書店でタイトルをパッと見て購入。自分が40代だけにこのタイトルには食いつかざるを得ない。
「本当のモテ期は40歳から」という本。
本当のモテ期は40歳から (メディアファクトリー新書)青木一郎 メディアファクトリー 2012-02-29 売り上げランキング : 9711
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男性視点の恋愛指南本
著者の青木一郎さんという方は、奥付によると、「中年男性専門の恋愛コンサルタント」なのだそうだ。世の中には色々な職業がある。
さて、40代の恋愛に関しては、ずいぶん前にだが、別の本を読んで書評も書いたことがあった。
その本の書評はこちら。
この「いま20代女性はなぜ40代男性に惹かれるのか」という本は、著者が女性で、女性の視点で、若い女性の心理を語っていた。
いま20代女性はなぜ40代男性に惹かれるのか (講談社プラスアルファ新書)大屋 洋子 講談社 2009-08-21 売り上げランキング : 113357
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それに対してこの「本当のモテ期は40歳から」は、40代半ば〜後半の男性著者が、男性視点で書いている点が特徴。
タイトルにもある「モテ期が40歳から」というのも、大手メーカーや調査会社などのアンケートや市場調査の結果を紹介するにとどめ、20代女性がなぜ40代男性に惹かれるのか、というような分析には重点は置かれていない。
どちらかというと、「20代〜30代独身女性は40代男性もターゲットに入ると言っているんだから、せっせと自分を磨いて候補者になれるように頑張りましょう」というスタンスの本だ。
いかにも「男性専門の恋愛コンサルタント」という切り口。
それにしても冒頭で本書が引用している調査結果の、20代〜30代の独身OLに対する調査の、44歳〜62歳の男性を恋愛対象と見るか、という質問に対する「人によってはYES」という数値が72%というのは、僕の想像よりもずっと高い数値でビックリした。
「人によってはYes」の「人によっては」に選ばれよう
先ほど引用したアンケート調査の、20代〜30代OLに対する質問、44歳〜62歳のおじさんは恋愛対象になるか?に対する回答「人によってはYES」の「人によっては」が問題だと著者は指摘する。
それはそうだ。44歳〜62歳というターゲットには、俳優の石田純一さんも含まれるし、歌手の郷ひろみさん、とんねるずの二人、唐沢寿明さんなども含まれる。
一方多くの方が勤めている会社の部長あたりは、この年齢ゾーンに入っている人が多いだろうが、石田純一さんと同じ水準に自分をキープできている人は、なかなかいないだろう。
テレビやメディアに日常的に露出しているわけではない、ごく普通のサラリーマンの男性の多くの場合、「人によってはYES」のターゲットになるためには、多くの下準備と努力が必要だ。
この本のテーマは、まさにそこにある。
せっかく20代〜30代の女性が「人によってはYES」と答える世の中になっているんだから、一人で寂しく暮らしてる40代〜60代の男性よ頑張りなさい、という本なのだ。
「女性が苦手でうまく話せない」「ファッションに興味がなく、いつもやぼったい格好をしている」「加齢臭が…」という人たちを、若い女性をエスコートできるように指南する本なのだ。
タイトルよりもずっとマジメな、脱おじさん講座本なのである。
見た目→会話→価値観
さて、ではダサいおじさんを「選ばれるおじさん」にどのように改造するのか。
本書では、「見た目」→「会話」→「価値観」の順に強化していく。
最初の一歩は「脱おじさん臭さ」
とにかくまずは見た目なのだ。
本書では何度か「なでしこジャパン」の佐々木監督の著書「なでしこ力」を引用している。
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僕も以前この本を読んで書評も書い。
「なでしこ力」の書評エントリーはこちら。
佐々木監督は本の中で、「どんなに説得力のある話しをしても、その男性の鼻毛が出ていたら、女性はまったく信頼してくれない」と書いている。
女性は男性よりも「衛生」「清潔」に敏感に作られていて、そこに自動的に重点が置かれるようになっているのだ。
イケメンに生まれ変わることはできないが、清潔で身体にフィットして時流に合った服装をするだけで、女性の扱いは大きく変わる。
本書では髪形、洋服、メガネなどから「おじさん臭さ」を消す第1段階と、「口臭」「加齢臭」「皮膚のたるみ」など、時間はかかるがアンチ・エイジングにも繋がる第2段階に分けて、おじさんの見た目を改善する指導をしている。
43歳男性としてすごく参考なったのは、「加齢臭は頭皮から臭う」という指摘。
加齢臭は皮膚にある皮脂腺から分泌される油分が酸化することで発生するのだが、この皮脂腺はおなかの皮膚の30倍も頭皮に集中しているという。
しかも頭皮は洋服で覆われていないため、頭皮から強く臭うのだそうだ。
したがって加齢臭が気になる人は、きちんとシャンプーをすること。特に髪の毛だけではなく、頭皮をしっかり洗うように洗髪することで、大幅に改善されるのだそうだ。
自分の臭いは自分では分かりにくいから、今のうちから気をつけよう。
コミュニケーションの基本は「横から目線での傾聴」
見た目の改善に続いては、会話の改善だ。
この本の想定読者は40〜60代で、現状自力ではパートナーを見つけることができない男性、という位置づけになっている。
この世代の独身男性の特徴として、会話ベタが指摘されている。
意中の女性と二人で会ってもうまく会話が続かなかったり、会話はできても女性の感情を害したり、白けさせてしまったりする。
著者によると、男性の主な問題点は、「相手の話を聞いていないこと」と「自分のことばかり話していること」に集約されるという。
この点を集中的に改善することで、女性とのコミュニケーションは劇的に改善するという。
多くの男性は自分をアピールすることばかりに夢中になり、女性が話す内容を聞かず、逆に自分の家族や仕事の自慢話を延々としてしまったりする。
それでは最悪で、男性は女性の話を聴き、共感を示すこと。そこからコミュニケーションが始まるのだ。
また、「僕みたいなおじさんと会っててもつまらないでしょ」などと無意味に自己卑下してしまうのも大きなマイナスと著者は指摘している。
相手に興味があり共感しているからこそ自分と会っているのだ、という前提で、上から目線の自慢でもなく、卑屈な下から目線でもなく、相手と対等な横から目線が大切なのだ。
ネットを活用して価値観を共有せよ!
40〜60代の男性は、身の回りの日常でパートナーを見つけるのは困難。
また、婚活サービスなどは年齢を基準に男性を「足切り」しているそうで、40歳以上は登録することもできないケースもあるという。
また、お見合いパーティーや婚活系のイベントでは、男性の競争率が異常に高く、100人対1人、というような状況も生まれるのだという。
そのような状況では、医者や弁護士など、年収や肩書きによほどの強みがない人は、意中の女性と会話することすら難しい。
また、仮に1対1で女性と会話できたとしても、その時間はわずか数分に限られており、自然な雰囲気の中でじっくり相手を知ることなどまったくできない。
それに対して、著者が強く奨めているのが、SNS、つまりネットでのパートナー探しだ。
お見合いサービスでは、「年収」や「年齢」「職業」「長男か」などの条件面ばかりがクローズアップされてしまう。
だがSNSを介して相手と知り合うと、相手とは自然と価値観が合う話題を共有することになり、自然と会話が盛り上がり、価値観の合う相手を見つけることができるのだ。
2008年と古い調査だが、女性に対する「恋人とどこで知り合ったか」という調査に対して、既に「ネット」と答えた女性が19%もおり、友人の紹介(18%)、仕事関係(18%)を上回っている。
もう一つ興味深いのが、同じ調査で合コンで恋人ができた人はわずか5%、ナンパは2.6%とずば抜けて低く、「出会いのための出会いの場ではパートナーはできない」と著者は分析している。
ネットを活用してパートナーを見つけるためのアドバイスとして著者は、「顔出し」「自己開示」「プロフィールの充実」を挙げている。
顔出しに関しては女性の声を引用しており、イケメンかどうかが問題なのではなく、相手を信頼できるかどうか、怪しい人でないかを判断する根拠にしているという。
また、趣味や特技、それに行動範囲などの可能な範囲での自己開示も大切で、それらの情報が何も提示されていない相手は、メッセへの返信率が大きく異なる。
SNSの日記機能やブログなどでの自己開示も効果が大きく、相手の共感ポイントを見つけやすくなる点が重要だ。
恐れずに誘いなさい
本書後半では、SNSなどを通じて女性と親しくなった中年男性への、より直接的なアドバイスが載せられている。
中でも特徴的なのが、「誘え」ということ。
著者は、コンサルの場で、せっかく良い感じでメッセのやり取りが続いていた女性から、やがて返事が来なくなってしまったという男性の相談を受けた。
そこでそのメッセのやり取りを見たところ、女性の側から何度も「誘って欲しい」というヒントがメッセに表れているにも関わらず、男性が自分に自信を持てずスルーしてしまい、女性がしびれを切らして離れてしまったことが解ったという。
男性からすると、「誘って断られたらどうしよう」という恐れから誘えない状態だったのだが、結果として誘わなかったために女性が離れてしまっては意味がない。
著者は「節目法」などを用いて、気楽に相手を誘いなさいと指導している。
「○○さんの快気祝いということで」「お疲れさま会で」など、メッセのやり取りに登場した出来事を名目に相手を誘うのだ。
そして、その時は日程や場所などは幅を持たせ余裕を持つようにする。
日時をピンポイントで指定してしまうと、断られた時に都合が悪くて断られたのか、相手に来る気がないのかが判断できないからだ。
告白するな、口説け!
そして著者の究極のアドバイス、それは「告白するな、口説け」である。
20代〜30代の独身男性向けの調査では、女性からのプロポーズを「いいと思う」と答えた人が80%を超えているという。
だが、一方で独身女性向け調査では、自分からリードしたいと思っている女性はわずか3.5%しかおらず、男性にリードして欲しいと明確に答えている女性が60%を超えている。
現代の若い男性向けの恋愛指南本を読むと、男性から女性に「告白」するよう奨めている本が多いと著者は言う。そしてそこに強い違和感を感じるのだそうだ。
告白というのは、「好きです」という自分の意思だけを伝え、その後の行動は女性に任せてしまう行為だ。受身である。
一方「口説く」というのは、相手の意向を踏まえたうえで、その後の具体的行動を提案することで、能動的かつ自律的に行動する行為である。
「好きです」だけを告白してその後の行動を委ねられても、多くの女性は困ってしまう。
食事のあとバーに行こうという提案、ホテルに行こうという提案。それら「恋愛を発展させる節目」の行動は、男性から女性をリードすべきなのだ。
まとめ
刺激的なタイトルだが、内容としてはとてもマジメで好感が持てる本だった。
30代〜40代男性で、パートナーを得ること自体を諦めてしまった方にも、まだまだチャンスがたくさんあることを示している。
本書を読んでいて一番印象的だったのは、婚活サービスで知り合った男性に対しては、女性は年齢や年収にとてもシビアな視線を向けているのに、SNSで知り合った男性に対しては、年齢や年収はあまり気にしない傾向が強いという点だ。
その理由は、趣味や価値観の共有が先に行われている場合、年齢や年収といった条件は、価値観や相性ほど重視されず、「ま、いいか」と扱われるからだ。
「あの人ちょっと年齢行ってるけど、すごく趣味が合うし優しいし、まあ、いっか」という感じになるのだ。
これは、SNSが持つ「つなげる力」を如実に表していると同時に、「お見合いサービス」や「婚活サイト」などの問題点も浮き彫りにしているように感じた。
タイトルの「本当のモテ期は40歳から」は、40歳以上の独身男性へのエールと好意的に解釈しておこう。
脱おっさん、素敵な40代男性が世の中に増えることは、とても良いことだと思う。
モテるかどうかは別として、オッサン化しない努力は、大事だと思う。
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著者/出版プロデューサー/起業支援コンサルタント/ブロガー/心理カウンセラー。
あまてらす株式会社 代表取締役。
著書に「やってみたらわかった!40代からの「身体」と「心」に本当に良い習慣」「起業メンタル大全」「「好き」と「ネット」を接続すると、あなたに「お金」が降ってくる」「ノマドワーカーという生き方」など全9冊。
神奈川県鎌倉市の海街在住。