ライティング術、書き方術の本というと、人さまに読んでもらうためのスキルというイメージを持つだろう。
だが、本書「書きながら考えるとうまくいく!」はそうではない。
自分「だけ」が読む文章の書き方、「プライベート・ライティング」のスキルを伝授してくれるのだ。
書きながら考えるとうまくいく!―プライベート・ライティングの奇跡
マーク リービー PHP研究所 2004-01
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本書は小山龍介氏が自著の中で紹介していたもので、「書き方術」というよりは「思考法」の本といった方が近い切り口だろう。
本書のメッセージは極めてシンプルだ。
頭だけで考えるのではなく、考えていることを言葉にして書きだすと、ずっと整理され物事がうまくいくようになる、ということだ。
メッセージかシンプルなので、ノウハウもそれほど複雑なものではない。あまり書くと簡単にネタバレしてしまうのが難しいところだが、ポイントは以下の3つ。
- 自分以外の人間が絶対に見ないという前提で書く
- とにかくひたすら速く書く
- 時間制限を決めてその時間書きまくる
本書では、まずこのプライベート・ライティングが必要な理由が説明され、続いて6つのキーワードからなるプライベート・ライティングの手順が示される。
さらに第3章では実際に著者や著者の知人が実践したプライベート・ライティングの文例と解説が掲載され、第4章で応用編、という構成になっている。
読んでみて感じたのは、この手法は相当実践的なものだということ。正しく理解して実施すれば、相当な威力を発揮してくれるだろう。
実際本書を読みながら、1つ2つプライベート・ライティングを実践してみたのだが、確かに自分の中でモヤモヤとしていたものの輪郭が見えるようになり、気持ちもスッキリする。
そこまでうまくいかなくても、自分が感じている課題が見えたり、次にやるべきことが何か分かるだけでも大分違うだろう。
一方で、本書はちょっと退屈でもあった。
手法自体がシンプルで分かりやすい分、解説や実例をそれほど読まなくても実践できてしまうからだ。
前半の手法の説明は非常に興味深いのだが、後半の実例や応用編になると、若干輝きが失われ冗長なイメージを持った。これは以前、スージー・ウェルチ氏の著書「10-10-10」を読んだ時に感じたのと似た感覚だ。手法は非常に優れているが、本としては実例がちょっと退屈というパターン。
恐らくこれは、僕が日本人であるということも理由の一つだろう。実例はすべて海外の事例なので、実感が掴みにくいのだ(10-10-10の実例もそうだった)。
単純な翻訳本として出版するのではなく、それこそ小山龍介さんなどが監修して、実践編と応用編を日本の例に置き換えると、ものすごく活き活きした本に生まれ変わるような気がする。
いずれにしても、「プライベート・ライティング」はシンプルで強力な思考ツールだ。
物事をじっくり考えたい方。アイディアを具体的にするのが苦手な方。是非試してみて欲しい。
2011年43冊目の書評としてお届けしました。
著者/出版プロデューサー/起業支援コンサルタント/ブロガー/心理カウンセラー。
あまてらす株式会社 代表取締役。
著書に「やってみたらわかった!40代からの「身体」と「心」に本当に良い習慣」「起業メンタル大全」「「好き」と「ネット」を接続すると、あなたに「お金」が降ってくる」「ノマドワーカーという生き方」など全9冊。
神奈川県鎌倉市の海街在住。