僕は「おじさん」という言葉が嫌いだ。いや、言葉が嫌いなのではない、「おじさん」と呼ばれることが嫌なのだ。
43歳も半分を過ぎているので、年齢的にはそう呼ばれても致し方ないのは百も承知だが、自分のことを「おじさん」とは認めたくない。
ただ、僕らの世代を何と呼ぶかは別として、僕と同世代やそれ以上の人のデジタルデバイドが激しくなっていることも事実だ。
僕のように毎日iPhoneやMacと戯れていないと気が済まないような極端な人間がいるかと思うと、仕事でもパソコンにすら滅多に触れないという友人もいる。
40歳を過ぎてからブログとSNSをフル活用して独立し、ブランディングもしてきた僕としては思う。いわゆる「おじさん世代」がソーシャルメディアをもっと活用すれば、彼らの人生はもっとずっと楽しくなるし、結果として日本がもっともっと活気づくのではないかと。
そんな想いを持つ人間としては、是非このご本を読んでみて欲しい。「乗り遅れるな!ソーシャルおじさん増殖中!」という凄いタイトルのご本だ。
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では早速紹介しよう。
場所や年齢という限界をラクラク突破せよ!
「ソーシャルおじさん」とは、もともとは著者の一人徳本さんのニックネームであった。
そこから「ソーシャルおじさん」は増殖を開始し、複数形「ソーシャルおじさんズ」に変化し、ついにこうして本まで出ることになった。
この本では、ソーシャルおじさんズがどのようにSNSを活用して自らの人生・生活を変えてきたかが、メンバーごとの事例で紹介されている。
冒頭に登場するのは「ソーシャルおじさん10号」こと、高木芳紀さんだ。
高木さんの勤務先は渋谷駅にほど近い場所にある老舗文具店「つばめや」だ。
文具業界は、大型店や100円ショップ、コンビニ、それに通販などの乱立により業界構造が大きく変わり、渋谷駅前の老舗文具店というメリットが活かせなくなり、売り上げ減少に歯止めがかからない状態だった。
そこで高木氏が取組んだのが、Web通販である。
大手のような無機質に商品が並ぶサイトではなく、他店ではちょっと見ない珍しい商品や、一つ一つの商品へのこだわりを伝える作りでサイト構築したところ、それが奏功し、注目を浴びる。
そしてWebの知名度を上げるためのツールとして駆使したのがメルマガ、そしてTwitterとFacebookである。
高木さんがSNSの達人へと至る過程でこだわったのは、「素の自分を出すこと」だ。
無理に売り込むことはしない。そして自分を取り繕うのではなく、自分がやっていて面白いことを発信し続ける。するとそこに人の輪が出来始める。
もちろんすべての人が自分を気に入ってくれるわけはない。気が合う人、一緒にいて楽しい人と会話をしていく、自然体のスタンスが人気を呼ぶのである。
高木さんの以下のコメントに注目したい。
ソーシャルメディアを使ってみて、「出会いの場」や「チャンス」はどこにでも転がっていると感じました。
僕自身も痛感することだが、ソーシャルを使いこなすことで、それまで僕ら人間を縛っていた「場所」や「年齢」「職場」などの制限が一気に外れ、人間関係が爆発的に拡大するのだ。
ソーシャルメディアをほとんど使っていないという中高年の方も、是非活用してみて欲しい。
不便な場所が一等地に変わる飲食店戦略
もう一つの例として採り上げたいのが、ソーシャルおじさん7号、飯島邦夫さんのレストラン事業戦略だ。
もともとはセキュリティ・ソフトウェアなどのB to B マーケティングを長く手がけてきた飯島さん。
勤務先の会社が取り組んでいた自然食事業が、東日本大震災を機に大きな方向転換を余儀なくされた際に、責任者として白羽の矢が立った。
自然食事業の要は、南青山に出店したレストランで、震災後業態や店名を見直し、『大地から菜をたまわる』というコンセプトの「たまな食堂」として再オープンした。
しかし、表参道とはいっても裏通りにあり人通りも少なく、開店当初は来客は一日に数人と、集客に苦労した。
そこで飯島さんが注目したのがソーシャルメディアの活用だ。
自然食にこだわりを持つ人のブログを読み、Twitterをフォローし、それらソーシャルに影響力の強そうな人を割引優待で店に誘導する戦略を取ったのだ。
また、Koutスコアが高い、ソーシャルメディア上の影響力が強い人物を招待してイベントを開催し、飯島さん自身が出店のコンセプトや情熱を熱くかたった。
すると飯島さんや「たまな食堂」のコンセプトに賛同した参加者の人たちが、自然とお店についての好意的な書き込みをし始め、そこを起点に徐々にソーシャル上で話題になり始める。
「目立たない場所」というマイナスイメージが「隠れ家的」というプラスイメージに変化し、表参道で身体に良くて美味しいモノが食べられる素敵なお店として、認知度がどんどん上がっていったのだ。
また、日々の日替わりのオススメメニューを開店前に一食分作り写真を撮り、それをTwitterやFacebookにアップするなどの日々の営業面でのソーシャル活動も功を奏した。
さらには、ソーシャルメディアのリアルタイム性を活かし、「料理が出るのが遅い」「たまな食堂の店員態度が悪い」など、現場でクレームを発信している顧客を検索し、お詫びしてデザートをサービスするなどのフォローアップも行っている。
私にとってソーシャルメディアは生活の一部であり、自分のすべてが詰まっているバイオグラフィでもあります
飯島さんはそのように述べている。
ソーシャルの利点をフル活用した飲食事業の成功例と言える。
この例は、集客に苦労している多くの飲食店で応用可能な事例なので、是非取り組んでみて欲しい。
「おじさん」だからこその経験がウケる!
このご本には、いま挙げた2つの例以外にも、たくさんのソーシャルおじさんの活躍が綴られていてどれもとても興味深い。
その中から浮かび上がってくる共通点として、「おじさん」はソーシャルとの親和性がとても高いということだ。
ソーシャルおじさん1号、徳本さんの事例にも書かれているが、おじさんは人生経験が若者よりも豊富だ。組織で長く揉まれた経験もあれば、好景気も不景気も知っている。
知識とともに知恵も豊かな「おじさん」だからこそ、若者達とはひと味もふた味も違う情報発信ができるし、若者たちも、それら豊富な経験に裏打ちされた情報を求めている。
徳本さんは47歳で、ソーシャルを仕事にしたいと願い、22年勤めた広告会社を退職してベンチャーのネット広告会社に転職、そしてついに本まで出版してしまった。
それまでは年齢や世間体を気にして「(やりたいけど)やらない」と判断していたことを、一つずつ「(やりたいことだから)やる」に変えていく。
それによって徳本さんは、ソーシャルおじさんとなったのだ。
ソーシャルでの人とつながっていくのは、行きつけの居酒屋で人脈を拡大するようなもの
徳本さんはそう指摘している。
僕と同世代の友人などから散々聞く言葉。「なにを書いていいか分からない」。
難しく考えず、まずは些細な日常のことから書き込んでみてはどうだろうか。
ソーシャルとリアルを融合せよ!
僕が書いた「ノマドワーカーという生き方」にも書いたことだが、本書でも繰り返し書かれいるのが、「ネットとリアルの融合」だ。
日本では2ちゃんねる文化が強かったこともあり、「ネットは匿名でバーチャルな空間」という思い込みが強い。
そしてネット上での出会いはネットだけ、実世界、リアルな世界とは別、という考え方が主流だった時期もあったし、僕と同世代の人でソーシャルを使っていない人は、この点を必要以上に心配しすぎる傾向が強い。
もちろんネット上にはおかしな人もいるので、自己責任で判断しなければいけないが、おかしな人の出現する比率はネットもリアルも変わらない、というのが僕の印象だ。
電車に乗っていれば時々おかしなオッサンが喚いているし、Twitterでもたまに訳の分からない恫喝をしてくる人がいたりする。
変な人に会うのが怖いから電車に乗らない、というのでは活動範囲が狭くなってしまう(もちろんストーカー被害など具体的問題がある場合は別だ)。
SNS活用の最大のポイントは、ネットとリアルの融合だ。
ネットで知り合った人とリアルでも繋がる。リアルで会った人とネットでも繋がる。そしてその繋がりを深め、広げていく。
これを繰り返していくことで、僕らの人脈はどんどん広がり、そして深くなっていくのだ。
まとめ
先日渋谷の「かつ吉」というトンカツ屋さんで食事をした。福岡からうっしーこと @ushigyu くんが上京していたので、ランチをご一緒したのだ。
店に入って予約していた席に通されたら、隣の席で本書の著者のお一人、高木芳紀さんが食事をされていてビックリ。
高木さんとは美崎栄一郎さんのポッドキャストの収録で初めてお会いして、そこからTwitterとFacebookでつながり、仲良くさせていただいている。
では何故僕が美崎栄一郎さんと繋がったかというと、僕が本屋で「iPadバカ」という美崎栄一郎さんの著書を買って読み、書評をブログに書いたからだ。
ちなみにその時書いた「iPadバカ」の書評エントリーはこちら。
情熱と脱線の熱き熱きiPad活用術! 最高だ! “iPadバカ” by 美崎栄一郎
「iPadバカ」の編集担当だった黒川さんが僕の書評をネットで見つけてくださり、それを美崎さんに転送してくれたことで、僕と美崎栄一郎さんは繋がったのだ。
美崎さんと僕は「ネット→リアル」で繋がり、美崎さんを介して高木さんと僕は「リアル→ネット」で繋がった。
トンカツ屋さんに話を戻そう。
高木さんは僕らよりも先に食事を終えて店を出ていった。
僕とうっしーが引き続き食事を楽しみつつ話をしていると、隣の席に別のお客さんがやってきて座った。僕が知らない男性二人連れである。
そしてそのうちの一人の方から声を掛けられた。「立花さんですよね?」と。
それがこの本のもう一人の執筆者、徳本さんだったのだ。さらにビックリである。
徳本さんは「かつ吉」に向かう途中で店を出てきた高木さんとすれ違い、その際高木さんが徳本さんに、「立花がかつ吉にいたよ」、と声を掛けてくださったという。
そして徳本さんと僕もFacebookでその日のうちにお友達になり、日々お互いツッコミを入れ合うようになった次第である。
というわけで、美崎栄一郎さん→高木さん→徳本さん、と、どんどんソーシャルとリアルで人の繋がりが深まっているわけである。
ハッキリ言って、もはやネットで知り合ったかネット以外で知り合ったかは、まったく重要ではなくなりつつある。
TwitterとFacebookの登場により、人と人の繋がりは、場所や年齢といったさまざまな制約から解放され、自由に世界中の人とつながることができる。
すぐ隣町に住んでいる友人の書き込みと、地球の反対側、ブラジルのサンパウロに住んでいる小学校時代の友達の書き込みが続けて流れてくる。
そして今日出会った新しい知り合いとも、すぐにFacebookやTwitterでつながっていく。
「おじさん」世代は世渡りのコツも熟知しているし、人と人を繋ぐ力も強い。
是非「おじさん」世代が持つ強みを活かして、ネットの世界でも輝いて欲しい。
ネットが苦手な同世代はもちろん、SNS活用に二の足を踏んだり、使い方が分からないとう若い世代にも、「活きたソーシャル・バイブル」として読んでみて欲しい。
「おじさん」と呼ばれるのは嫌いだが(笑)、すごく良い本です。
Kindle版もあり!オススメ!
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著者/出版プロデューサー/起業支援コンサルタント/ブロガー/心理カウンセラー。
あまてらす株式会社 代表取締役。
著書に「やってみたらわかった!40代からの「身体」と「心」に本当に良い習慣」「起業メンタル大全」「「好き」と「ネット」を接続すると、あなたに「お金」が降ってくる」「ノマドワーカーという生き方」など全9冊。
神奈川県鎌倉市の海街在住。