「ノート」という言葉から連想する言葉。
幾つか並べてみると、「学校」や「学生」、「授業」といったキーワードが出てきた人も多いのではないだろうか。
そう、僕らは小学生の頃から授業の時にノートをとってきた。ノートと学校、ノートと学生というのは、切っても切れない間柄なのだ。
そして僕らは大人になってもノートを持っている。
持っていない人も中にはいるかと思うが、企業に勤める仕事をしている人は、何らかの形で日々ノートのお世話になっているのではないだろうか。
ところで皆さんは、学生時代と社会人になってからでは、ノートの使い方を完全に変えるべきだ、ということをご存知だろうか?
学生時代と同じ使い方をしていては、仕事で「あいつはデキる」とはなかなか言ってもらえない。
本書「「結果を出す人」はノートに何を書いているのか」は、まさに「大人のためのノート術」である。
「結果を出す人」はノートに何を書いているのか
美崎 栄一郎 ナナ・コーポレート・コミュニケーション 2009-09-11
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本書の役割は冒頭に書かれている。「ノートの使い方を工夫して仕事の生産性を上げる方法」を伝授してくれるのだ。
そして、先ほど書いた、学生時代と社会人のノートの取り方の根本的な違いについても冒頭で説明がされている。
学生時代のノートは憶えるために書いたが、社会人は忘れるためにノートを取る。この一言に尽きる。
学生時代は授業で先生が口頭で説明した言葉、板書された内容を、試験までに憶える必要があり、そのためにノートに内容を書き写した。
一方社会人の我々は、日常的に複数の雑多な業務を同時並行で抱えつつ、さらに自らを高め、所属する部門や企業をも高めるためのアイデアを練るという大事な役割も担っている。
人間の脳は複数の大切な事柄を同時進行で処理することができない。だからこそ、一旦ノートに書くことで記憶を記録に変化させ、忘れても良い状況を作ることが肝心なのだ。
「ノート術はビジネススキルだ」と断言する著者美崎栄一郎氏は、大手企業花王で今も現役サラリーマンとして働きつつ精力的に著作を出版し続ける「スーパーサラリーマン」と評されるが、その仕事っぷりの源泉となるノートに対する徹底的な拘りを開陳してくれたのが本書である。
本書では、まずは「どんなノートを持つのか」からスタートし、「何を書くのか」、「どのように書くのか」、「いつ書くのか」、「書いたノートをどのように活用するのか」を丁寧に解説してくれる。
「仕事術」「時間管理術」といった一般的なトピックの後には、恐らく読者が一番知りたい「自己投資のためのノート術が控えている。
読書やセミナーの際に「何を書くか」というノウハウにとどまらず、セミナーで人脈を広げるため、読書で得た知識を生活で活用するためといった、人中心の切り口での解説がとても勉強になる。
さらに、ノート術にこだわる人は、当然文房具にもこだわる。ノートに関する説明の合間い、テープ糊や名刺に押す日付スタンプ、蛍光ペンなどのこだわりグッズが目白押しで楽しい。
一点残念なのは、本書が出版されたのは2009年だということ。それが何を意味するかといえば、この本が出た時点ではまだ美崎氏はiPadを入手していないのだ。
美崎氏はiPadバカなので、iPad登場後に本書を執筆していたなら、第6章の「デジタル」の項だけではなく、全編に大きな変更が加えられることになったのではないかと勝手に推測してしまう。
是非iPad対応となった全面改訂版を出版して欲しい。
iPadバカを読んでから本書を読んで一つ分かったことがある。それは、大切なことはデジタルでもアナログでも一緒だということだ。
自己投資に必要なスキルや手段はツールによって変化しても、「何のためにやるのか」という部分は不変なのだと思う。
どんなにデジタル・ガジェットが進化しても、決してアナログのノートはなくならないだろう。
そう確信させてもらった一冊。
2011年ブックレビュー33冊目としてお届けしました。
著者/出版プロデューサー/起業支援コンサルタント/ブロガー/心理カウンセラー。
あまてらす株式会社 代表取締役。
著書に「やってみたらわかった!40代からの「身体」と「心」に本当に良い習慣」「起業メンタル大全」「「好き」と「ネット」を接続すると、あなたに「お金」が降ってくる」「ノマドワーカーという生き方」など全9冊。
神奈川県鎌倉市の海街在住。