読書記録 2008

18. 「武士道」新渡戸稲造著、岬龍一郎訳 PHP文庫 2008.7.19 読了

侍の心、「武士道」。聖書やコーランとも比較される日本人の精神的拠り所について、新渡戸稲造が明治期に英語で書いたものを日本語訳したもの。

武士道自体は江戸期までに自然発生した日本の武士の道徳観であり、明文化された規定などがなかったものを、明治になり、新渡戸が初めて文書にした。つまり、武士道は武士が日本から失われ、規範としての直接的な役割を終えた後に初めて明文化されたものということになる。

明治中期、日本は欧米諸国からはアジアの端の文明も何もない遅れた国と見られていた。しかしそんな中で日本は日清戦争で清国に勝利し、そのことによって欧米諸国から興味を持たれるようになった。

そんな時期に、英語のスペシャリストであり、また、キリスト教徒でもある新渡戸が、西欧の文明や価値観、それにキリスト教の教えと日本の武士道を比較して、武士道が日本人独特の価値観や道徳観として、西欧化する時代にあっても日本人の原点としていかに深く根付いているものであり、また、いかに日本人と武士道という精神が優れたものであったかを熱心に説いたのが、この「武士道」である。本書は出版後当時のアメリカのルーズベルト大統領をはじめ多くの欧米政治家や思想家に熱狂的に受け入れられ、日本という国と、武士、サムライという存在が欧米に広く知られるきっかけとなった。

「義」、「勇」、「仁」、「礼」、「誠」、「名誉」、「忠義」などのキーワードごとに、日本人が武士道をバックボーンとして、どのような価値観を持ち、どのように振る舞うべきと考えられていたのかが、西洋人の価値観や習慣と比較され説明されていく。

驚くことに、この新渡戸の書が書かれてさらに100年以上が経過した今日でも、日本人の精神構造の根底は当時と大きくは変化しておらず、今でも十分にその思想のコアは日本人に脈々と引き継がれていると感じられる部分が少なからずある。

バブルの崩壊を経て自信を失った日本人が、これからの時代をどのように生きて行くべきかを考えるべき時期にきているように思うのだが、それに際して、経済効率や物質的豊かさの追求ではなく、武士道に基づく心の豊かさを求めることも必要なのではないかと考えた。

暗黙知として共有されている部分が残る武士道だが、多くの日本人がこの本を読んで、かつての日本人が強く抱いた武士の心を将来に残すことに対して、もっと興味を持つべきなのではないかとも思った。

17. 「Macの便利ワザ500」村上 弘子、白瀧 由裕著 ソーテック社 2008.7.7 読了

「Macはもう何年も使っているから基本的な操作が延々と書かれた入門書は必要ないけれど、実はOS 10.5の新機能については基本操作以外はあまり良く知らない」。「Safari」や「Mail」など、Macに付属してくるソフトはインターフェースを見て使っているから、不便ではないけれど、実はもっと便利な使い方があるのではないだろうか」

本書は上述したような、初級ではないユーザー向けに、基本操作部分は割愛して「より便利な」「こんなこともできる」という部分に特化して作成されたノウハウ本である。

メニューやショートカットで出来る便利ワザが満載なので、キーボードからマウスに手を動かす必要が激減し、操作時間の大幅な短縮が目指せる点も素敵である。

マニアックでニッチな本だが、着眼点がなかなか素晴らしい。愛用書になりそうだ。

16. 「仕手株でしっかり儲ける投資術」中原 圭介著 日本実業出版社 2008.7.6 読了

「仕手筋」「仕手株」というと、言葉の響きからして、いかにも「怪しい」「手を出すと大けがをする」という印象を持ってしまうが、この仕手株の動きを冷静に分析すると、意外にもきっちりとした型があり、その型に沿う法則を使って売買をすることにより、短期で大きな利益を作れる、という内容の本。

中原圭介氏の本はどれも説得力があり分かりやすいのだが、この本も非常に分かりやすく説得力があった。

あとは、中原氏自身が書いている通り、頭では分かっていても、実際に仕手株を買いに行くという行為が出来るかどうか、ということである。

ちょっと勇気がいるよなあ。もう一度じっくり読んで、覚悟を決める必要があるかもしれない。

15. 「国家の品格」藤原 正彦著 新潮社新書 2008.5.23 読了

数年前に一世を風靡した本で、僕もその頃に買うだけ買ってはあったのだが、何となく読む機会を逸していて、このたびようやく読むことが出来た。

ちなみにパリに向かうエールフランス機のシートで、長髪のフランス人のイケメンの兄ちゃんの隣で読了というのも、なかなか乙なものである。

さて、本題だが、この本は、加速的にアメリカ化する日本において、いつか、誰かが声高に叫ばなければいけなかった、日本と日本人を守っていくための提案なのだろうと感じる。かつてに日本と日本人に満ちていた情緒や感性、それに生活スタイルは、次々と押し寄せるアメリカ中心の合理的かつ攻撃的生活様式の波状攻撃の前に衰退してきた。

しかし、アメリカ文化を取り入れることで日本人は本当に幸せになっているだろうか。「英語より国語を」、「市場原理主義」より「武士道を」と説く著者の言葉の重みは、このままあと50年も経てば、日本人が古くから育んできた独自の文化が根絶やしになってしまうという危機感に基づいている。

かくいう僕自身も、日々市場原理主義の旗印のもと、効率と利益を求めて奔走する日々を送っている。和服は産まれてから一度も着たことがなく、剣道も茶道もまったく触れたこともない。

著者が何度も引用している新渡戸稲造の「武士道」でも読んで、茶道でも嗜んでみようか、現代語訳の源氏物語ぐらい読んでみようか。そんなことを思わせられる作品であった。

14. 「憎まれ役」野中 広務、野村 克也著 文藝春秋 2008.5.18 読了

高校野球一回戦敗退の弱小校からテスト生を経てプロ入りし、長島、王と言った華やかなスーパースターの陰に隠れつつも選手として大記録を打ち立て、さらに監督としても南海、ヤクルトといった弱小チームを優勝に導き、現在楽天イーグルスを上昇軍団へと改革中の野村克也と、国鉄マンから町議会議員、町長、京都府議、京都府副知事を歴任した後に国会議員となり、内閣官房長官や自民党幹事長などの要職を歴任した野中広務が、叩き上げの苦労人同士、スタートして華やかな道を歩んだ監督としての長島と巨人軍、優勢改革で自民党をぶっ壊すと宣言した小泉元首相を引き合いに、人気を集めるスターが残す歪みとその結果をもとに、未来の日本と日本人を憂う「憂国論」。

野村も野中も京都府出身で酒もタバコもやらず血液型はB型、野村は高卒、野中は旧制中学校卒と共通点も多く、野村がナベツネと長島体制の巨人軍の、野中が小泉内閣とその後継安倍内閣の問題点を辛辣かつ分かりやすく、さらに彼等の主張には共通点が多い。

野村は野球人なのでメディアで取り上げられることも多く、過去にも長島や巨人の批判を口にしているのを見たり聴いたりしたことがあったが、野中については恥ずかしながらほとんど何も知識がなく、小泉元首相時代に新聞やテレビが騒ぎ立てた「抵抗勢力の大親分」というイメージしかなかった。

野村/野中の言うことばかりを100パーセント鵜呑みにすることはもちろんできないが、長島/小泉の時代が過ぎ、熱狂的なカリスマが去った後に残った世界の歪みを思う時、やはり世の中人気やパフォーマンスだけではいけないんだ、としみじみ感じる。

「憎まれ役」と言われるいぶし銀の人達がまっとうに働けない世の中には絶対にしてはいけないと、強く感じさせてくれた一冊。お薦め。

13. 「六男二組の太平洋戦争」佐々淳行著 小学館文庫 2008.5.9 読了

太平洋戦争中に小学生だった著者が綴った戦争体験記。

前半は港区立南山小学校時代の、恩師伊藤先生との楽しく素晴らしい思い出が綴られ、後半は一転して中学校に進んだ後の戦争末期の悲惨な日々のリアルな描写と恩師の死という非常に重苦しい日々が続く。そして終戦。

昭和25年5月5日、恩師が生徒と約束した7年後の再会の日、戦災でばらばらになった子供達がその日、待ち合わせに指定された上野の西郷隆盛像前に集合し、再会を果たす。そして平成7年、50年ぶりに開催された同期会で初めて明かされる、恩師伊藤先生の最期。

前半の小学校時代については、とにかく先生の愛情溢れ逞しい教育がまばゆいほど美しく描かれている。そして後半の空襲や疎開などの戦争体験の部分についても、当時の日記の引用などもあり、非常にリアルで恐ろしい。

そして恩師伊藤先生が結核性脳膜炎で亡くなった様子が当時の同僚の先生から伝えられるのだが、この様子がまた非常に痛々しく、その教育熱心さと若さで亡くなったことが不憫でならない。

小学生の視点で教育と戦争をあまりにも瑞々しく描いた名作。舞台がすぐ近所の南山小学校というのも素敵。僕の出身校の笄小学校の子供達との決闘シーンなんかもあって目が離せない。

12. 「一生太らない体のつくり方」石井直方著 エクスナレッジ 2008.5.1 読了

若い女性を中心にダイエットは常に脚光を浴びる話題であり続けているが、本当にダイエットが必要なのは中高年の男性である。著者はそのように説く。そして世の中には間違ったダイエット法が氾濫しており、間違った方法で行うダイエットは逆効果、つまり、やらない方がまだまし、というものも多いという。

体脂肪を減らして健康な体を手に入れるには有酸素運動が有効であることは既に定着した説となっているが、有酸素運動をぐっと効率的にするのが、体の幹となる「コアマッスル(インナーマッスル)」をスロトレで刺激し続け、基礎代謝を向上させることである。人間の筋肉量は加齢に伴い減少していくが、特に太腿、腹筋、背筋など、容積が大きく、しかも体を支えるコアマッスルは減少のスピードが速く、筋トレを行わないとどんどん萎縮していってしまい、それが基礎代謝の低下を招き、痩せにくく太りやすい体を作ってしまうという。

ゆっくりと負荷をかけるスロートレーニング、スロトレによりコアマッスルを鍛え、それにより基礎代謝を向上させ、さらに基礎代謝を高めた状態で有酸素運動を続けることで、一生太らない体を手に入れられるという著者の論理は非常に明快で、これなら続けてみたいと感じさせる説得力がある。

ジョギングやウォーキングなどの有酸素運動ももちろん大切だが、有酸素運動の前に筋トレを行うことで効果がぐっと高まる。期待して実践してみよう。

11. 「ショーケン」萩原健一著 講談社 2008.4.27 読了

「ショーケン」こと萩原健一の自伝。

僕にとって萩原健一という人物は長年の謎だった。例えばiPodには彼が唄う「ラスト・ダンスは私に」のライブ録音版が入っていて、再生回数のトップ20に入っている。たまたまレンタルしてきた80年代のコンピレーション版に入っていたものだ。別にショーケンが聴きたくて借りて来たのではなく、借りて来たらたまたまショーケンのライブが入っていて、それがえらくカッコいいのだ。でも、それ以外にどんな曲をやっているのかは良く知らない。

ショーケンが出演したドラマ、「傷だらけの天使達」も、子供の頃に再放送を何回か見た。それから、彼がヤクザ役で出ていた「極道の妻達」も見た。ほかにも彼が出演していた映画も何本か見た。その度に「カッコいいじゃん」とは思っていたが、かといって彼にのめり込むことはなかった。

歌手なのか、俳優なのかも良く分からない。彼の歌が子供の頃に良く見ていた歌番組で流れることはなかったが、何かしら癖の強いキャラクターと、大麻だの恐喝だの離婚だの不倫だのと、色々と本業以外でテレビに映っていることが多かったことも、彼存在をミステリアスに見せていたのかもしれない。彼が一番売り出していた時期には、僕はまだ幼くて彼のことを知る機会がなかった。

で、今回ショーケンが恐喝事件で芸能界を干されている間に自分の半生を振り返る自伝を書いたというので、これは彼を知る絶好のチャンスだと思い早速買って読んでみた。

で、感想だが、一言でいえば、このショーケンという男にとても強い興味を持った、ということだろう。彼の物事に対する取り組み方やスジの通し方にはプロのこだわりがハッキリと出ている。だが、不幸な出生やその後の子供時代の影響もあってか、カッとなりやすく不安定な一面もあり、その不安定さが極端に発露する時に彼は問題行動を起こしてきた。

でも、僕は前から思うのだが、「役者」とか「横綱」とか「格闘家」とか「モーグル金メダリスト」とかが、みなサラリーマンと同じように品行方正である必要はまったくないと思っている。他人に迷惑をかけるようなことをしたら、その罪は償わなければならないが、みそぎを終えたらまた復帰して活躍してもらった方が、皆で眉をひそめて活躍の機会を奪ってしまうよりもよっぽど良いと思っている。

そういう意味で、ショーケンの不安定やバランスの悪さも、芸のこやしになってきているのではないかと感じている。

彼は麻薬もやめ、タバコもやめ、酒もやめ、離婚をして独りになり、今は毎日15〜40キロを黙々と歩く生活だという。そして、一日でも長く生きてこれからも活躍したいと願っているという。

そんな彼が再び脚光を浴びて活躍する日が近く訪れることを願いつつ、彼の過去の出演作やCDも聴いてみたくなる、そんな活き活きとした自伝だった。

10. 「株式市場「強者」の論理」中原圭介著 ナツメ社 2008.4.25 読了

個人投資家が株式市場で闘うには、市場における圧倒的強者である外国人投資家や機関投資家の行動原理を知らなければならない。この本はそのような視点から、市場に参加する個人投資家の9割までが負けてしまい、わずか1割の人だけが勝てるという現状を解説し、その行動原理の違いと手持ち資本の金額差によるハンディなどを知った上で、個人投資家が勝つための条件を説明している。

個人投資家が陥りやすい心理状態と相場の状況、そしてそれを狙う外国人投資家の行動原理。すべてが非常に分かりやすく簡潔に書かれていて、初心者が読んでもとても勉強になる。

特に、株にばかり目がいきがちな個人投資家も、原油などの商品や債券、それに海外市場などにも目を向け、どの市場が世界的に見て割安かを知る必要があると説く箇所には非常に説得力がある。

投資を行う個人の方は是非読んでもらいたい。

9. 「遠い太鼓」村上春樹著 講談社 2008.4.22 読了

文庫本で持っていて何度も何度も再読していたのだが、ずっと品切れだったハードカバーが増刷されたので思わず買ってしまい、改めて再読。まあ俺も好きだね(笑)。 でもハードカバー版には本文に登場する「ヴァンゲリス」や「酒盛りバス」などの写真が掲載されていて、これがなかなか嬉しいのである。

村上春樹が37歳から40歳までの3年間、長編小説でいうと「ノルウェイの森」と「ダンス・ダンス・ダンス」を書いている間に滞在したギリシャとイタリアの滞在記。

40歳になるまでに、40歳を超えたらもう書けなくなるであろう種類の長編小説を書いておきたい。著者は様々な雑事や人間関係を避けて長編小説に没頭するために南ヨーロッパへと旅立つ。

異国の地でのさまざまな体験やトラブル、それに失敗に関するビビッドな文章も楽しいし、何より村上春樹が小説に取り組むときの姿勢が素直に書かれていてとても魅力的な長編エッセイだと思う。

でも長編小説を書くためにヨーロッパに行けるなんて、恵まれてるよなあ。実に羨ましい。

8. 「ダンス・ダンス・ダンス」下巻 村上春樹著 講談社文庫 2008.4.15 読了

「羊」4部作の後編。前編で新たに登場した人物達に次々と降り掛かる悲劇。ハワイの夕暮れに導かれた「僕」の前に示されたのは、薄闇に沈む6体の人骨だった。

焼け付くような孤独と焦燥の中、自らの愛するものを奪わないでくれという叫びが「僕」を再び「いるかホテル」へと導き、そしてそこで最後の試練が「僕」を待ち構えている。

失われ続ける「僕」が最後に迎えた朝。もっとも印象的なエンディング。ダンスステップのように軽やかな文章が深く心に染みる。名作。

7. 「ダンス・ダンス・ダンス」上巻 村上春樹著 講談社文庫 2008.4.13 読了

村上春樹の「羊」4部作の完結編。もう数えきれないほど再読し、文庫本はボロボロになっている。

「世界の終り」、「ノルウェイ」を経て村上春樹が長編作家としての位置を作り上げていく過程の最終工程のような作品。登場人物は洗練され、物語にはスピード感があり、そしてタイトルからも想起される「ダンスステップ」が物語の重要なキーワードになっている。

失い続ける「僕」は34歳になり、そして再びあの札幌の「いるかホテル」に呼び寄せられる。4年の歳月を要してようやく自分を取り戻した僕は、しかし、誰のことをも愛せなくなってしまっていた。

そして「僕」は再び不思議な世界に導かれ、新たな冒険が始まる。

村上春樹の最高傑作の一つ。個人的にもベスト3に入れたい名作だと思う。

6. 「限りなく透明に近いブルー」 村上龍著 講談社文庫 2008.3.6 読了

ご存知村上龍のデビュー作。何度目か分からないほどの再読。

タイトルもそうだが、全編を通じてのリリシズム溢れる文体は静謐で緊張感に溢れ、クールでかつ豊かでとにかくカッコいい。

ただ、久し振りに再読をしたら、暴力シーンが妙に痛々しく感じたのは、ひょっとして僕が歳を取りつつあるせいなのだろうか。

ヒリヒリと心に染みる美しい文章。村上龍はこの後「コインロッカー・ベイビーズ」で自身の文体を確立したため、この「限りなく透明に近いブルー」と同じ文体の小説は彼の他の作品では見ることができない。

この文体のまま何作も書き続けるのは辛かったとは思うが、あと何作品かこの文体で突っ走って欲しかった。不朽の名作。

5. 「村上春樹全作品 1979〜1989〈3〉 短篇集〈1〉」 村上春樹著 講談社 2008.2.24 読了

以前からあちこちで書いているとおり、僕は村上春樹は長編の方が短編より好きである。

でも今回全集を順番に読もうと思い、3冊目で久し振りに読むことになった初期短編集は、思っていたよりもずいぶん面白くて、村上春樹の短編を見直してもいいかなと感じることになった。

この短編集には13の作品が収められているが、その中で僕が特に気に入ったのは「午後の最後の芝生」、「土の中の彼女の小さな犬」、「納屋を焼く」、「踊る小人」の4つ。その中でさらい一つを選ぶとしたら、「午後の最後の芝生」だろうか。

淡色の細密描写のような世界観が村上春樹の短編の特色である。その世界観がちょっと苦手だったのだが、今回読み返して距離感が近づいたような気がする。

4. 「カラマーゾフの兄弟2」 ドストエフスキー著、亀山 郁夫訳 光文社 2008.2.1 読了

ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟 第二巻」を読了。いわゆる新訳版。

第1巻では「下世話だなあ」というイメージを持って、その下世話っぽさが「罪と罰」で僕が抱いたドストエフスキーのおっかなさみたいなものを後ろに追いやり、楽しく読めていたのだが、この第2巻では徐々に神々しさというか重厚さというか、そういう部分が出てきて、「あーきたきた」という感じ。

ゾシマ長老の最後の説教の中で愛する女を殺してしまう男の話はまさに「罪と罰」の世界。引き込まれる。ちょっと夏目漱石の「こころ」にも通じるように思う。

さて、まだ物語は半分。これから好色一家カラマーゾフはどこへと向かうのか。楽しみだ

3. 「沈黙」 村上 春樹著 全国学校図書館協議会 2008.1.7 読了

村上春樹の短編。

あまり深く考えずAmazonで注文したのだが、中学・高校生向けのテキストとして独立した冊子になっているようだ。

空港で飛行機への搭乗を待つ間に話をする二人の男という設定で、会話の中で過去を遡るだけで、登場人物にはほとんど動きがない。

人間の内部に潜む悪意や毒についての描写が生々しい。この手の描写については「ねじまき鳥」以降徐々に表に出て来るようになったもののように思う。

僕はやはり村上春樹は短編よりも長編が好き。

2. 「 成功のコンセプト」 三木谷 浩史著 幻冬舎 2008.1.4 読了

泣く子も黙る楽天グループ総帥、三木谷浩史が自らの成功体験を綴った「説教集」。

自分のビジネスを成功させた社長、CEOの書く本は重みがあって好きなのだが、この本はどうもイマイチなじめなかった。

どんなビジネスにも失敗や停滞があり、その上で成功へと上り詰めて行くものだと思うのだが、この本には自分の失敗や停滞についての記述が殆どなく、「かくあるべき」という説教が鼻につき、途中で嫌になってくる。

あと、自分のビジネスに対する熱狂的な愛着については嫌というほど伝わってくるのだが、自分が抱える社員に対する愛情が殆ど感じられなく冷たいのもどうかと思う。

野心、野望は伝わるが、これだけでは「素晴らしい社長」という気持ちにはなれない。残念だ。

1. 「 デッドライン仕事術」 吉越浩一郎著 祥伝社新書 2007.1.2 読了

トリンプジャパン元社長、吉越さんのビジネス本。

僕が尊敬する吉越さんの本なので書かれている内容自体はいつも通り素晴らしい。

ただ、過去に出版された複数の著書と重複する部分がとても多いのが残念である。

せっかく新しい本を出すのであれば、今まで聞いたことがなかった新しい切り口も欲しかった。

でもいずれにしても吉越さんの説くビジネスへの取り組み方は非常に素晴らしい。今後も学び続けて行きたいと思う。


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