6. 平日、会話を15分増やすだけで結婚満足度がアップする
結婚当初は仲良しだった夫婦が次第に冷めていき、やがては憎んでしまったりする。
夫の定年退職を待って、退職金を受け取ったと同時に離婚、というようなケースも発生する。
なぜそのようなことになるかというと、圧倒的なコミュニケーション不足が原因だ。
夫は会社の仕事と会社の人間関係ばかりに目を向けて家庭を省みない。
妻は子どもを抱えて一人不満を募らせ、その不満がやがて冷たい芯のように心に固まり、二人の距離が開いていく。
そんなことにならないためには、何が必要か。
吉越さんは、とにかく夫婦が一緒にいる時間を増やし、会話する時間を持つことだと力説している。
シカゴ大学の山口教授がワークライフバランスと結婚満足度に関する興味深い調査を行なった。
夫がリストラで月額10万円の収入減となったという設定だ。
10万円の月給減がもたらす夫婦の結婚満足度の低下は、何によって補われるか、という調査だ。
その中には「平日の夫婦の会話が16分間増加すること」「夫の育児参加の割合が3%増加すること(例えば 15%から18%のように)」などが並んでいる。
これらは全部が実現されればということではなく、どれか一つで良いのだ。
極論すれば、平日の夫婦の会話16分が、月給10万円分の価値を持つというわけだ。
それぐらい、夫婦間の会話というのは大切なものなのだ。
決定的な亀裂が入ってしまう前に、最近会話が足りないなと感じる方は、是非一日16分の会話を目指していただきたい。
7. 帰宅したら「ワーク言語」ではなく「ライフ言語」で
夫婦に子供ができると、妻は育児に専念するというケースも出てくる。
そしてその時期に夫婦に大きな亀裂が入ってしまう場合も多いという。
何故か。
それは、夫と妻が属する世界が大きく変化するのと、夫の一日の会話の総数と妻の会話の総数に、大きな開きが出てアンバランスになるためだ。
夫は毎日会社に行き、取引先や同僚、上司などと「ワーク言語」で多くの会話をする。そこには首尾一貫性や効率が求められ、結論が必要だ。
その間に妻は、一日ごく小さなコミュニティの中で、とても限定的な会話しかせずに一日を過ごす。
「女性はおしゃべりだ」という印象があるが、統計を取ったところ、男女の発話数に大きな違いはなかったという。
そして夫が帰宅すると、妻は「ライフ言語」で、つまり、自分や子供、それに自分が属する小さなコミュニティで起こったことを話す。ライフ言語とは、つまり、とりとめのない話し方、ということになる。
一日仕事で疲れて帰ってきた夫は、とりとめのない妻の会話を遮り「だから結局何が言いたいんだ」というような、ワーク言語的効率性を求めてしまう。
そして妻は自分の苦労を共有してくれる相手がいないことを不満に思う。
その不満を解消するために、まずは夫は妻の話を傾聴しよう。
一日の発言数が少なく「話したい」という欲求が強い妻の言葉を拾い、「そういうことだったんだ」「そうか、なるほどね」という相づちを打ち、相手の言葉を肯定する。
狭い世界で奮闘する妻の言葉に共感することで、夫婦間の親密さは大きく向上するのだ。
8. 「気にかける言葉」と「寄り添う言葉」を大切にする
夫婦間の会話というのは、とりとめもない些細なものが大半を占める。
一年中難題について語り合う必要はないし、そんなことをしている暇もない。
だからこそ、その大したことのない小さな会話で、相手をケアする心を持ちたい。
吉越さんが提案しているのが、「気にかける言葉」と「寄り添う言葉」だ。
「気にかける言葉」は、相手の体調や心のコンディションに気を配る一言だ。
沈んでいるように見えれば「何かあった?」と聞く一言が大切だ。
大切な相手だからこそ、ささいな一言で救われることもあるのだ。
そしてもう一つの「寄り添う言葉」は、相手への共感を示す言葉だ。
例えば妻が「今日の映画が凄く良かった」と感想を言ったとする。
そんな時には、理屈を振りかざして相手を論破するようなことはせず、静かに「そうだね」と微笑みとともに一言添えればいい。
吉越さんは齋藤緑雨という明治時代の文筆家の一文を紹介している。
「寒い晩だな。寒い晩です。妻のナグサメとは正に斯の如きもの也」
大げさな愛情表現ではなく、小さな共感の一言が、相手との距離を縮めていくのだ。
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著者/出版プロデューサー/起業支援コンサルタント/ブロガー/心理カウンセラー。
あまてらす株式会社 代表取締役。
著書に「やってみたらわかった!40代からの「身体」と「心」に本当に良い習慣」「起業メンタル大全」「「好き」と「ネット」を接続すると、あなたに「お金」が降ってくる」「ノマドワーカーという生き方」など全9冊。
神奈川県鎌倉市の海街在住。