自分の読書の傾向や好みは割合ハッキリしていて、普通に興味ある分野に対するアンテナを張り続けていると、徐々に読む本の種類が似通ってくる。
これには良い面と悪い面があって、良い面は、一つの分野や技術・技能についてある程度深い知識を身に付けられる点。
そして悪い面は、似たようなものばかり読んでいると新鮮さが失われ、頭が固くなってしまう点が挙げられる。
従って、自分の周囲に、自分のアンテナとは異なる趣向を持つ多読家がいて、その人自身のアンテナを公開してくれていると良い。
刺激になるし参考にもなる。自分だけのアンテナでは知り合えないような良書と知り合う機会が増えるのだ。もちろんそういうアンテナの数はある程度多い方が楽しいし勉強にもなる。
そんな読書アンテナを広げたい人にピッタリなのが本書「人を動かすアフォリズム90」だ。
本田直之「人を動かすアフォリズム」90
本田 直之 小学館 2010-01-05
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「アフォリズム」という言葉は耳慣れないが、辞書には以下のように説明があった。
「物事の真実を簡潔に鋭く表現した語句。警句。金言。箴言(しんげん)。」
つまり本書は名言・金言集というわけである。本田直之氏が本を選び、それぞれの本から「ここだ」というポイントを3ヶ所ずつ抜き出し、解説を加えるという構成である。
全体を10の章に分け、それぞれ「個人の力」、「パーソナル・ブランディング」、「脳科学を活用する」、「スポーツマネジメント」などテーマを定め、それぞれのテーマに沿って本田直之氏のお奨め本と名言、そしてその解説が並ぶ。
ありがたいと感じるのは、本田氏の選ぶ本が、海外の名著に傾いていて、僕らが普段良く目にする気軽なビジネス書などは避けてある点。敢えてその手の本に触れる場合は、最近の本ではなく一定の時間経過の洗礼を受け、生き残っているものに限定されている。
10の章でそれぞれ3冊の本から3つずつのアフォリズム。合計30冊の本、そして90の金言・格言が納められている。
冒頭に書いたとおり、僕自身の普段のアンテナとずれている部分が特に面白くて、今後是非読みたいと感じる本が多かった。
具体的には「脳科学」の分野や「中国の古典」、さらに「商人の思想」などがノーマークだった。
特に中国の古典は「勉強になりそうだけど読むのが面倒だ」と避けていたのだが、まるで僕の気持ちを見透かすかのように、「論語」や「孫子の兵法」などの平易な現代解説本が紹介されており、「この手の本は物足りないくらい平易に解説されている本から読むのがコツ」と説明してくれている。
いずれにしても、多くの古典、ロングセラーが紹介されていて有り難い。恥ずかしながら僕は本書で紹介されている30冊のうち、3冊しか読んだことがなかった。
自分の読書が「流行りモノ」に傾いていることを反省する良い機会になった。
名著・古典に触れたいと思いつつ手が出ていないあなた。本書が良いきっかけになるかもしれない。
ブックレビュー2011年の35冊目として紹介しました。
著者/出版プロデューサー/起業支援コンサルタント/ブロガー/心理カウンセラー。
あまてらす株式会社 代表取締役。
著書に「やってみたらわかった!40代からの「身体」と「心」に本当に良い習慣」「起業メンタル大全」「「好き」と「ネット」を接続すると、あなたに「お金」が降ってくる」「ノマドワーカーという生き方」など全9冊。
神奈川県鎌倉市の海街在住。