村上春樹の残作品集の第二弾は名作「羊をめぐる冒険」です。
こちらも文庫で何十回も読んでいる作品ですが、改めて一冊のハードカバーになったものを読むを何ともイメージが違ってくるのが不思議です。
村上春樹の作品の中でももっとも哀しいエンディングは、何度読んでも胸を締め付けられます。
付録で付いてくる著者自身の作品に対するメッセージ「自作を語る」もとても興味深いです。特に、この作品執筆の原動力が、村上龍の「コインロッカー・ベイビーズ」の発表と成功にあったという一文が印象的でした。
「罪と罰」を読んだのは高校生の時だったか。
「カラマーゾフ」は岩波文庫のものに挑戦したものの読み始めてすぐに退屈になってしまい頓挫。それきり20年近く経ってしまった。
素晴らしい新訳が出たと聞き、ちょっとおっかなびっくり手に取ってみた。本当に訳は素晴らしく、すいすいと入ってくる。
そして物語もまだ序章ながら素晴らしい。特に男性の視点から見ると良さが出やすいのではないだろうか。男の煩悩と野心、卑しさなどがとても率直に描かれている。
ここから物語がどのように展開するのか、とても楽しみだ。
何度目か分からない再読ですが、何度読んでも心が揺さぶられる名作だと思います。
下巻に入り謎が徐々に解かれていき、そして物語はクライマックスへと向かいます。
エンディングで与えられる世界は人それぞれ、春樹節全開という感じですね。
何度目か分からないほどの再読。村上春樹ワールド全開ばりばりの名作。
何度読んでも新鮮さを失わない素晴らしい物語。
村上春樹の初期全作品集の第一巻です。
収録されているのはデビュー作「風邪の歌を聴け」と第二作「1973年のピンボール」です。
どちらの作品も何十回も読んでいるわけで、今更なぜこの本を買うことになるのかといえば、この全集には「自作を語る」という村上春樹本人によるコメントがおまけでついているから、それが読みたくて買ってしまったわけで、まあ酔狂といえば酔狂ですよね。
でも、初期4部作の第一作と第二作がまとめて一つにされているという状況は何とも不思議で、ちょっと小説達は窮屈そうに行儀良く微笑んでいるように見えました。見慣れないハードカバーを電車の中で開くと、使い慣れない他人のPCでキーボードを打っているみたいな違和感と新鮮さを感じるものです。
それでもやっぱりこの二作は僕にとっては名作であり、そして村上春樹は僕にとってはJames Joyce、夏目漱石、大江健三郎、Lawrence Durrellと並ぶ五大作家なわけで、全集はちょっとずつ取り揃えて行こうと企んでいたりもするのでした。
ちなみにこの全作品集に収蔵された短編は、オリジナルから加筆・訂正されていますが、本巻収蔵の二編については、「1973年のピンボール」の例のフォルクスワーゲンの「ラジエター」が「エンジン」に訂正されている箇所以外はまったくオリジナルのままです。
ロバート・キヨサキさんの「金持ち父さん」シリーズ第三弾。
最初の2冊は概念的な部分が多いが、この「投資ガイド 入門編」は具体的な数字が出てきたりしてぐっと現実的になってくる。
プランを持つことや失敗に対する考え方など、今までの二冊ももちろん良かったが、この本はさらに良い言葉がたくさん詰まっていて、勉強になる言葉を手帳に書き写しながら読み進めた。
上級編も是非読んでみたい。
お笑いコンビ「麒麟」の田村裕が自らの波乱に満ちた反省を綴った自叙伝。
中学生のある日、突如自宅が差し押さえられ家族がバラバラになり、途方に暮れて公園の屋根付き滑り台遊具で生活を始めるところから話が始まる。
公園の草むらで用を足し、雨を風呂代わりにし、鉄棒に洗濯物を干し、食べるものがない日は草を齧る。公園に遊びに来る子供達に石を投げられ、あまりの空腹に耐えられずコンビニに行くも金がなく、店員の死角になった場所でパンを万引きしようか迷うものの亡くなった母の姿を思い浮かべ耐える姿は壮絶で、これが本当に現代の日本なのかと疑いたくもなります。
普通であればこれだけ劣悪な環境に身を置けば荒んだ考えに染まってしまいそうなところですが、田村少年の原風景には常に亡くなったお母さんとの暖かい日々の姿があり、お母さんの優しさに包まれた田村少年は天真爛漫に強く生きて行くのでした。
文章は上手ではないし今時のお兄ちゃんのつたない自叙伝なのですが、何とも心を打たれます。読後感はとても良いですね。
発売日に予約して買ったのに、何故かその後3年間も手に取ることがなく、ようやく読んだ。
良い意味で予想を裏切ってくれた。村上春樹の長編は、ハッキリと「ねじまき鳥」以前と以降に分けることができ、僕は「ねじまき鳥」以降の長編には燃え尽き感のようなものを感じ続けていたのだが、この「アフターダーク」は従来の村上春樹っぽさが奥に引っ込み、新たな世界を構築する準備に入ったのかな、と思わせるような実験的な作品だと感じさせてくれる。
文体もクールでテンポの良い従来の春樹節を封印し、丁寧に塗り込むような、静かで濃密な文章に仕上がっていて、一瞬芥川龍之介の文体を思い起こさせる。
夜が一番濃い時間の静かで淡い物語。新しい村上春樹の物語。
村上春樹の文章と佐々木マキのイラストで構成される絵本。
村上春樹の絵本はあまり心に染みないものが多いのだが、これはそれなりにストーリーがあって良かった。
やっぱり、ただ「メルヘン」みたいな話より、それなりに怖かったり怒ったりがあった方が童話としてもメリハリがあって良いだろう。
それでも村上春樹の童話はやっぱりイマイチだなあ。
漫画家としての杉浦日向子さんの記念碑的作品の下巻。
上巻に負けず劣らずの素晴らしい短編ばかりだが、個人的には花魁と国直が飲み比べをする「酔」、お栄が蔭間茶屋にチャレンジする「色情」、お栄の末の妹、お猶の旅立ちを描く「野分」などが好き。どれも本当に素晴らしい。
上下巻2冊の物語だが、できることならあと10冊分ぐらい読みたい、そんな気持ちにさせる名作。
漫画家としての杉浦日向子さんの真骨頂がこの作品。数え切れないほど再読しているがレビューを書いたことがなかったので今回の再読を機に書いておこう。
時代は江戸・文化期、登場人物は葛飾北斎とその娘お栄、居候の善次郎こと後の渓斎英泉、歌川派の歌川国直など。
一話完結のオムニバス形式で進む物語はどれも暖かくしっとりとして、心が温かくなるものばかり。上巻で特に好きなのは国直が幼馴染みの源ちゃんと再会する「四万六千日」、北斎が書き上げた龍の絵を台無しにしてしまったお栄が締め切り間際に代筆をする「龍」などなど、まさに名作揃い。
余談だが、私が持っている上巻の内表紙には、2003年10月5日に麻布十番であった講演会の時にもらった杉浦さんのサインが描かれている。
ロレンス・ダレルの「アレクサンドリア四重奏」の第二巻。
第一巻も十分に話がややこしいのだが、第二巻は第一巻の物語が「事実に反する」という第三者、バルタザールが「僕」が書いた第一巻の内容を補筆・訂正するという形を採り、その合間にパースウォーデンや「僕」の回想、さらに第一巻ではまったく触れられていなかった物語などが入り交じったり、誰でもない第三者がナレーターとして登場したりとかなり複雑さが増しているが、ダレル特有の豊かな文章はむしろ第一巻よりも見事に表現されていると思う。謝肉祭の場面はとても情感豊かで釘付けにさせられる。
物語がこの後どのように進展していくのか、楽しみでもあり不安でもある。
漫画家時代の杉浦日向子さんの作品の中でも、群を抜いて笑える、おばかな作品。久し振りに再読したが、やはり非常におばかでスカッと笑えて素敵だと思う。
杉浦さんの漫画は非常にシリアスなものもあるが、こういう楽しい作品をもっとたくさん残して欲しかった。作品を読み返すたびに、早過ぎる旅立ちを心から残念に思う。
117キロから一年で67キロに、50キロ減量した著者が展開する「レコーディングダイエット」論。
ダイエットに挑戦した人の多くが経験するリバウンドを防ぎ、楽しみながら減量するための成功体験が詰まっている。
ダイエット論自体も面白いのだが、個人的に一番面白かったのは、デブは何故デブなのかを解説している部分。
痩せている人はデブと同じものを同じ量食べると、次に空腹になるまで何も食べないのに対し、デブは満腹したあとちょっとでも胃に余裕ができるとスナック菓子などを詰め込んで満タンにしてしまうため、「空腹」の意味が分からない、という一節には驚愕した。
でも、自分自身も本当はそれほど空腹じゃないのに「もう晩ご飯の時間だから」と食べてしまうことがあったり、お酒を飲みつつスナック菓子を食べてしまったりするのが弱点なのだと分かって良かった。
楽しみながらのダイエットと著者は書いているが、それでもやはりかなりハードルの高いものではあるようだ。一年後の著者の体型が楽しみだ。
村上春樹の新作。小説ではないがエッセイともちょっと違う、「旅行記」ならぬ「走行記」のようなもの。
五十代後半になってもフルマラソンとトライアスロンに年に一度ずつ挑戦し続ける作者の姿勢は素晴らしい。他人と競争するのではなく、過去の自分に挑戦することの素晴らしさを知った人が一人走り続けるのだと、自分自身も走る人間として、改めて共感させられた。
著者が小説家として生計を立てる決意をした時期に走り始めた、というエピソードがなかなか素敵だ。村上春樹のこの手の文章は簡潔かつ深みがあってとても好きだ。
「少なくとも最後まで歩かなかった」という墓碑銘も彼らしい。
漠然と「アフィリエイトってどんなビジネスなんだろう」と思っている人がちゃんと勉強するには良い本だと思う。
「楽して儲かる」とか「あっという間にお金が」というのが嘘であり、「頭を使い」「時間を使い」「努力をする」ことで始めて利益が出るということを明確にハッキリ書いている点も良い。
自分のサイトにちょっとアフィリエイトのリンク貼れば儲かるか、みたいな世界ではないことが実感できて良かった。修行の道ですな。
中原さんの著書はどれもとても分かりやすくかつ論理的で洞察も鋭く大好きなのだが、この本も非常に素晴らしかった。
過去に中原さんが出版した著作や自身のブログなどの記事を抜粋している箇所が多く、最初は「過去の焼き直しの寄せ集めかな」と思ったのだが、それは意図的に行われていることで、総合的な株式による資産運用のために必要な情報が網羅されている。
ただ、基本的には株式によるアクティブ投資に限定された本なので、FXや金投資などについての情報は一切取り扱っていない。タイトルだけ読むとちょっと誤解を招くかもしれない。
残念ながらこれは外れ。
日経新聞の広告を見て、デイブ・スペクターの写真入りのコメントを見て読んだのだが、期待したほどの内容ではなかった。
若い著者の成功体験を伝授しようという姿勢は良いのだが、ロバート・キヨサキの著書に比べると中身が限定的で汎用性がなく、「まあ、それは言えるよね」という部分がちらほらあるものの、それはあくまでも再発見であって、「目からウロコ」というものはなかった。
再発見が出来た部分は評価できるかもしれないが、うまく宣伝に乗せられてしまった感じで残念であった。
同じ著者の前著「短期10倍銘柄」の続編的著書。短期取引はどうしても日中相場が見られる方が有利な印象があったが、長期ものの場合は日中相場が見られないサラリーマンでも十分対応可能と思われる。
「短期」と重複する箇所もあるのだが、この本は一度読んで終わりではなく、法則通りのチャートの形が実際の相場で現れるのを把握するためにも繰り返し開くべきドリルのようなものだと思う。であれば、一冊の中に全ての法則が網羅されているべきもので、重複も良いのではないかと思う。
カラーのチャートは非常に分かりやすく、楽しく法則を憶えることができる。
テクニカル指標をベースに、短期で大きく値を上げる銘柄の見つけ方、買い時、売り時を分かりやすく示した入門書。初心者から初級者向けでとても分かりやすい。
幾つかこの本ならではの特徴があるのだが、まず、著者が毎日更新するブログと本が連動しており、利益を出しやすいチャートの形をパターン化し、チャートのサンプルを多数カラー表示して目から記憶させる、という点が他の多くの本と明らかに異なる。
一度読んで終わり、ではなく、日々ブログを読み、どの銘柄がいつどのようなパターンになっているのかを追いかけることにより、自分なりの投資スタンスが確立できるようになるのではないだろうか。とても良くできた本だと思う。
株投資を実践する人、特に初級者が改めて初心を思い出すにはもってこいの良書。
取引の原則や市場の原理を解説する入門書ではないが、相場の地合に応じた実践的な資産配分や投資スタンスなどの解説と、そもそもの地合を作り出す外国人投資家の動きについて、さらに株式市場以外の外為や商品先物市場との連動などについて分かりやすく解説している。
入門書ではないので投資経験がない人が読んでも参考にならないと思うが、自らの投資スタンスが構築できていない人や、従来の投資システムが機能しなくなりつつある人など、壁にぶつかる人が読むと非常に参考になると思う。
著者の中原氏の論理は非常に合理的で分かりやすく、複雑な市場の仕組みがすとんと腑に落ちやすい。
「羊」4部作の最終章。「僕」の再生の物語。
春から夏へ向かう物語はハワイへ、そして東京へ、さらに札幌へと展開する。
探し求めた元恋人失踪の真相解明、そして親友五反田君との別れ、そして「羊をめぐる冒険」を彷彿とさせる喪失感に包まれる「僕」。
そして舞台は札幌へ。誰かを強く求めることが再びできるようになった「僕」は、再び羊男の住む異空間へと迷い混むが。
村上春樹の作品には非常に珍しい、雲一つないハッピーエンディング・ストーリー。名作。
「羊」4部作の最終作。
舞台は冬の札幌で始まり、新たな登場人物を加えつつ展開していく。「羊をめぐる冒険」ですべてを失った「僕」が再生する物語が始まる。
以前の3作から少し間があいたこともあり、作家として熟成してきたせいか、文章が華やかで洗練され、完成形へと近づいている気がする。
個人的には村上春樹作品ベスト3に入る名作だと思う。
「羊」4部作の第3作後半戦。
深まる秋の北海道という舞台でさらに奥地へと進んでいく「僕」。現実世界から非現実へのシフトが行われ、物語は一気に佳境に入っていく。
雪が降るようになってからエンディングまでのスピード感と静寂感は本当に素晴らしい。
エンディングの悲しさもぴか一。村上春樹ワールド。
村上春樹の「羊」4部作の第3作目。もちろんこれも再読。
第一作が「夏」、第二作が「初秋」だとすると、この第三作は「晩秋」というイメージからスタートする。それは実際に物語の季節が9月からスタートして深まる秋に向かって行くということもあると同時に、第一作で20歳だった「僕」が第二作では24歳になり、そしてこの作品では29歳を迎え、若さのピークから徐々に離れて行くという構図にも活かされている。
村上春樹の多くの作品に特徴的な、極めて現実的な設定の中に非現実がすっと入り込んできて物語が展開するというストーリーは、本作で基盤が構築されたように思う(前作の「双子」にそのエッセンスのスタートは感じられるが)。
まだ夏の気配が残る初秋にスタートした物語は、ぐっと季節が進んでいる札幌へと移動したところで下巻へと続く。深まる秋と姿を見せる物語の本質。村上長編ワールドの礎である。
村上春樹のデビュー第2作であり、「羊」4部作の第2作でもある(「羊」を3部作と判断する方も多いようだが、私は「ダンス」までを含めて4部作と呼ぶ)。こちらも何度目か分からないほどの再読。
「風の歌を聴け」のエッセンスを保ちながらも、本作は今後の村上春樹の作品群の芽生えのような意味合いを多く持つ、実験的作品だと思う。
「僕」と「鼠」という二人の主人公がパラレルに動くストーリー展開、「直子」という名前とその死、双子との奇妙な生活とその「喪失」など、小さなきらめきが後日の名作の手がかりになっているのが良く分かる。
「風の歌を聴け」が「若い夏の煌めき」だとすると、「1973年のピンボール」は「秋の夜の静けさ」を連想させる。夏の暑さを思い出しつつも、来るべき冬の予感も感じる。そんな名作。
ダレルは僕が大学時代に一番はまった作家。卒論もこの人の"The Black Book"で書いた。この作品も学生時代に一度英語で読んだもの。日本語の新訳版が出たので読んでみた。
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1930年代、イギリス植民地時代のエジプト、アレクサンドリアが舞台。イギリスから流れてきた「僕」と、彼を取り巻く男と女達。ギリシャ人、ユダヤ人、フランス人、そして街の喧噪とともにアラブ人の影がゆらめく。
"Word Spinner"の本領発揮、文章は流れるようで豊穣である。物語の本質はシンプルな不倫の話なのだが、土地と時代、そしてダレルの文体と物語の構成力によって複雑なテクスタイルのような輝きを見せてくれる。
四重奏はまだはじまったばかり。第二作を読み始めるのが今から楽しみだ。
仕事で突如「新規事業の立ち上げを模索せよ」ということになり、それではどのような手順で物事を進めれば良いか勉強せねば、ということで購入。
正直これ一冊だけではどうにもならない深い世界なのだということが分かったぐらいだろうか。各ステップについては良く分かるのだが、通りいっぺんで書かれてしまっており、「で、その調査レポートってどうやって作るのさ」みたいな、肝心の具体例のブレイクダウンがないのが残念。
もっと勉強しなさいってことなんだろう。でもやるべきことがナンなのかはとても良く分かったと思う。
以前レビューを書いた「カラ売り入門」の続編にあたり、株取引のカラ売りの実践的テクニックを説明している。
「カラ売り入門」はちょっと説教臭く感じられる部分があり、満足度はイマイチだったのだが、本編はより実践的になって満足度が高くなった。
カラ売りを仕掛けるタイミングとその成功例、失敗例が分かりやすく図解されていて売建未経験者にも分かりやすい。
ただ、何冊にも分けるほどの内容かなあ、という気がしないでもない。前作と本編をまとめて一冊にするぐらいが適切なボリュームではないかなあ。
PowerPointを使って企画書やプレゼン資料などを作る仕事をする時にとても役立つ良書。
PowerPointのスライドのデザインや操作方法を説明する本はたくさんあるが、この本は企画書の中身を寄り魅力的にするためのテクニックが詰まっている。
個人的に特に魅力的だったのは、目次、章扉を含めたテンプレート作りの部分と、ホワイトページで先に全体像を作ってしまうという作成方法の部分。
自分が作る企画書をもっとレベルアップさせたいという方の強い見方になると思う。大変参考になった。
村上春樹のデビュー作であり、「羊」4部作の第一作。
数え切れないぐらいの回数読み返してきたが、やはり何度読んでも素晴らしい。リズムと歯切れが良く、からりと乾いた夏の風のように物語が進んでいく。
ちょっとキザすぎるという気もするが、それがクールと思われる時代もあったってことで。
経営コンサルタントの著者が綴る、起業を目指す人を応援するメッセージ集のようなもの。詩のような散文体で綴られる文章は優しくて、起業という言葉から想像される壮絶なイメージとはかけ離れている。
いくつか素敵なフレーズが心に残った。「成功の反対が失敗と考える人が多いけど、成功の反対は何もしないこと」
もし自分が起業しようとしているのなら、たくさん響く言葉があるのかもしれない。
吉野家ディーアンドシー社長、阿倍修二のインタビューを著者がまとめたもの。とにかく素晴らしい。
若手幹部だった1980年に創業者社長のもと急拡大していた吉野家はその拡大政策が破綻して倒産。その後旧セゾングループの一員となり業績回復し、日本の食産業を代表する企業となった。
デフレ時代に牛丼の値段を大きく下げて、マクドナルドと共にデフレ時代の勝ち組と称され、営業利益率も15%を誇った。
しかし、2004年のBSE問題でアメリカ産牛肉の輸入が完全停止すると吉野家は牛丼の販売を停止する。同業他社が豪州産などの牛肉を使用して販売を再開する中吉野家はアメリカ産にこだわり、アメリカ産牛肉の輸入再開まで牛丼販売を行わなかった。
その間当初会社は赤字に転落するが半年後には牛丼抜きで黒字復帰、さらにその後も外食産業の平均的利益率5%を回復し、牛丼販売再開を待った。
80年代の倒産と2004年からのBSE問題という二つの大きな危機をどのような哲学のもとに乗り切ったのか、何を学んだのか、そして何を守ろうとしてアメリカ産牛肉にこだわったのか。
大手だろうが中小だろうが個人事業主だろうが、自分のビジネスを切り盛りする立場の人には是非読んでもらいたい。勇気が出る本だ。
天才アラーキーのエッセイというか放談。
言っていること自体は面白いのだが、文体がずっと同じリズムで単調なのがたまにきず。
著者の並々ならぬ女性に対する愛情と欲望が良く表現されていて、男なら皆「そうだよなあ」とうなずく主張も多いのではないか。
所々に挿入されている写真も良いが、ヌード写真が多いので通勤電車やオフィスでは読みにくいかも。
いずれにしても、この人は写真の天才であって、文章の天才ではないということだ。悪くはないが、凄くもない。
一体何度目の再読だろうか。恐らく10回以上は読んでいるだろう。
この作品についてのレビューを書くことはとても難しい。この作品を「好き」と言うことも難しい。主体的に「好き」という言葉で現すのは不適切で、もっと受動的に「染み入ってくる」とか「染み渡る」という言葉で現すべき事項のような気がする。
全編を通してテーマが「死」であるためトーンとしては淡い墨絵のように淡々としたものだが、その中でも前半部分においては穏やかな優しさや若さが放つエネルギーのようなものが散りばめられている。
個人的には永沢のキャラクターが好きだ。彼の世界観、倫理観などに触れると自分ももっと上に向かって進んでいかなければという気持ちにさせられる。
下巻に入ると上巻に登場した様々な登場人物が一人消え、また一人消えと舞台から姿を消し、気づけば「僕」は一人ぼっちになっていた。
中盤から後半に向けての「僕」の孤独と消耗についての描写は胸を締め付けられる。そしてエンディングへのスピード感は本当に素晴らしい。
何度読んでも染み渡る。村上春樹の作品の中では突出してテーマがダイレクトで、そして一番静かで激しい物語。
整体師である著者が独自の理論で語る骨盤と肩甲骨の仕組み。
骨盤は一日に1度時間に合わせて開閉し、また、もっと大きな周期として二週間に一度閉じ、その後二週間かけて開く、というもの。
この周期による骨盤や肩甲骨の開閉の仕組みにより、人間の様々な不調や病気などが引き起こされており、それを解決するためにもこの仕組みを理解する必要がある、と説く。
骨盤の開閉については科学的根拠はまったくなく、その検証もされていないのだが、なんとなく説得力がある。
夜眠る前にこの本で推奨されている体操をやってみると、翌日になると股関節の調子が良くて体が軽いような気がする。
そんな感じで、本の主張もファジーだし、体感値もファジーなのだが、ちょっと気になる骨盤の話としては面白かった。
株の信用取引におけるカラ売りについての概論とその実践法を説明しているノウハウ本。
出版されたのが99年で、当時はまだネット証券もあまりなく、証券会社の営業担当に促されて取引するスタイルが一般的だったようで、いま2007年になると大分情報が古いと感じてしまう部分も多い。
これだけネット証券が全盛になり手数料も下がり、個人投資家が手に出来る情報量が爆発的に増えた今日に読むと、著者が力説する「カラ売りは悪ではない」という言葉もあまり力を持たない気がしてしまう。カラ売りなんて皆普通にやっているじゃないか、と。
しかし、そのギャップが99年と07年の間に証券市場が進化した結果なら、この8年の進化の結果は素晴らしいと言えるだろう。今や投資金額が100万円に満たない初心者でも信用口座を難なく開設できるようになった。
カラ売りに関する初歩的なノウハウも勉強になったが、一番面白かったのは「出来高対応チャート」の説明の箇所であった。このチャートは確かにとても見やすく、トレンドの変化をキャッチしやすいように思う。
ネット上で出来高対応チャートを提供しているサイトもあるようなので、さっそく活用したい。
杉浦さん没後にたくさんのエッセイ集が出版されているが、これもその一つ。大きく3つのシリーズものエッセイから成る。それが「食」、「道」、「楽」。
久し振りに元気で勢いのある文章が読めて嬉しく感じた。没後発表されたエッセイの中には自身の死を見つめた、儚く消え入るようなものが多く、読んでいてとても寂しかったのだが、このエッセイ集には元気な杉浦さんが満ちている。
個人的には一番最初の「食」に関する文章が一番好きだが、酒器コレクションを毎月公開する「道」も捨て難く、また、3つのシリーズの合間に挿入されている「箸休め」もまた良い。
編集部がかなり気合いを入れて作ったのではないだろうか。没後発表されるエッセイ集にありがちな「ちぐはぐさ」がなく、サクッときれいにまとまっていて良い。
丸谷才一、井上ひさし、吉行淳之介など、そうそうたるメンバーの小説作品を滝田ゆうが漫画化した短編集。
どの作品もじっとりとした影があり、とても日本的な作品に仕上がっている。滝田ゆう得意の下町の子供達からのアプローチは影を潜め、男と女、金と酒と欲望などが絡み合う大人の姿を描いている。
読み終わった後に何ともいえない後味が残る。滝田ゆうワールド。
再読。
風俗ライター吉村平吉氏が自分の視線で捉えた吉原を綴ったエッセイ。終戦直後から最近までの吉原の移り変わりや自らの吉原体験、東京における性風俗の移り変わりなどを綴っている。
終戦の焼け野原から復活し、「赤線」として昭和33年の売春防止法施行まで最後の公郭として機能した時代から、売春防止法施行後の火が消えた時代、そして昭和40年代に法の網をくぐり「トルコ」として復活する吉原、そしてソープランド時代。
自ら客引きとして働いた時代から吉原にとても近く生きてきた著者でなければ書けない、生き生きとしたタッチが素晴らしい。
今回久々の再読だったが、この間に非常に大きな変化が起きた。著者吉村平吉氏が亡くなってしまったのだ。
前回読んだ時は「おもしろいオッサンが頑張っているな」と思ったものだが、今回はこのオッサン自体がもう思い出になってしまった。
滝田ゆうの表紙も良いです。下町歩き好きの方は是非。
タイトルから外国人投資家の動向にフォーカスした本なのかと思ったが、全体の2/3程度は外国人投資家とは関係なく、大きな上昇相場、ボックス相場、大きな下落相場という、異なる相場環境における最適な投資方法について説明しており、最後の1/3程度が外国人投資家の動向と日本人が陥る投資における欠点を指摘している。
前半2/3はタイトルとは関係ないのだが、それぞれの局面における投資スタンスのコツがとても簡潔かつ明確に書かれており、とても勉強になった。ただ、下落局面における空売りについての記述はほとんどなかった。
そして残り1/3の外国人投資家の投資手腕の特徴を過去の相場を例にして説明する部分もとても明確で納得させられることが多かった。
日本人投資家が総悲観になり投げ売りする局面で外国人はそれを安値で広い、日本人が総楽観になり一斉に買いに出た時に安値で買った株を一斉に売り始める。
無知なまま投資を続ければ外国人投資家の餌食になり、日本人の富は外国人に吸い取られてしまう。そんな一言が染み渡る。とても勉強になる名著だと思う。
株取引のノウハウ本は大分色々と読んだが、この本はその中でも非常に「親切」で素晴らしい。
「親切」というのは、読む人が本当に儲けられるように、ノウハウ実践の根本の部分までを惜しげなく公開しているという点で感じることである。
多くのノウハウ本は、儲けの仕組みの原則についてはざっと述べているが、実際にそれを初心者がどのように運用すれば良いかについての説明が省略されている場合が多い。この本ではその点を省略することなく、非常に具体的かつ詳細に購入や売却のポイントについて説明されていて好感が持てる。
サラリーマンを退職してデイ・トレーダーになったが、その後またサラリーマンに戻ったという経緯にも納得。サラリーマンが仕事を続けつつトレードを行う際の心強い手引書になるだろう。
「村上朝日堂」でおなじみの村上春樹、安西水丸両氏による、猫を愛でる絵本。
まあ絵本といえば絵本なのだが、子供向けというわけでもなく、どきどきするストーリーがあるわけでもなく、何と言うか、作者の猫に対する並々ならぬ愛情を吐露する場となっている感じ。あまり特筆すべき点はない。
猫が好きな人は読んでほのぼのできるかも。
再読。
世の中にきらびやかな高級レストランや和食の名門などのガイドブックは数多くあふれ、対極をなすB級グルメも脚光を浴びることが多い昨今だが、セピア色の景色に溶け込むような下町の酒場ばかりを集めたガイドはこの本のほかにはない。
老夫婦が切り盛りする川沿いの商店街や場末の町外れの古い酒場にふらりと辿り着いた筆者が一夜の止まり木として選んだ店の魅力を淡々と、しかし情感豊かに語っていく。
本書に登場する店は六本木、青山、代官山といったガイドブックに数多く登場する地名ではなく、南千住、泪橋、立石、深川といった東京東側の「下町」ばかりだ。
本書は単なる「ガイドブック」にならないようにと、店名のほかは町名までしか記載がなく、住所も電話番号も載っていない。急に本を読んだ「にわか」ファンが殺到して需給バランスが崩れないようにという配慮からであると同時に、酒場を求めて夕暮れの下町を彷徨う楽しさを読者にも知ってもらいたいという著者の希望も具現化している。
この本を最初に読んで5年以上が経った。この本の表紙に写真が使われている山谷の「大林酒場」や千束通りの「乙姫」など何軒かの名店に脚を運んだ。若輩者ながら、下町酒場巡礼の魅力にすっかり取り憑かれてしまった。酒飲みのバイブル。名著である。
株取引の銘柄選びと売買タイミングについて分かりやすく解説している。
前半はファンダメンタルズ、後半はテクニカルを中心にどのように売買銘柄を決めるか、どのタイミングで売買するのが良いかを説明している。手に入れたい情報がどの媒体で入手可能かについても丁寧に解説していて分かりやすい。
個人的には信用取引残に関する解説と一目均衡表の読み方についての解説がとても分かりやすく勉強になった。
かなり分かりやすく、良心的に書かれた良い本だと思う。
再読書が続いているが、これも何度目か分からないほどの再読。
村上春樹のデビュー作。カラリと乾いた文体とテンポの良い展開、そして複数の語り部がランダムに入り交じりつつ一つの物語を構成していくスタイルは今でも新鮮で読み返しても色褪せない。
村上春樹独特の他人との距離感や自分の世界に対する諦観はデビュー作の時点でほぼ出来上がっている。
文中に何度も引用されるアメリカ人作家、デレク・ハートフィールドは想像上の人物であり実在はしません。参考文献欄まで付けて引用しておいて虚構の人物というのも村上春樹らしい。
夏の来る前に読む、カラッと乾いた小説。
これまた何度目の再読か分からない。本もカバーもボロボロだが内容は古びない。村上龍の初期記念碑的作品。
文章の密度とリリシズムが強く、本の厚さはそれほどでもないのだがギッシリと文章が詰まっている。
2007年になって読んでも古びない25年前に書かれた近未来小説。夏が来る前に読むのが一番良い。
予想以上に読みごたえのある、奥の深い本だった。
テクニカルやファンダメンタルズに注力するノウハウ本が多い中、この本ではマーケット全体の「地合」の読み方とその背景の解説に力を入れていて、これが非常に勉強になった。
最近疑問に感じるNY株式相場の青天井の上昇とサブプライムローン問題の関係やオイルマネーと日本株の位置など、地合が今後どのように変化するかの予測や地合を読むための指標の解説などは貴重だ。
日経平均先物ミニに関する解説については残念ながら先物取引の経験がなく良く分からなかったが、独特の文体もあって興味深く読める良書だと感じた。
大勝ちすることより負けないことを重視する株式投資に関するトレーダーkuma氏のルール集。
読んでみると確かにコンサバな感じで、スウィングよりも少し長めの取引期間に焦点を当てている感じ。
「同じ銘柄を複数日に分けて買う」とか「配当がない株は株じゃない」など、今まであまり意識していなかった視点もあり勉強になった。
平良さおりさんのぶっ飛んでる挿絵も笑えて好き。
一体何度目か分からないほどの再読だが、今回は最後に読んでから大分期間があいたため、新鮮な気持ちで読むことができた。
村上龍のデビュー作であり、私にとっては「コインロッカー・ベイビーズ」と並ぶ彼の最高傑作の一つ。
60年代末から70年代初頭にかけてのフラワームーヴメントがもたらしたヒッピー文化と、その結果若者に蔓延したドラッグへの依存、そして向かう先のない未来に対する失望と倦怠。
村上龍の他の作品では影を潜める強烈なリリシズムと奇妙な静寂感に包まれた美しく破滅的な世界は時代を経ても色あせず瑞々しい。素晴らしい作品だ。
小学生時代に買った文庫本を本当に久し振りに開いてみた。果たしてこの航海記の舞台は1959年、あと2年で丸50年前のこととなる。時の流れを感じることになった。
それでもなお瑞々しい文章とウィットの効いたユーモアが全編に散りばめられており、今読み返してもとても魅力的な作品であり続けていることを体感できたのは大きな収穫だった。
船で海外に行ったことがない身としては、読了後妙にそわそわしてしまい、旅に出たいなあ、などと思う。どくとるマンボウ万歳。
株式投資を行う際のテクニカル分析法について詳細に説明してくれる良書。非常に具体的かつ良心的に説明してくれる。
著者は強い信念を持ち自身の投資哲学を述べるが、時として論調が熱を帯び過ぎる部分もあるが、それも著者自身の自信の現れと捉えたい。
株式投資を始める時点で最低限必要なテクニカル分析に関する知識を的確に与えてくれる。こういう本は貴重だと実感。
限られた時間で株取引をする一般投資家が陥りやすいミスを列挙しつつ正しい取引方法を教示してもらえるノウハウ本。
元山一の証券マンだけあって深い洞察がありとても勉強になる。あくまでも本業を持つ人間が副業で株式投資に触れる場合に特化し、そのような投資家の心理や行動を的確にかつ整然と取り上げている。
難をいえば著者自身の経験則の部分に本来必要ではない秘話の公開みたいな部分が多く、これはもうちょっと少なくても良いのでは?と思わせる。
しかしトータルでとても勉強になる素晴らしい本だ。株式投資を始める前に読むとベスト。
限られた時間で株取引をする一般投資家が陥りやすいミスを列挙しつつ正しい取引方法を教示してもらえるノウハウ本。
元山一の証券マンだけあって深い洞察がありとても勉強になる。あくまでも本業を持つ人間が副業で株式投資に触れる場合に特化し、そのような投資家の心理や行動を的確にかつ整然と取り上げている。
難をいえば著者自身の経験則の部分に本来必要ではない秘話の公開みたいな部分が多く、これはもうちょっと少なくても良いのでは?と思わせる。
しかしトータルでとても勉強になる素晴らしい本だ。株式投資を始める前に読むとベスト。
大好きな杉浦日向子さんの没後に出版されたエッセイ集。
前半は他の本に付く「あとがき」が多く、実際に本を読んでいないためあまり入り込めないが、途中からは雑誌等に発表されたエッセイや後援会でのお話しを起こしたものなどが多くなり、それに伴い充実した形になった。
私自身杉浦さんには麻布十番で行われた講演会の際に一度だけお会いしてサインをもらったことがあるのだが、その講演の時の元気だった杉浦さんの姿が浮かんだ。
最後のページのマンガには涙が出る。本当に惜しい方を亡くした。
まだ大臣になる前の竹中平蔵と売れっ子CMディレクター佐藤雅彦が税金や金融、国の仕組みなどについての疑問について話し合う対談形式の本。
佐藤雅彦が竹中平蔵にお金や国の仕組みに関する素朴だがとても本質的な質問を投げかけ、それに対して竹中平蔵が答えるという形式で進むのだが、僕らが知っているべきなのに知らないでいた事柄が続出して、ビックリするやら感心するやらで、あっという間に読み進められた。
巻末に竹中さんが大臣になった後に再会した二人がその後の日本について再度語り合う箇所があり感慨深い。この本が最初に作られた頃は日本は「失われた10年」の真っただ中だったのが、あとがきの再会部分では竹中さんはまさに改革の真っ最中、そして僕がこの本を読んだ時には小泉・竹中改革は一定の結果を残し景気は回復、そして竹中さんは大臣の仕事から退いた。
日本が抱える問題のうちどれだけが解決し、どれが手つかずで残っているのかを知るために、さらに2007年版を作って出版して欲しい。名作だ。
66万円の元手を株のデイ・トレーディングによって3年弱で3億円にまで増やした27歳の若者が書いたノウハウ本。
非常に好感が持てる本である。それは、著者が成功体験よりも失敗体験にスペースを割いてリスクを説明していることと、取引金額が大きくなるのに伴い感じるプレッシャーとの闘いが重要であるという、あえて精神論に重きを置いているためであろう。
冷静であれば難なくできる判断がプレッシャーのせいで出来なくなった時の描写はリアルかつ的確で、初心者にとっては非常に勉強になる。
タイトルだけ見ると「両手に泡」的バブル本みたいだが、内容の濃い良書だった。これから株取引を始めたい人にとっては勇気とノウハウを同時にもらえる素晴らしい本だと思う。
お馴染みの村上春樹と安西水丸の軽快エッセイ集。
村上春樹という人は小説とエッセイでノリがあまり変わらない。変なところに強いこだわりを持っていたり、普通の人が当たり前にやっていることがまったくできなかったりというのは、彼が書く小説の主人公に良く似ている。
本編は著者の精神状態がどちらかといえば良い時に書かれたもののようで、タッチも軽快で話題も軽やか、ジョークもなかなか切れて楽しい。この人は緊張していたりコンディションが悪かったりすると文章が「凍っていて」、感情の起伏が見えにくくなるのだが、本編はとても良かった。
それにしても何でハワイに行くのにスーツケースに冷や麦15束も持ってくんだよ。というか別のエッセイではギリシャで冷や麦食べてたぞ。そんなにうまいか?
デイ・トレードのような短期型の資産形成ではなく、長期に渡りいかに資産を形成するかを、保有する資産の種類、比率に分類し、各金融商品の持つメリットとリスクを丁寧に説明している。
MMファンド、REIT、FXなど、それぞれの金融商品がどのような点で優れ、どのような欠点があり、従って、どの程度の保有率にすべきかが手に取るように分かる。
著者の一貫して冷静で中立的な態度にも好感が持てる。業界内部の人間から見たら「ネタバレ」的に、買ってはいけない商品とその理由についても述べられていて、信頼感がある。
惜しいのは、ちょっと情報が古くなってきていることで、基本的な部分はそのまま残し、本の中のデータだけを最新のものにアップデートして「2007年版」としたら完璧。良い本です。
「金持ち父さん貧乏父さん」の続編的位置づけだが、前書を読了しさらに勉強をしたい人向けに書かれているため、より具体的で攻撃的な内容となっている。
人間が収入を得る方法を「従業員(E)」、「個人事業主(S)」、「会社経営者(B)」、「投資家(I)」の4つの「クワドラント」に分類し、経済的自由を得るために自分が現在どのクワドラントにいるか、将来どのクワドラントに所属したいか、という視点で理論展開する。
「金持ち父さん貧乏父さん」を読了した時には「すぐに何かをしなければいけないが、何から始めたら良いのか分からない」という焦燥感が募ったが、この二冊目を読み終えると、自分が何から始めるべきなのか、具体的なビジョンが見えてくる。
一冊目だけしか読んでいない方で経済的自由を早く手に入れたいと思っている方は是非この二冊目を読むことをお薦めする。
経営者や中間管理職が、社員をいかにやる気にさせ、職場を活性化させるか。小さな「しかけ」によって社員を乗せてやる気をださせる20のTipsが乗っている。
この人の本は何冊か読んだのだが文体が好きではない。大の大人向けの本なのに「ムズムズ」(実行するのが難しいことの表現)のように子供言葉を使うのは読んでいてイライラする。
だが、本の内容はなかなか充実している。確かに簡単に実行でき、社員がやる気を起こすようなしかけが紹介されている。
なかにはちょっとあまりにもやり過ぎという感じのものもあるのだが、一つずつ出来ることから実行していくと成果が出るだろうと思わせる。
村上春樹の文章と稲越功一の写真のコラボレーション。イメージ文章とイメージ写真の組み合わせ。短編ですらない。
正直この作品はいただけない。村上春樹がなぜこの作品を出版しようと思ったのか分からないが、村上春樹の作品の良さを消してしまう作り方だと思う。
行間を広く取ったりするのも不要な演出のような気がする。あと、写真と文章の関連性が見えないケースもあり、すっと入り込むことができなかった。
残念ながら印象に残らない作品だった。
村上春樹のギリシャ、トルコ旅行記。村上春樹の旅行記はとても好きなのだが、基本的にこの人の旅行記はヘンテコリンな場所に行ってとんでもないトラブルに巻き込まれてヒーヒー言っている時が一番面白い。
そういう意味ではこの本は最高に面白い。ギリシャといってもアテネやエーゲ海の島々に行くのではなく、アトスというギリシャ正教の聖地、つまり坊さんしかいない教会だらけの場所を巡礼するかと思えば、トルコではクルド人ゲリラが潜んでいる奥地でキャンプをしちゃったりする。
この人ってこんなマッチョな作家だっけ、と思うほど、体を張ってネタを提供してくれている。でもこの本で紹介されている場所には、僕は行きたいとは思わないなあ。
SO9000に興味はあるけれども詳細は分からない、という人にうってつけの入門書。図解も多くボリュームも多すぎず、とても分かりやすい。
ISO9000への取り組みを行っている会社では、新入社員に配布したりしても良いのではないだろうか。なかなか面白かった。
村上春樹のエッセイ集。「村上朝日堂」に続いてイラストは安西水丸氏。
一作目は「日刊アルバイトニュース」連載だったせいもあって見開き2ページ程度の短いエッセイを集めたものだったが、本編ではだいぶ一本が長くなり、その分重たい話題や独白的なものも増え、厚みが増した感じ。
村上春樹の軽妙な語り口とリズムの良さはもちろん健在で、まったくストレスなくあっという間に読めてしまう。
「はいほー!」とはなんぞや、と知りたい方は、最後の一編を読むことで問題解決。はいほ−!
村上春樹のスコットランドのアイラ島とアイルランドの旅行記。旅行記とは言ってもタイトルの通りウィスキーに関する事柄だけに焦点を当てて書かれており、合間に奥さんが撮った写真が散りばめられている。
僕は村上春樹の旅行記が大好きで、この作品も楽しく読めた。アイラ島やアイルランドのウィスキー作りの現場の風景やパブのカウンターに佇む老人の姿などが生き生きと描かれていて素敵だ。読んでいると自分もその場所に旅行に行ったような気分になってくる。
もっとボリュームがあっても良いと思うし、もうちょっと村上春樹独特のひょうひょうとした面白い部分があれば嬉しいかも。
ジョギングと並行して筋トレも効率的に行いたいと思い読んでみた。
ゆっくりした動きで筋肉に化学反応を起こさせる「スロー」と激しく急速な動きで筋肉に物理的ダメージを与える「クイック」の組み合わせが論理的にも実践的にも最も優れた筋力アップ法であると説く。
著者のオッサンが46才にもなってメチャクチャ筋骨隆々な姿を写真で公開していて、これは凄いと思わず感じてしまう本ではある。
でもこの筋トレはかなーりキツい。最後までやりきれるだろうか。
日常的に行っているジョギングをスピードアップし、将来的にはレースに出られるようになりたいと思い購入した。
走るために必要な基本姿勢の大切さやウォーミングアップメソッドなどが丁寧に解説されている。丹田、骨盤、肩甲骨が重要であるというのは、この本を読みつつ走りながら意識してみることですぐに実感できる。
ジョギングはできるようになったけれど、今度はもっと速いランニングに移行したい人にお薦め。
本古来の昔話を寓話的に書き換えて、私達がお金とどのように触れるべきか、投資をするための心構えとはどのようなものかを説いていくというちょっと変わった本。
各物語のオリジナルストーリーがあり、その後に投資、お金を主題にした寓話が続き、最後に寓話が何を狙って書かれたものかが分かるような、投資を行う際のコツ、手引きが書かれている。
村上龍が言っていることはもっともなのだろうが、読んでいてちょっと説教臭く感じたり、違和感を感じたりする点があるのは、恐らく村上龍が投資でどのような成功を収めたかについての記述がなにもないからだろう。
カラーの挿し絵がたくさん入って読みやすいのは素敵だ。
頭の中にずっとあった曖昧とした不快感というか違和感のようなものが霧が晴れるようにクッキリと実態を現す。そんな本だ。
たくさん仕事をして偉くなってお給料が上がり,そうするとちょっと贅沢をして少しお金を貯めて、という生活の先にあるものに対する不安を払拭してくれる。
あと10年早く読んでおくべき本だった。名作。
3度目か4度目の再読。決して名作ではないし、猥雑で下品な物語ではあるのだが、その猥雑さが醸し出す妙なエネルギーに満ちた作品で、たまに読み返したくなる。村上龍の作品には政治経済にかなり突っ込んだ内容のものが近年多くなって来ているが、そういった路線のごく原始的な部分がこの物語にも散りばめられている。個人的には村上龍は最近のものよりこの頃のものの方が好きだ。