書評

幹部へのインタビューから浮かび上がる真実 “孫正義が語らないソフトバンクの深層” by 菊池雅志 [Book Review 2011-006]

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ブックレビュー2011年の6冊目は、菊池雅志氏著、「孫正義が語らないソフトバンクの深層」を読了。

光文社編集部の坂口様よりご献本頂いた。誠にありがとうございました。

 

孫正義が語らない ソフトバンクの深層

菊池 雅志 光文社 2010-12-16
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by ヨメレバ

 

 

僕はApple製品ファンではあるが、ソフトバンクのファンではない。というか、iPhone 3Gを持つまでは、携帯電話にほとんど興味がなく、会社から支給される携帯以外を自分で持ったことすらなかったのだ。

そして僕はソフトバンクファンではないが、アンチソフトバンクでもない。極めてニュートラルだ。

だが、世の中でソフトバンクに対する肯定的・否定的意見がずいぶん多く出ていることは昔から知っていた。

そもそも、僕にとっての最初の疑問、「ソフトバンクって何の会社なの?」は、長年放置されたままになっていた。確か以前はパソコンソフトの卸とかやっていたはず。でもいつの間にかADSL屋になり、さらに最近では携帯屋になった。その程度の知識しかなかった。

そして、ソフトバンクという会社に対しては「なんか胡散臭い」「怪しい」「孫正義一人で持っている会社」という漠然としたネガティブなイメージを持っていたことも確かだ。Yahoo! BBのモデムを大量にばらまいた頃の悪印象が強いのかも知れない。

ただ、ソフトバンクがiPhoneの独占キャリアになってから、どうしたってそれまでよりはソフトバンクとの間の接点が増えたことは確かで、以前よりは興味を持つようになった。そしてTwitterを通じて流れてくる孫正義氏のツイートを眺めて、「ああ、この人も普通のオッサンなんだな」などと感じるようになったことも確かだ。

といった程度の予備知識しかなく、しかも日頃まったくテレビを見ないため、マスコミが孫さんとソフトバンクをどのように扱っているのかについてもあまり情報を持たない僕にとって、本書はソフトバンクという会社を知る、とても良い材料となった。

本書の特徴は、孫正義氏には敢えてインタビューせずに、他のソフトバンク幹部に密着取材することによって、カリスマ経営者孫正義のひらめきや実行力を、どのようなメンバーがどんな苦労をして支えているのかがハッキリと分かるよう構成されていることだ。

さらに、本書はソフトバンクがADSL事業に参入する時点から時系列で話が進んで行くため、僕の長年の疑問だった「ソフトバンクって何の会社なんだっけ?」という疑問も解けたし、根拠なく抱いていた漠然とした悪いイメージを払拭することもできた。

NTTやKDDIと大きく異なるのは、様々なバックグラウンドを持つ幹部達が、高い自己実現意識を持って孫正義氏の夢の実現の一翼を担っているということだ。彼らは孫正義氏に心酔しているわけではなく、巨大な官製企業2社に挑み倒すという共通の目標に向かって突っ走っているのだ。

中でも特に興味深かったのは、光通信を率いる重田氏が束ねる営業軍団の話。光通信といえば、ドットコム・バブルの時に諸悪の根源のように叩かれまくり、業績も急上昇ののち大失速したわけだが、どっこい光通信は生き残り、いまでもソフトバンク携帯を地道に売りまくる黒子として活躍しているのだ。

現在進行形の企業について語っている本なので、結論はない。ソフトバンクは勝ったのか。孫正義は勝ったのか。まだ誰にも解らない。

だが、本書を読んだことによって、ソフトバンクが今後どのようなチャレンジをしていくか、おぼろげながらイメージが湧くようになった。

今後は、従来よりも少しだけ好意を持って、ソフトバンクと孫正義氏の奮闘を眺めて行きたいと感じた。

リアルな世界の現在進行形のルポルタージュ、非常に迫力があった。

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