自分のことは自分が一番よく分かっている。僕たちはそう思っている。それは本当だろうか?
僕たち人間は、自分が認識している自分の「意識」を自分自身のすべてだと思い込んでいる。
しかし僕たち人間が、自分で認識している「顕在意識」は、僕らの意識全体のわずか3%〜5%しかないことが分かっている。
残りの95〜97%は潜在意識、つまり自覚できない意識なのだ。
自覚していないのだから、自分は認識することができない。
つまり、僕たちは「これが自分」と思い込んでいる部分だけを見ていては、正しい自分を認識できないということだ。
では、どうしたら本当の自分を正しく認識できるのだろうか。
幾つかの方法があるが、「エニアグラム」という性格タイプ判断は、かなり具体的であり的を射た解説となっている。
エニアグラムについては以前入門書として「エニアグラム 自分のことが分かる本」の書評を書いている。以下も参考にしてください。
自分と大切な人のことを知ろう — エニアグラム 自分のことが分かる本 by ティム・マクリーン & 高岡よし子 [書評] | No Second Life
今回紹介する「エニアグラム あなたを知る9つのタイプ」は、より深く実戦的な内容を多く含む本だ。
エニアグラム―あなたを知る9つのタイプ 基礎編ドン・リチャード リソ,ラス ハドソン 角川書店 2001-10-19 売り上げランキング : 13645
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同じエニアグラムを扱っている本なので、前回の本と重複する説明も多くなるが、さっそく紹介しよう。
エニアグラム あなたを知る9つのタイプ — 自分のことを知るといつも豊かに生きられる
エニアグラムってそもそも何?
エニアグラムとは、上の図のように、円周を9等分して描いた象徴図形のことである(上の図はこちらのサイトからお借りしました)。
図形としてのエニアグラムは紀元前2,500年頃から使われてきたとされ、正確な起源は分かっていない。
そしてこの図形に性格タイプの判断を結びつけて考えるようになったのは、ぐっと最近になってからのことだ。
1950年代にボリビア出身きオスカー・イチャーソが図形としてのエニアグラムの上に人間の性格タイプを当てはめることに成功し、その後多くの研究者とともに体系だてられていった。
エニアグラムは特定の宗教や占いなどとは無関係である。
あくまでも人間が人格形成の過程を経て作り上げた「自分自身」を客観的に俯瞰するためのツールである。
そして、自分自身を客観視できるということは、他人のことも客観視できることになる。
自分と親しいパートナーや会社の上司、部下などだどのタイプなのかを知ることで、その人に最も適した接し方や対応を理解することができるようになる。
ただし、エニアグラムはあくまでもツールであって、絶対的な存在ではない。
エニアグラムを盲信して「あの人はあのタイプだからあんな人なんだ」というような思い込み、ジャッジをしてはならない。
どんなツールも正しく使えば便利だが、間違った使い方をすると凶器にもなることをお忘れなく。
エニアグラムの9つのタイプ
エニアグラムでは、人間を9つのタイプに分類している。
それが円周図形上にプロットされている図形の9つの角に位置する。
9つのタイプそれぞれは、以下のように分類される。
タイプ1. 改革する人
タイプ2. 助ける人
タイプ3. 達成する人
タイプ4. 個性的な人
タイプ5. 調べる人
タイプ6. 忠実な人
タイプ7. 熱中する人
タイプ8. 挑戦する人
タイプ9. 平和をもたらす人
このタイプは思春期の人格形成後は一定していて変わることはない。
「去年から頑張ったので僕はタイプ1になった」というような変化は起こらない。
タイプ3の人はずっとタイプ3、タイプ9の人は死ぬまでタイプ9なのである。
本書「エニアグラム あなたを知る9つのタイプ」には、タイプ1からタイプ9まで、それぞれの人が持つ基本的性格についた詳細に説明されている。
また、自分がどのタイプに属するのかを質問に回答する形でチェックするテストも別に販売されている。
有料版の診断テストは144問の質問からなり、2,500円。「エニアグラム研究所」のサイトから通販で購入できる。
興味がある方はこちらからどうぞ。
エニアグラム性格タイプ診断テスト│エニアグラム研究所[日本]
すべてのタイプについてここで詳細に書くことはできないので、僕自身のタイプについて簡単に説明しよう。
僕はバリバリのタイプ3、「達成する人」である。
本書のタイプ3の解説の冒頭には、以下の説明がある。
「成功志向で、実際的なタイプ:適応力がある。卓越している。駆り立てられる。イメージを意識する」
まさに僕はこのタイプ。この本を読んで納得した、僕自身の「タイプ3」らしさは以下のとおり。
- 自分自身で決めた目標に向かって猛進する。やったことがないことにも果敢にチャレンジしていける。
- 得意ではない分野にでも適応することができる。
- 論理的と思われがちだが、直観やイメージを大切にしている。
- 常に何かに追われている感覚があり、駆り立てられ、のんびりと休みにくい。
成功に対する意識が強く、目標をクリアすることに無情の喜びを得る。
だからこそ、コツコツとした努力を惜しまないし、中・長期の目標を見据えていくことができる。
それがタイプ3の特性だ。
自分がどのタイプかを知るための簡易テストが本書にあるので、皆さんも是非チャレンジしてみて欲しい。
「ウィング」って何?
エニアグラムはとても奥が深い。
タイプ1〜9で9種類の分類だが、それぞれのタイプに「ウィング」がある。
ウィングは「羽」のことだ。自分のタイプの両隣のタイプの性格を誰しも併せ持っているのだ。
どういうことかを僕の例で説明しよう。
僕はタイプ3であることは上で説明したとおりだ。
タイプ3の両隣には、タイプ2と4がいる。
そして、タイプ3の人は、誰しもタイプ2のウィングを持つ人かタイプ4のウィングを持つ人に分かれる。
隣のタイプの性格が強く出る人もいれば、ほとんど出ない人もいるが、誰しもウィングを持っているのだ。
僕はタイプ3のウィング4である。
タイプ3は達成型の超バリバリの人なのだが、タイプ4は芸術肌で個性的、そしてちょっと遊離している。繊細で引っ込みがちなタイプなのだ。
僕自身自覚があるが、タイプ3が前に出ているときははきはきして自信に満ち、非常に合理的に考え行動する。
しかしその一方で芸術家タイプが出るときは、引き篭もり一人でいることを好み、「僕は他の人たちとは違う」と思っていたりする。
この極端に異なる2つのタイプが共存して、タイプ3のウィング4という個性が出来上がっているのだ。
この本ではタイプ3ウィング4の著名人として、トム・クルーズ、マドンナ、スティング、リチャード・ギア、マイケル・ジョーダン、ホイットニー・ヒューストン、そして江川卓などを挙げている。
いっぽう同じタイプ3でもウィング2を持つ人は持っている性質が異なる。
タイプ2は「愛の人」であるので、ウィング2を持つタイプ3は、より感情に動かされやすく、のびのびしている。
タイプ4は遊離型だがタイプ2は密接な人との繋がりを求めるので、ウィング4のタイプ3の人の方が、人懐っこく親密である。
タイプ3ウィング2の著名人としては、ビル・クリントン、エルヴィス・プレスリー、ポールマッカートニー、郷ひろみ、木村拓哉などが挙げられている。
それぞれのタイプに2つのウィングがあるので、これで18通りのタイプがあることになる。
それぞれのウィングのタイプの解説を読むと、「なるほどー!こういうところ自分にもある」と納得することが多い。
エニアグラムが奥深いと言われる理由の一つか、この「ウィング」という考え方にある。
「ステート」が低いって?
僕たちは日常的に「あの人は性格が悪い」とか「あの人は人柄がいい」などと言っている。
しかし、エニアグラムを学んでいくと、実は「良い性格」「悪い性格」などというものは存在しないということが分かる。
人にはそれぞれの特性がある。そして、どんな人も心と体の状態が良ければ特性の良い面がたくさん出る。
そして状態が悪ければ、特性の悪い面が出る。それだけのことだ。
エニアグラムでは、状態の良し悪しを「ステート」という言葉で表現する。
良い状態は「ステートが高い」。悪い状態は「ステートが低い」という言い方をする。
エニアグラムは「タイプ」と「ウィング」で18種類に基本的な性格を分類している。
そしてさらにそれぞれのタイプを9段階のステートで立体的に表現している。
それぞれのタイプがステートが悪いとどんな言動を取りやすいのか、ステートが高くなるとどんな風になるのかが分かるのだ。
単に基本的な性格が分かるだけでなく、ステートの高低で、自分のタイプがとる典型的な言動が分かる。
裏返せば、こんな言動をしたら、自分はいまステートが低いのだ、と気づくことができるのだ。
再び僕の例で説明しよう。
タイプ3は達成型で承認欲求が強い。
このタイプはステートが高いときには、自分が持つ能力を人のために使い、感謝されることを喜びとできる。
しかし、ステートが低いときには、他人のことを考えず、自分だけが評価されれば良いと考える傾向がある。
また、自分の実力を過大に示そうと見栄を張ったりウソをついたりする。
自分が誰からも評価されなくなったらどうしようと恐れ、その恐れを隠すために傲慢になり、競争心をむき出しにしたりする。
タイプ3は根源的に「ありのままの自分でいては愛されない」という恐れを抱いている。
だから、何か人より傑出した結果を出し、その結果によって他人から承認されようとする。
「Being」ではダメで「Doing」してしまうのだ。
しかし、最高レベルまでステートが上がったタイプ3は、「ただ存在するだけで自分は承認されている」という安心感をいだき、満足している状態になる。
つまり、何かを必死にやり遂げて「凄い!」と言われたくて堪らなくなっていたら、「あ、いま僕は視野が狭くなってDoingになってるぞ」と自分に警鐘を鳴らすことができるのだ。
そして、人間は人生の歩みを進めるにつれ、さまざまなことを学び、経験し、自分を高めていくことができる。
自分自身を高めるとは、まさに「ステートを高める」ことなのだ。
日常的に常に開かれた心で豊かに生きる人は、まさにステートが高い人。
その高みを目指すための指針として、エニアグラムは最高のツールなのだ。
「統合への道」を歩む
再びエニアグラムの図形を見ていただきたい。
それぞれの数字から、2本の線が出ているのに気づくだろう。
僕の場合のタイプ3は、タイプ9とタイプ6に向かって線が出ている。
この2本の線は「分裂」と「統合」の道を示している。
上で説明した「ステートが下がる」「ステートが上がる」道と考えていただきたい。
タイプ3は「分裂の道」でタイプ9に向かう。
つまり、ステートが下がると、ステートが低いときのタイプ9の特性が出るのだ。
タイプ9は平和を愛する穏やかな人なのだが、ステートが下がるとすべてをシャットアウトして自分の殻に閉じこもる傾向が強い。
まるでシャッターを下ろすようにピシャっと人間関係を絶ち、二度とその人に対しては心を開かなくなる。
タイプ3の僕は、ステートが低く混乱したり怒りが強く出たりすると、タイプ9の引き篭もりが強く出る。
会話を途中で打ち切って立ち去り、一人で自分の世界に入ってしまうのだ。
これが「分裂の道」だ。
そしてステートが上がるとタイプ3は統合の道でタイプ6に向かう。
ステートの高いタイプ6は献身的で常に人の役に立つことに喜びを感じる「無私の人」だ。
「俺が俺が」になりやすいタイプ3が統合していくと、自分の力を自分のためだけではなく、人のために使うようになる。
そして周囲の人たちが幸せになる役に立てたことが自分の喜びとなるのだ。
ステートの高い6へと向かうタイプ3は、心が開き穏やかな人となるのだ。
このように、各タイプごとに分裂の道と統合の道がある。
それぞれの道にあたるタイプの解説を読むと、「あるある」「こんなことやってる」と納得することが多い。
「相性が悪い」は存在しない
エニアグラムは自分自身のことを客観的に知るために有効なツールだが、それだけではない。
自分の周囲にいる人のことも客観視できるツールなのだ。
特に夫婦や親子、それに会社の上司と部下など、接触の機会が多い相手を客観視できるようになると効果的だ。
存在が近い相手には遠慮がなくなり、自分の欲求をぶつけてしまったり感情的になりがちだったりする。
そんなときに相手のことが客観的に分かっていると、無駄なトラブルを回避しやすくなるのだ。
たとえば僕の奥さんはタイプ5のウィング4である。
タイプ5というのは、研究者タイプ、無口で静かだが、頭が良く一つのことを深く掘り下げて学んでいくタイプだ。
しかもウィング4は遊離している芸術家タイプ。このタイプにはデビッド・リンチ、スティーブン・キング、ゴッホ、坂本龍一、小泉純一郎などがいる。
全然社交的でないし、ちょっと人嫌いなところもある。肉体的な接触も苦手としている。
タイプ5の人と仲良く暮らしていくためには、タイプ5の人が「隠遁」できる場所をしっかり確保してあげることが必要だ。
普通にしていても「ドン引き」しているように見えるのである。研究したり深く考えることが好きなので、「独りの時間と場所」をとても大事にしている。
一日中連れ回したり大人数での飲み会を強要したりすると、タイプ5の人はしんどくなる。
この原則が分かっているだけで、タイプ5の人との付き合いはぐっと楽になる。
さらに、タイプ5の人はステートが下がるとタイプ7の悪い面が出る。
タイプ7の人は明るく華やか、そして人懐っこいのだが、ステートが低いと落ち着きがなくやたらと予定を詰め込んだり、躁状態になったりする。
普段は引き篭もりでドン引きの奥さんが、やたらと外出の予定を入れたり複数の習いごとを始めたら黄色信号。
何か心配事があったり今の自分ではダメだと自己否定が入っていたりする可能性がある。
そんなときは、ちょっと話を聞いてあげたりすることで、落ち着きを取り戻すこともある。
このように、近い人同士で一緒にエニアグラムを学ぶと、無駄に相手を責めたりジャッジしたりすることがなくなる。
自分の親や子供、兄妹や会社の上司などがどのタイプに当たるか考えるのも楽しいし勉強になる。
「そうか!あの上司はタイプ8のウィング7だから、あんなに高圧的で偉そうなんだ。でも機嫌がいい時はめちゃくちゃ包容力あるもんなあ」
そんなことが分かると、タイプ8の操縦法が自然と掴めてくるのである。
この考え方を理解できると、そもそも人間に「相性が悪い」という関係性はないのだ、ということガ分かる。
相性が悪いと感じるのは、自分または相手、もしくは両方のステートが低いことを意味する。
すごく苦手だと思った人が、大きな転換を気に一気にステートが上がれば、まるで別人のように素敵な人になり、あっという間に仲良くなった、ということは、実際良くあることなのだ。
人格というのは固定されたものではなく、もともと持っている性質のうえに、ステートが上下することで、他人からの見え方・感じ方が大きく変化するものなのだ。
まとめ
エニアグラムは本当に奥が深くて、まだまだ書きたいことはたくさんある。
そもそも僕がエニアグラムを知ったのは奥さん経由。
奥さんが、あけみちゃんこと岡部明美さんの講座でエニアグラムを学び、僕にも教えてくれたのだ。
最初はあまりピンとこなかったのだが、一度エニアグラムを知ると本当に面白い。
先月まで受講したLPL養成講座でも、エニアグラムについてかなり深く学んだが、これほど人間を立体的に分析できるツールはなかなかないと思う。
そして、30人いれば全員が18のタイプとウィングに所属する。
タイプごとに分かれて並んだりすると、そのタイプごとの傾向がはっきり出て大笑いだったりする。
会社などの組織でも、従業員一人ひとりのエニアグラムタイプを理解して活用すると効果的だ。
その人の個性・特徴を活かした配置が出来たり、日常のコミュニケーション方法を個性に合わせて変化させたりできる。
現実世界での無駄な諍いをなくし、相手の個性を尊重するのに、エニアグラムはとても効果的なのだ。
皆さんも是非エニアグラムを学んで、自分を客観視してみて欲しい。
知っているつもりで全然知らなかった自分の姿が現れて感動するかもしれない。
そしてパートナーと一緒に学べば効果100倍!
是非実践してみてください。
オススメの一冊ですよ(^-^)。
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著者/出版プロデューサー/起業支援コンサルタント/ブロガー/心理カウンセラー。
あまてらす株式会社 代表取締役。
著書に「やってみたらわかった!40代からの「身体」と「心」に本当に良い習慣」「起業メンタル大全」「「好き」と「ネット」を接続すると、あなたに「お金」が降ってくる」「ノマドワーカーという生き方」など全9冊。
神奈川県鎌倉市の海街在住。