書評

「日本国」の理念を持ち、「和」の国民として生きること

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多くの優れた企業には「理念」がある。

企業にあるのなら、国家にだってあるべきだろう。

よく「自虐史観」という言葉が使われる。

第2次世界大戦の結果、日本人は自らの過ちを認めた結果、自分たちのアイデンティティーを認められなくなってしまったのだ。

だが、本当にそれだけだろうか。

本書「日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか」では、僕らの祖国日本と僕ら日本人が、海外でどのように評価されているのかを徹底的に洗い出している。

 

 

日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか  

竹田 恒泰 PHP研究所 2010-12
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by ヨメレバ

 

 

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そもそも「世界でいちばん人気がある」のか?

 

 

本書のタイトルは凄い。ここまで意図的にタイトルが操作されている本はなかなかないが、結果としてとにかく目立つことは確かだ。

そもそも、本当に「日本は世界でいちばん人気があるのか」?ということが気になってしまう。

本書では冒頭でかなりのページを割いて、日本と日本人が海外では高い評価を得ていることを証明しようと努力している。

 

 

 

 

僕の個人的感想を言わせてもらうと、この「世界でいちばん人気がある」というのは、出版社と著者が必死で頭を捻った「釣り」なのだと思う。

この際世界で「いちばん」か「にばん」か「さんばん」かはどうでもいいのである。

とにかく日本も日本人も親切で真面目、そして礼儀正しく勤勉。世界のどこへ出ていっても嫌われることが少なく好意を以て迎えられているということが大事なのだ。

そのことを日本人が正しく受け入れ、認識することが大事なのだ。

なぜそのことか大事か。

あとで詳しく書くが、日本人は他国民と違い、自国への愛情が異常に低いからだ。

 

 

食へのこだわり、神への畏敬、自然崇拝

 

 

日本人は食事をはじめる時に「いただきます」と言うように躾けられる。

この「いただきます」は、もちろん「頂きます」であり、何を「頂く」のかといえば、食卓に上っている食物の「命」を頂くということを意味する。

この考え方は、日本神話の時代から脈々と続くアニミズム的信仰が現代にまで残っていることを意味する。

 

 

 

 

食べ物一つ一つ、肉、魚、野菜、穀類、すべての生物に「命」があり、その命を頂くことで僕ら人間が生命を維持することができる。

その「命」に対して感謝すること。それが「いただきます」という言葉に込められている。

 

 

そもそも、日本というのは、独自の言語、独自の宗教、独自の言語を持った、古代文明の生き残りなのだ。

グローバルな3大宗教とは異なる、土着の地域宗教は、まさにアミニズムであり、自然崇拝である。

オーストラリアのアボリジニ、アメリカのインディアン、それにヨーロッパのケルトなど、土着の言語と宗教を持つ古代民族が生き残っている例は他にもあるが、先進国で国単位として生き残っているのは日本だけである。

 

 

手に入れたもの、失ったもの

 

 

本書の著者がイラクを訪問した際に、イラクの若者が日本を激賞するのに触れ、著者は感激したという。

その若者は、何故日本を誇りに思うかという質問に対し、明治維新で日本は欧米列強に屈せずに自主独立を保ち、しかもわずか数十年で欧米列強と肩を並べ、有色人種唯一の先進国となったからだと答えたという。

だが、僕ら日本人は、明治維新の結果を、そのイラクの青年のようには受け取っていない。

鎖国を終えた日本はそれまでの「日本文明」を遅れたもの、格好の悪いものと位置づけ、欧米化を進めることで先進国の仲間入りを果たした。

 

 

 

 

実際僕らが若い頃までは、日本的なものは「カッコ悪い」、欧米的なものが「カッコいい」という価値観が強く、日本的なものはことごとく否定されてきた。

畳はカッコ悪くフローリングがオシャレ、邦楽よりも洋楽、日本酒よりもカクテル、日本車よりも外車、というように。

だが、そう言った外国崇拝は既に終わりを迎えつつあり、僕たちは僕たち自身の新たな価値観を持つべき時期にきている。

 

 

中国国民の80%が中国を好きと答え、韓国人の75%が韓国を好きと答えているのに、日本ではわずか43%の日本人が日本を好きと答えるにすぎない。

明治維新で開国し、列強に追いつこうとした日本。

先進国としての物質的豊かさを手に入れた代わりに、日本人が失ったのは「日本文明」そのものだ。著者はそのように指摘している。

 

 

まとめ 「和」の国民として生きよう

 

 

景気も悪く人口は減り、震災は容赦なく起きて放射能は漏れ続ける。

そんな時代に、僕ら日本人は何を支えに生きていけばいいのだろうか。

キーワードは「理念」ではないだろうか。

 

 

明治維新からのち、日本は常に先進国と自分達の関係性でばかり、自分達のアイデンティティーを測ってきたように思う。

欧米列強に追いつけ、追い越せ、そして敗戦後は経済を強く、アメリカに追いつけ、追い越せと。

だが、そのような物質的な比較は、短期的なモチベーションにはなっても、長期に渡り国を治める力強い心の支えには成り得ない。

物質的な努力に疲れ迷走する日本にとって、今いちばん必要なのは、「理念」だろう。

そして、理念としてふさわしいのは、「和」という言葉であろう。

 

 

 

 

僕ら日本人は「和」の国民なのだ。そして日本は「和」の国家なのだ。

日本人が本来持ち続けてきた価値観や信仰は、決して時代遅れでも格好悪くもない、世界で唯一であり、素晴らしいものなのだ。

だからこそ、僕ら国民一人一人も、自分が「和」の国民であると意識すべきだろう。

 

 

そして政治家、特に首脳クラスの人たちこそ、日本が「和」の国として今後どのように生き残っていくかを、常に考えてもらいたいと願う。

せっかく2,000年の歴史を持つ天皇制が生き残ったのだから、原点回帰していくことはできるだろう。

戦前の国家神道を目指すのではなく、もっと前の時代、日本が他国と自分を比較してコンプレックスを感じるようになる前の時代の、自然と神と一体だった頃の時代を目指して。

 

 

 

 

天皇は祈る「神事」を、そして天皇が任命した政治家が「政事」を司る。これは古来の日本の姿なのだ。

ならば今からだって出来るだろう。

今日からだって出来る。

 

 

追記: 本書「日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか」のレバレッジ・メモ僕のFacebookページで公開しました。

 

 

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2011年の75冊目の書評としてお送りしました。

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