ブックレビュー2010年の100冊目は永江朗氏著、「<不良>のための文章術」を読了。
かん吉さんの「わかったブログ」で本書が紹介されていて、あまりに面白そうなので速攻で購入して一気に読んだ。
<不良>のための文章術 by 永江朗 〜 文章でお金を稼ぎたい人向け逆張りテキスト! [書評]
タイトルからして逆説的である。「不良」と書いて「プロ」と読むのだ。
プロのための文章術なわけだが、この本は徹底的に逆張り指向である。
冒頭一行目にハッキリ書いてある。
「これは美しい日本語を書くための本ではありません」と。
ではどんな本なのかといえば、素人と玄人の差をハッキリ認識し、プロ = お金をもらえる文章を書けるようになるための本である。
お金をもらえる文書と美しい文章は違うのだ。
美しくて退屈な文章ではお金はもらえない。
どんなに正しい文法作法で書かれていても、誰も共感しない文章ではお金はもらえないのだ。
プロの文章は悪文で構わないというのが本書のスタイルだ。
というよりも敢えて「文章を破壊せよ」とまで言い放つこの本は、まさにプロ志向の人だけが読むべき本で、一般の人が読んでも面白みはあまりないのかもしれない。
書評や町歩きの紀行文、それにコラム・エッセイなどを、わざとシロウト的例文を示し、その文章のどこが稚拙で何故お金がもらえないかを示しつつ、プロが書くとどのようになるべきかという完成例が幾つも示されていく。
非常に参考になるし、プロのライターのこだわりポイントや苦労する点も披露されていて興味深い。
例えば神田神保町を歩いた散歩紀行文については、シロウト例、シニア向け雑誌「サライ」向け文、女性ファッション誌「GINZA」向け文、そして若者グラビア誌「Sabra」向け文が掲載され、それぞれの違いが解説されているのだが、若干極端めにアレンジされた文章がおかしくて噴き出してしまう箇所もある。
他にもB級グルメ紹介文もかなりおかしい。
シロウト例が、いかにも「食べログ」などにエントリーを投稿している一般の人っぽい空回り振りで、それがすいすいとプロの視点で整理されていくのを読むのは痛快ですらあるが、自分も時々この本のシロウト例みたいな文章を書いているのなはないかと恐ろしくもなる。
文章術というと、とかく文体のことに目が行きがちだが、本書では文章書く前の取材や準備の部分や、文章全体の構成やタイトルへのこだわりなど、プロのライターがどのような工程を経て商品としての文章を作り出しているのかが丁寧に説明されている。
エッセイ・コラムに至っては「正論は書くな」、「別の人格を演じよ」、「世間から『困った人だ』と思われるようなことを書くこと」、「ゆがんでいても大丈夫」などなど、今まで読んできた文章作法の本を全否定する勢いで、まさにライター魂全開である。
もちろんただ暴言を吐いているのではない。
プロとして文章を提供するには、一般の人とは異なる視点を持って文章を構成しなければ、人はお金を払ってその文章を買ってくれませんよ、ということなのだ。
文章のテクニックと同時に、プロのライターとして持つべき視点、心構えも学べる希有な本である。
プロ志向の人御用達。絶版なので中古で確保すべし。
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著者/出版プロデューサー/起業支援コンサルタント/ブロガー/心理カウンセラー。
あまてらす株式会社 代表取締役。
著書に「やってみたらわかった!40代からの「身体」と「心」に本当に良い習慣」「起業メンタル大全」「「好き」と「ネット」を接続すると、あなたに「お金」が降ってくる」「ノマドワーカーという生き方」など全9冊。
神奈川県鎌倉市の海街在住。