本を読み、読んだということを記録するという、何の取り柄もないようなページですが、意外な人が見ていてメイルをくれたりするのでなかなかあなどれませぬ。今年は何冊読めるでしょうか。どんな本と知りあうでしょうか。なかなか楽しみにではあります。
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01009 「地図から消えた東京の町」 福田 国士 祥伝社黄金文庫
読み始め 010323 読了 010327
コメント:○
一つ前に読んだ本と同じシリーズで、こっちは「町名」にこだわったもの。
最近この手の本を読むことが多いのだが、まあ扱う町は似たり寄ったり。もうちょっと突き詰めて、マニアックな部分に入り込んだ方が、もっと楽しいような気がし始めている。それにしても、町の名を無闇に変えるってのは、ほとんど犯罪に近い行為だよね。まあ、今だからそう思えるのであって、高度成長期頃には、古いものは全部捨てたいって風潮だったのかもしれないけれど、それにしてもね。
01008 「地図から消えた東京遺産」 田中 聡 祥伝社黄金文庫
読み始め 010320 読了 010323
コメント:○
鹿鳴館、淀橋浄水場、吉原遊廓など、かつては東京を代表するような施設や地区だったものが、時代の変革と共に姿を消し、そしてその痕跡さえもなくしていこうとしている。この本は、江戸、明治、大正、昭和と、かつて東京に君臨した庶民の名所を集め、その痕跡が失われることを防ごうと試みている。なかなか読み応えがあった。僕としては、「ムーラン・ルージュ」や「玉ノ井遊廓」のあたりが面白かった。あ、あとは「菊富士ホテル」もね。
01007 「この人を見よ」 ニーチェ 岩波文庫
読み始め 010315 読了 010319
コメント:◎
読み始めてから比較的すぐに、僕はこの作者に好感を持った。ああ、すごく大変だったんだろうなあ、という感じで。彼の書いていることは明確で的を射ていて、それでいて自信たっぷりなのだが、必要以上に扇動的なのは、彼が幸福ではなかったからなのではないか、などと思ってみたり。
発狂してから死ぬまでの11年間は、彼にとって幸せな時間だったのだろうか。そうであって欲しい。そうでなければ、あまりにも救いがない。
01006 「二百十日・野分」 夏目漱石 新潮文庫
読み始め 010307 読了 010314
コメント:○
「二百十日」。これがなかなか変な中編ですごく面白かった。二人の若者が、阿蘇山の麓の湯治場に逗留していて、あーだこーだと会話しながら、風呂に入ったり飯を食ったりビールを飲んだり、翌日阿蘇山に登ったりする話。ほとんどが会話だけで構成されているのだが、この会話に妙な味があって実にいい。漱石らしくないが、すごく楽しい。
「野分」。こちらは漱石特有の神経症気味の人間が何人か出てきて、大学は出たものの、という、三部作シリーズでもお馴染みの設定。意地悪がいたり、裕福なのがいたり、と、やっぱりなかなかの設定なのだが、やっぱりこの設定だったら、「三四郎」や「それから」なんかの方がしっくりくる。でもたっぷり楽しませてくれるところが、やっぱり漱石のすごいところ。
01005 「タナトス」 村上 龍 集英社
読み始め 010303 読了 010306
コメント:○
キューバを舞台とした、村上龍お得意の、セックスドラッグ&エログロ小説なのだが、ちょっと今までとは一味違う。まあ、嫌いな人にとってみれば大同小異なんだろうけど。
セックスとドラッグに溺れた女が、「傷つく」という言葉を言っている。今までの彼の小説には、「傷つく」なんて言葉は一度も出てこなかったと思うので、彼としても何かしら思うことはあるのだろうか、などと想像してみた。
01004 「縄文の生活誌」 日本の歴史01 岡村 道雄 講談社
読み始め 010225 読了 010302
コメント:○
講談社の「日本の歴史」シリーズの第二冊目だが01巻。せっかく世の中にでたというのに、出版された直後に上高森遺跡の捏造問題で藤村某氏の件が大きく報道され、そのとばっちりを受けて、この本の内容も近日中に大幅に書き換えられることになったという。まったく迷惑な話だ。この本の中で、特に前半実に藤村氏の業績について触れているから、まあ仕方があるまい
この本の面白いところは、途中に何個所も「物語」なる創作が挿入されていることだろう。この物語というのが、縄文時代や旧石器時代の遺跡等の検証によって解明されている史実に基づいて、作者が勝手に当時の生活を創作したもので、これが妙におかしい。縄文人はやたらと人なつっこかったり、恥ずかしがり屋だったり、祭で踊っている女の服がはだけて下半身が露になったりと、なかなかのできばえです、はい。
でも、この時代のことって、僕が学校で習った頃とは、全然違う認識が根付いてしまっているんだなあ。すっかり時代遅れな人間になっていたらしいよ僕は。
あ、そうそう、講談社では、この本の改訂版が出たら(藤村氏の件)、今の本を持ってる人には無料で交換してくれるらしい。そうなるとこの改定前の本は、そのうちプレミアがついたりするんだろうか。つかないだろうなあ。
でもどの辺がどう変わるのか、すごく興味があるから、二冊並べて検証はしてみたい。
01003 「東京地名考」 上、下巻 朝日新聞社会部 朝日文庫
読み始め 010213 読了 010224
コメント:○
東京の地名の由来や住居表示によって消えてしまった昔の地名などを、東京区市町村別に紹介している。誰もが知っているものから、すごくびっくりする由来もあったりして、すごく楽しめた。意外と多かったのが、地名より前に鉄道の駅名があったため、というもの。一番有名なのは、高田馬場だろうが、その他にもたくさんあった。
01002 「山谷ブルース」 エドワード・ファウラー著、川島めぐみ訳 洋泉社
読み始め 010206 読了 010212
コメント:○
山谷とは、東京都台東区北部に広がる、いわゆる「寄場」のある地区の旧称である。浅草から北に向かい、吉原を越えるとそこが山谷である。住居表示により、現在は台東区に「山谷」という地名はもう存在しない。
この本は、アメリカ人の作者が89年から91年にかけて、実際に山谷の労働者達と生活を共にし、一緒に日雇いの労働をしながら集めた証言集である。偏見や差別を持って触れられがちな人々の生活が、リアルに浮かび上がっていて、凄い。作者がアメリカ人であったために、日本人同士では語られないような部分にまで突っ込んで語られているように思う。
01001 「同時代ゲーム」 大江 健三郎
読み始め 010110 読了 010205
コメント:◎
読了するのにほぼ一カ月もかかってしまったが、それだけ読み応えがあったということだと僕は認識している。これは、僕がずいぶん読んだ大江健三郎の小説の中でも、一、二を争う名作だと思う。閉鎖された地域に生きる独自の神話と、その神話を語る語りべの、二つの、大きくスパンの違う二つの時間の流れが繊細に、そして大胆に交錯し溶解し、壮大なスケールの物語となっている。これはすごい。出だしが退屈なので読む人は要注意。そこを越えないと、退屈な出だしの意味がわからないから。
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