書評

たった一度の記憶をずっと劣化させない方法

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ライフログという言葉をご存知だろうか?

ライフのログ。日々の記録のこと。

 

僕自身、周囲の人から軽く引かれるくらいのライフロガーで(笑)、日々の食事やら体重やら血圧やら行った場所やらを記録しまくっているのだが、多くの人にはまだその有意義さが十分には伝わっていないと感じていた。

そんな折りに、ライフログの大御所、 @goryugo 氏こと五藤隆介氏のデビュー作が発表された。

 

 

その名も「たった一度の人生を記録しなさい」。

まさにライフログの究極のキーワードがタイトルになっている。

僕も目一杯はまっているライフログの世界にご案内しよう。

 

 

たった一度の人生を記録しなさい~自分を整理・再発見するライフログ入門五藤隆介 ダイヤモンド社 2011-09-30
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by ヨメレバ

 

著者五藤様、ダイヤモンド社市川様よりご献本いただきました。誠にありがとうございました。

 

 

 

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薄れない記憶を手に入れる?

 

 

 

僕自身がライフログの有効性に気づいたのは、もう15年近く前のことだ。

 

 

僕は1996年の3月20日からブログを書いている。

当時はまだ今のようなブログ・エンジンもなく、もちろん「ブログ」という言葉もなかった。

だから僕らはそれを「日記」と呼んでいた。

 

 

エンジンがないので、今のように自動でカテゴリー分けしたりタグ付けしたりもできないので、並びは時系列になる。

そして、当時は「情報提供」というよりは、本当に他愛もない「日々の記録」的なものを一生懸命書いては皆で見せ合いっこしていた。

 

 

「日記」なので、その日に考えたことや行った場所のことなどを書く機会も多く、しかも公開するものだから、日記を意識して行動するという、おかしな現象が起こった。

そんなある日、当時26歳だった僕は大学時代に2ヶ月間だけ付けていた日記を見つけて熟読した。

 

 

 

 

6年前、20歳の時の自分が、大学生活のことや恋のこと、バイトのことなどを汚い字で一生懸命書いていた。

すると、まるで自分が6年前にタイムトリップしたかのように、日記に書いてないことまで、ものすごく鮮明に当時のことを思い出した。

 

 

そう、当時の記憶は脳から失われたのではなく、潜在意識側に格納されていて、取り出されるきっかけを待っていたのだ。

そして26歳の僕がたまたま日記を見つけて開いたのをきっかけにして、当時の彼女がつけていた香水の匂いから良く行っていたレストラン、バブルの頃の人々の服装や夜の六本木の喧騒などの記憶が、当時の鮮明さのまま蘇ってきたのだ。

 

 

そしてもう一つ僕が驚いたのは、日記に書かれている「ある特定の日」の出来事まで、日記をきっかけにハッキリと思い出すことができたのだ。

それは特別なイベントではない、ごく些細な日常のことだ。

 

 

大学3年の時の木曜の2限の授業のこと。当時仲が良かった友だちと一緒に居酒屋に行って話したこと。

教室の風景や飲み屋の看板、話をした内容までが、ハッキリと記憶から出てきたのだ。

 

 

この事実は僕に大きなショックを与えた。

「記録」によって「記憶」が呼び出されることにもショックを受けた。

でも、本当に僕がショックを受けたのは、「記録」がない日々の記憶は、よっぽど特殊なきっかけがない限り、僕の潜在意識からは二度と取り出すことができない、ということだ。

 

 

だから、僕は日記を書き続けた。

1996年からスタートしたブログは今もこうして続いている。

 

 

そして、1996年以降の僕の記憶は劣化しない。記憶は記録とともに永遠だ。

たとえ僕が死んでも、僕が生きたという証はサーバ上に、そしてGoogleのインデックス上に記録され続けるだろう。

何故なら日々の記録がブログに残っているからだ。

 

 

2008年末に日記形式から現在のNo Second Lifeにスタイルを変え、日々の記録的要素が低くなってからは、ローカルで日記を書き続けてきた。

形式は何度か変わり、デジタルからアナログになり、またデジタルに戻ったりと変遷はあるが、とにかく続けている。

 

 

あなたは2003年10月7日にどこに行き、誰と会い何を話し、何を食べたか憶えているだろうか。

「そんなもの憶えておく必要なんかない」という人には、この質問ではどうだろうか。

「あなたは20歳のときには、どんな夢を持っていたかハッキリ思いだせますか?」

もしくは、こんな問いかけでもいい。

「あなたは初恋の人との楽しかった日々のことを詳しく思いだせますか?」

 

 

もちろん、おぼろげな記憶の中から、すごく特徴的なイメージを一つか二つ引っ張り出すことはできるだろう。

でも、「月曜日にこんな話しをして、木曜日にはここに行った」というレベルの記憶は戻らない人が多いだろう。

 

 

本来は失われていない記憶。きっかけさえあれば昨日のことのように蘇る記憶を引っ張り出す「鍵」がライフログなのだ。

ログ、記録さえあれば僕らは30年前にだってすぐに戻れる。

 

 

でも、記録できるのは「今」だけなのだ。

永遠に劣化しない記憶を手に入れたくはないか?

僕はそう問いかけられたように感じた。

 

 

 

役に立つかどうかは未来の自分が決める

 

 

 

この本にはライフログを簡単に楽しく取っていく方法がたくさん書かれている。

iPhoneとEvernoteを使えば、ものすごくたくさんの種類のライフログを簡単に取得できる。

 

 

その方法やテクニックについては本文に詳しく書かれている。

いかに面倒なことをせずに簡単にライフログを取るか、そして取ったライフログを見返すかがポイントなのは間違いない。

 

 

そして、一つ重要なキーワードとして、「未来の自分」を挙げたい。

ライフログは、取得している時点ではそのログが役に立つかどうかまったく分からないのだ。

 

 

役に立つかどうかを決めるのは未来の自分であって今の自分ではない。

この点を間違えると、全然楽しむことができないだろう。

 

 

 

 

具体的な例を挙げる。

新宿で飲み会があった。自分は幹事ではない。

 

 

行ってみたらすごく雰囲気が良く料理も美味しく値段もリーズナブルだった。

そこで、そのお店の位置情報をFoursquareでチェックインしてEvernoteにログを飛ばした。

その際コメントに「新宿ですごく良い居酒屋。安くて美味しい!」と入れておく。

 

 

この時点でログを取ったことで自分に恩恵はない。

だが、その日から半年後のある日、僕は飲み会の幹事を担当することになったとしよう。

場所は新宿だ。

 

 

すると、ライフログを取っている僕は、Evernoteで「新宿 居酒屋 良い」などのキーワードで検索をすることで、あっという間にその店の場所と店名を得ることができる。

半年後の僕が過去の自分が送ったメッセージを受け取った瞬間だ。

 

 

読み終わった本、聴いたCD、食べたもの、行った場所。

今の自分は記録する「手間」があるだけ。

 

 

でも、未来の自分が「おお!あの時のはこれだったか!過去の自分サンキュー!」と言ってくれるのだ。

ログが溜まれば溜まるほど、出会いの確率も高まっていく。

期待しようではないか。

 

 

 

心のライフログは未来の自分へのメッセージ

 

 

 

ライフログというと、行動記録のように考えがちだが、この本で五藤氏が「特別扱い」しているライフログは、自分のアイデアや思ったことなどの記録だという。

心のライフログ」彼はそう呼んでいる。

 

 

この「心のライフログ」は猛烈に重要だ。

なぜなら、行ったレストランや読んだ本については他の方法で探すこともできるし見つからなくても代替が効く。

でも、「あの時の自分がどう感じたか。なにを考えていたか」という記録は、絶対に他の方法で再発見することはできないからだ。

 

 

映画を見た時、音楽を聴いた時、そしてぼーっとしている時。

人間はどんな時にでも何かを考えているものだし、思考は常に変化している。

 

 

だからこそ、その時の自分がどう感じているかについてや、その時に思い付いた発想を記録することは重要だ。

その時には大したことないと思った感想やアイデアが、後からとても重要な意味合いを持つことがある。

 

 

未来の自分を信じてどんどんメッセージを送り続ける、つまりライフログを溜め続けることに意味がある。

そしてアイデアや思考を記録し続けることは、思考を文字として定着させ続ける行為にほかならない。

 

 

 

 

繰り返し登場する思考やアイデアは、脳とEvernote双方で熟成され昇華されて、ある日突然変異を起こすのだ。

五藤氏は具体的な例として、この本「たった一度の人生を記録しなさい」の元ネタとなったノートを紹介している。

人生も何もかもEvernoteにまとめなさい

 

 

この短いフレーズは、五藤氏の頭に浮かんだ時には、「お、ちょっといいフレーズ」くらいのインパクトだろう。

この一文を記録していなければ、10分後には忘れてしまい、膨大な記憶の胡乱に飲み込まれてしまったことだろう。

 

 

でも、その時にこの一文を記録したからこそ、彼が本を書くぞという時に光り輝くフレーズとして、彼のデビュー作のテーマとして降臨したのだ。

たかが記録と侮るなかれ。

記録は僕らの脳を最高にチューンナップしてくれる助っ人なのだ。

 

 

 

まとめ

 

 

 

ライフログというと、記録する手段や方法に脚光が当たりがちだ。

それは当然で、ライフログという言葉が登場したのも、EvernoteやiPhone、それにFoursquareなどが使えるようになったのも、ごく最近のことだからだ。

 

 

だから僕らはいま、一生懸命未来の自分が便利に活用してくれるように、情報を溜めている、いわば「準備段階」にいるのだ。

だからこそ、この段階でライフログの「活用法」を提示してくれた本書の役割は大きい。

 

 

そして、五藤氏も指摘しているように、ライフログは溜めっぱなしでは魅力が半減してしまう。

1日10分の振り返り、そして一週間に30分の振り返りで、自分が溜めた記録を見返してみよう。

 

 

見返すことで思い出し、記憶が強化される。

そして見返すことでその時の感情が浮かび上がり、反省したり改善したりすることもできる。

 

 

 

 

ライフログを何でも自動化させてノートブック別に放り込む仕組みにしてしまうのはもったいない。

その理由は五藤氏が表紙カバーに大きな文字で印刷してくれている。この本で一番大切な言葉だ。

 

 

自分をつくるのは、自分を通過したものだけ

 

 

ライフログを見返して、もう一度自分に出会おう。

 

 

そして最後に私信。

ごりゅ、デビュー作出版おめでとう!素晴らしい本を届けてくれたことに心から感謝します。

 

 

そしてもう一つはイベント告知。といってももう満員になっちゃってるんだけど(^_^;)。

五藤氏の出版記念イベントが代官山であります。僕も参加します!

 

W出版記念イベント
10/07(金) ライフログ入門@代官山

 

 

 

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