2013年の書評初め。今年もたくさんの素敵な本を紹介していきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
今年最初に紹介するのは安藤美冬さんの「冒険に出よう」というご本。
テレビやネットで先に火が着いていたので、とっくに著書も出ていると思われた方も多いかもしれないが、このご本がデビュー作だ。
あまりにも印象的な表紙で、手に取った瞬間に思わず微笑んでしまう。
元気に賑やかに前向きに爆走する、そんな彼女のイメージにピッタリの表紙だったからだ。
そしてこの本の中身も、表紙同様、とても彼女らしく素敵で、パワーをくれるものだった。
安藤さんとはプライベートでも仲良くさせてもらっているので、安藤さんではなく、いつもどおり「美冬ちゃん」と書かせてもらおう。
それでは早速紹介しよう。
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自分だけの生き方を求めて
この本を手に取って最初に感じたことは、「いいタイトルだなあ」ということ。
このタイトルを知る前から美冬ちゃんが本を執筆していることは知っていたのだが、このタイトルはまさに彼女らしさが詰まった、前向きさとパワフルさを象徴するものだ。
この本は、多くの作家さんのデビュー作がそうであるように、半自叙伝的要素を多分に持っている。
旅行好きでバックパッカーとして海外を旅しまくった学生時代。
一人で行ったことがない国へと出かけるのは、まさに冒険だ。
そして彼女は30歳を前に勤めていた出版社からの独立を決意する。
決まったレールの上を走ることをやめ、自らの人生を「冒険」へと変化させる道を選んだのだ。
『安全な道をとるか、危険な道をとるか。迷ったら、危険な道を選べ』
美冬ちゃんが引用した上の言葉は、僕も大好きな岡本太郎氏の「自分の中に毒を持て」という著作の一節だ。
彼女は自らの意思で、危険な道へと敢えて舵を切ったのだ。
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自分メディアの編集長に
決意を新たに独立したものの、最初の半年ほどはほとんど仕事がない状態が続いたという。
そんな彼女に訪れた転機は、ソーシャルメディアとともにやってきた。
ブログ、Twitter、Facebookといったソーシャルメディアを経由して、仕事の依頼が舞い込むようになった。
そこで彼女は自らのブランディングを戦略的に行っていく。
キーワードは「ソーシャルメディア」「フリーランス」「セルフブランディング」そして「ノマド」だ。
一つ一つのキーワードはそれほど際立ったものではないが、この4つすべてを網羅して自分軸としている存在は希少だ。
そしてその「自分軸」に沿っての情報発信を続けることで、「安藤美冬」という存在自体がブランド化されていくこととなった。
彼女の戦略の中で、僕が特に気に入ったのが、住む場所や活動範囲を自分のイメージの近い場所にするという、「ベースキャンプ」戦略だ。
彼女にとっての「ベースキャンプ」は渋谷だ。
学生時代から渋谷が好きだったという美冬ちゃんだが、渋谷には多くのシェアオフィスやコワーキングスペースもあり、個人情報発信の最前線の街という要素もある。
自分の好きな街に居を構え、お気に入りのカフェやコワーキングスペースを回遊しながら生きる。
日々生きる街から僕ら人間は多くの影響を受けるものだ。
住む場所、活動する場所にはこだわりたい。
人との出会いが人生にレバレッジを掛ける
「チャンスの神様は前髪しかない」
この本で引用されている言葉だ。
「好機はその場でモノにしないと、後からは捉えることができない」という意味のギリシャの格言だ。
ソーシャルの時代、僕らには猛烈なチャンスが転がっている。
無名の人だった美冬ちゃんにも、ソーシャルの神様が大きなチャンスをくれた。佐々木俊尚さんが彼女の記事をTwitterで紹介してくれたのだ。
それを機に彼女は佐々木俊尚さんに会いに行き、それが連載やテレビの仕事をもらうきっかけになったという。
ソーシャルメディア、特にTwitterには猛烈なメリットがある。超著名人に対してでも、無名のごく一般の人間から直接メンションを送ることができるのだ。
Facebookにはさまざまなプライバシー設定があるため、メッセを受け付けなくなっていたり、ウォールに書き込めなくなっていたりするケースもあるが、Twitterに限っては、たとえフォローされていなくても、メンションを送ることができる。
僕自身も書評ブログを書く時には、著者の方のTwitter IDを調べて「書評を書きました!」と語りかけたことが何度もあったが、好意的な書評であれば、ほとんどの著者の方は返信してくれるものだし、それをキッカケに交流が始まることも多い。
ちょっとだけ脱線するが、現実には多くのTwitterユーザーが、著名人向けのメンションに「文句」や「攻撃」「誹謗中傷」のようなことを書いてしまい、結果として著名人がTwitterからFacebookにどんどん移行してしまうという悲劇が起こっている。
せっかく著名人と一般の人が直接会話できる「奇跡の橋」を手に入れたのに、自分達の手でその橋を焼き払ってしまってはあまりにももったいない。仕組みを有効に活用してもらいたいと願う。
本題に戻る。美冬ちゃんはソーシャルを駆使して人との関係を広げ、そしてリアルの場でその関係を強化していく。
美冬ちゃんはその「出会い」を非常に重視しており、その戦略がこの本に網羅されている。
人間は一人では何もできない。そしてネットの時代であっても、パソコンやiPhoneなどの端末の両側にいるのは生身の人間なのだ。
ソーシャルメディアを使いこなす彼女の戦略は、意外にも「リアルな人間との結びつき」を最重視していたのだ。
シンプルに生きよう
美冬ちゃんの戦略的キーワードの一つが「ノマド」である。
ノマドとは元来「遊牧民」を指す言葉で、この言葉から連想されるのは「シンプル」な生き方ということになる。遊牧するのにトラック何台分もの荷物を持って歩くことはできない。
シンプルな生活を目指せば、一つ一つのモノ、そして生き方に対してのこだわりが生まれる。
持つモノの数を限定すれば、「何を残すか」「何故残すのか」を常に自分に問いかけることになり、自分のブランディングが先鋭化されていくことになる。
日々の「なんとなく」を排除していくことで、自分に本当に必要なモノが何なのかが分かる。
そしてそれが「安藤美冬」ブランドをさらに価値あるものに仕上げていくのだ。
かつては「超目標志向型」だったという美冬ちゃんがさまざまな経験を通じて目指すようになったのは「しなやかさ」だ。
ルールや目標は決めるけれど、その時々で柔軟に対応すること。
時には敢えて今までとは違うことをしてみること。直観が呼んでいるときには、わざと違う方向を向いてみること。
ノマドワークスタイルの場合、自分で自分が走るレールを敷くのだ。
自分が「目標」として敷いたレールを、時には敢えて外れてみるのもいい。
そこから思ってもみなかった、新しい出会いが生まれることもある。
まとめ
美冬ちゃんと僕の生き方、働き方には多くの共通点がある。
組織を飛び出して一人で働き始めた点、昨年「ノマド」というキーワードで注目された点、ソーシャルメディアを駆使して活動の場を広げている点などだ。
だからこそ良く分かるのだが、「自由」は決して楽ではないのだ。
自由に生きることは、常に思考し続けることで、自分で自分の責任を負い続けることだ。
何も考えず周囲に流されて生きることを否定したからには、常に自分の力で前に進んでいかなければならない。
自由であり続けるには、重い責任があるのだ。
それでも、きっと多くの人がこの「冒険に出よう」を読んで、「私も自由に生きたい」「僕も自分らしい生き方を追求したい」と願うだろう。
この本にはそれだけの強いポジティブ・エネルギーが満ちているのだから当然だ。
「冒険と無謀は違う」。
美冬ちゃんは巻末にそう書いている。
見た目だけマネしてもダメなのだ。生き方を変えるということは、日々のとっても地味で目立たない、コツコツ頑張る部分を変えることを意味するのだ。
美冬ちゃんのカッコだけマネしてネイルをアカにして洋服を捨てたり渋谷のカフェでMacbook Airを開いてみても、何も変わらないのだ。
この本には、彼女のスタイルだけではなく、内面的な彼女の苦悩や成長、そして哲学がたくさん詰まっている。
「自由に生きたい」「自分らしく生きたい」と願う人は、是非スタイルだけではなく、美冬ちゃんの戦略や努力の部分も、見習って欲しい。
新年最初に紹介するのにぴったりの、元気をもらえる素晴らしいご本でした!
オススメです!(^-^)
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著者/出版プロデューサー/起業支援コンサルタント/ブロガー/心理カウンセラー。
あまてらす株式会社 代表取締役。
著書に「やってみたらわかった!40代からの「身体」と「心」に本当に良い習慣」「起業メンタル大全」「「好き」と「ネット」を接続すると、あなたに「お金」が降ってくる」「ノマドワーカーという生き方」など全9冊。
神奈川県鎌倉市の海街在住。