Q84にBook 0なりBook 4なりがあるか、つまり今後続編が書かれるのかという質問に対して、村上氏は、現段階では分からない、と言いつつも、1Q84にはBook 1〜Book 3の前にも後にも物語はある、と述べている。

そしてその物語は村上氏の中で「漠然とではあるが受胎されている」と。

個人的には現在のまま1Q84が完結するとは考えにくく、是非続編を書いてもらいたいと願っているので、村上氏自身が可能性に言及してくれたことを素直に喜びたいと思う。

さらに話題は昨年のエルサレム賞受賞に関する騒動や、彼のもう一つの活動翻訳に及んでいく。

僕自身彼の翻訳書は1冊も読んだことがなかったのだが、今回のインタビューを読んで、ちょっと読んでみたいと感じた。

若手作家の翻訳をやめ、名作と呼ばれる作品の翻訳に取り掛かっている理由も明らかにされていて面白い。

その他料理のこと、音楽のこと、そしてランニングのことと話題は多岐にわたるのだが、インタビューの言葉からは、彼が既に61歳だということをまったく感じさせない瑞々しさとエネルギーを感じる。

年齢が高くなっても、前をしっかり見て進んでいくという強い思いと、身体的衰えをしっかりと認識しつつそれを補う努力をする姿勢は、僕も絶対見習おうと誓うだけのパワーがあった。

1Q84は彼の一つの集大成ではあったが、それはまだ一つの通過点だ。

そう感じさせてくれる、力強いインタビューだった。今後の村上氏の作品を、首を長くして待とう。

「考える人 2010年8月号」のチェックはこちらからどうぞ!!

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