西野亮廣さん著、「魔法のコンパス 道なき道の歩き方」という本を読んだのでご紹介。
最初に前提として言っておくと、我が家にはここ何年もテレビがない。
従ってお笑い芸人の方のことも全然分かっておらず、本書の著者の西野亮廣さんが、もともとお笑い芸人だ、ということも、僕は知らなかった。
では、どうしてこの本を手に取ったかとというと、Facebookなどで西野さんのブログ記事がちょくちょくシェアされてくるのを見かけ、記事を読むようになり、彼に興味を持ったからだ。
なので、僕は芸人としての西野さんのことを何も知らないし、ほとんど興味もない。
なので、テレビで彼を知っている人の読後感と、僕が感じる読後感は違うのかもしれない。
ということを前提にご紹介したいと思う。
なかなか面白い本だった。
僕に近い価値観がたくさん出てきて共感した。
さっそく紹介しよう。
魔法のコンパス 〜 道なき道の歩き方 by 西野亮廣 [書評]
「問い」を持つ癖を身につける
世の中には、常に「答え」、つまり「正解」を教えてもらうことばかり考えている人が多い。
だが、それは実は一番もったいない生き方である。
他人が考えた正解を受け取って、「そうかそうか」と納得していては、安心ではあるし、考えなくていいから楽かもしれない。
でも、それでは常にあなたは思考停止して生きることになる。
だから、面白いことは何も始まらない。
面白いことを始めたいなら、僕たちは常に「問いを立て続けること」が大切だ。
西野さんはこう書いている。
「やっかいなことに、自分の人生を賭けるほどの「問い」……たとえば、「遠くにいる人と会話することはできないの?」というような「壮大な問い」は、自分にとって”居心地が良い場所”にはあまり落ちていない。
なぜ、自分がいる場所の居心地が良いかというと、以前、この場所にあった「壮大な問い」を、すでに誰かが解決してくれたからだ。
1876年にアメリカのグラハム・ベルが電話を発明しちゃったから、「遠くにいる人と会話することはできないの?」という「問い」は、もう生まれない。
つまり、人生を賭けるほどの「問い」を見つけるには、居心地の悪い場所に立つ必要がある、というか居心地の悪い場所に立ったほうが「問い」が見つかりやすい」
大切なのは、問いに対する「答え」「正解」を人から教えてもらって納得して生きることではない。
「遠くの人と話すことはできないの?」という問いに、ベル以前の時代の人なら、「そんなことできるわけないだろう」と答えただろう。
その答えを聞いて、「そりゃそうだ。そんなこと無理だよね」と安心・納得して生きるのか、ということだ。
答えが大切なのではなく、「どんな「問い」を立てるのか」の方が、はるかに大切なのだ。
お金とは「信用の一部を数値化したもの」
いまの時代、お金の価値が相対的にどんどん落ちていると僕は感じている。
食うや食わずの時代には、お金があれば食べ物を買うことができ、家を建てることができ、飢えをしのぐことができた。
お金があるとないとが、生命の存続を左右するくらい大きなインパクトを持っていた。
でも、現代の日本においては、お金の価値は上に書いた時代に比べると、遥かに落ちている。
現代におけるお金の正体とは、「信用の一部を数値化したもの」なのだ。
本書で西野さんは、知り合いの「ホームレス小谷」という人物をその典型として紹介している。
ホームレス小谷氏はその名のとおりホームレスなのだが、ホームレスになって3年で20kgも太り、さらに美しい奥さんまでもらって毎日幸せに生きているという。
彼がどうやって生きているかというと、ネット上に自分のショップを出し、そこで「自分の1日」を50円で販売しているのだ。
丸一日働いて50円である。
普通に考えたらあり得ない価格設定だが、彼はどれだけ働いても1日50円を徹底している。
するとどうなるかというと、50円で彼に仕事を頼んだ人、たとえば草むしりを頼んだ人は、「これだけ働かせて、さすがに50円は申し訳ないな」という気持ちになり、ホームレス小谷氏にお昼をご馳走し、夜になったら一緒に飲みに行き、飲み代を奢ってしまったりする。
西野さんはこう書いている。
結局、購入者はナンジャカンジャで50円以上を払っているんだけど、あとに残るのは50円と、”こんなに働いてくれて本当にありがとう”という恩。つまり、信用だ。
最初の値段設定を1万円にしていたら、これは生まれない。
ホームレス小谷は、この調子で毎日自分を50円で売り続け、毎日毎日、お金ではなく「信用」を積み重ね続けた。
そんな彼がある女性と恋におち結婚することになった。
彼女のために盛大な結婚式を挙げたいと願った彼は、クラウドファンディングに結婚式の開催費用を募った。
すると、名もなきホームレスの結婚式の費用にと、250万円ものお金が集まったのだ。
小谷氏の結婚式に費用の支援をしたひとたちは誰か。
それは、彼を50円で買った人たちだという。
50円で働いてもらった恩を感じていた人たちが、「小谷君が結婚式をあげるなら支援を!」と名乗り出てくれたのだ。
ここで彼のもとに、恩が返ってきた。
こんなことができる時代になったのだから、使わない手はない。
DVDは「3000枚売れないとペイできない」ってホント?
この話は、まさに我々の活動と直接的に重なるので、僕らの話も交えて紹介したい。
昨年僕と奥さんで、セミナーのDVDを作って販売を開始した。
「DVDを作って販売する」というと、とんでもない費用がかかると考えがち。
でも、それはあくまても、「流通に乗せる」ことを前提に考えた場合だ。
西野さんの後輩が公演会のDVDを作りたいと会社に相談したところ、却下された。
その理由は、「DVDは3000枚売れないとペイしないから」というものだ。
しかし、DVDを制作してプレスするのには、実はほとんど費用はかからない。
西野さんが問い合わせたDVDの制作会社では、3000枚でかかる費用は27万円だ。
1枚3,000円で売れば、3,000枚で900万円。
製作費が27万円なら、残りの873万円は何に掛かるのか。
それは、全国の書店やCDショップ、ネットショップなどに流通させるためにかかる費用なのだ。
だから、そもそも流通させることを前提に考えなければ、DVDは3,000枚も売れる必要はまったくない。
僕らが作ったDVDだって、もちろん3,000枚も売れていないが、もうとっくに製作費は回収が終わって、1枚売れるたびに利益が出ている状態になっている。
思考の枠を外して、いまの状況を疑うと、新しい答えが見えてくる。
このDVDの例は、その典型だろう。
「遊んでばかりいちゃいけません」から「仕事になるまで遊びなさい!」へ
2045年問題というのがある。
2045年には、人工知能が人間のIQを超えてしまうというのだ。
そのとき、僕たちは何をして生きていくのか。
すでに単純業務は、じわじわと人間から機械へと、仕事がシフトし始めている。
僕らにとって身近なのが、駅の改札。
昔はどの駅にも駅員さんがいて、改札でキップを切っていたけれど、今はどこの駅も全部自動改札になり、人はいなくなった。
高速道路の料金所もそうだ。
ETCが普及して、どんどん人がいる窓口が減り、機械でスルーできるようになってきた。
こういうのが、これからどんどん広がっていく。
コンビニのレジが無人化したとか、レストランのオーダーがタブレットになったとか、どんどんそういうのが広がり、仕事が人から奪われていく。
そのとき僕たちは何をして生きていくのだろうか。
機械が人を支配する、地獄のような世界?
それとも重労働は全部機械がやってくれ、僕たち人間は哲学を語ったり、詩作にふけったりできるようなパラダイス?
それは分からない。
ただ、誰でもできる簡単なこと、そして人間がやるには辛くて大変なことから順に機械に置き換えられていくのは間違いないのだから、誰にも真似ができないことに特化している人は強い。
それは何か。
それはつまり、好きなことを夢中でやることだ。
恐らく人間に残されていくのは、機械に置き換えたら意味がないような、くだらなかったり、無駄だったり、楽しすぎたりする領域なのだ。
西野さんはこう書いている。
「好きなことで食っていけるほど人生は甘くない!」という時代から、「好きなことで生きていく」を追い求める時代になり、これからは、「好きなことでしか生きていけない」という時代が間違いなくやってくる。
親が子供に言う言葉は、「遊んでばかりいちゃいけません」から「仕事になるまで遊びなさい!」へと変化していく。
面白い時代がやってきそうだと思わないか?
まとめ
人類が自ら発明したものによって、世の中はすごい勢いで変化している。
その変化に、当の人類が追いつけなくなっている。
僕はそんな風に感じている。
だからこそ、思考の制限を外して、「こんなこともできるんじゃないか?」「これ面白いんじゃないか?」と思ったら、すぐにやってみる。
そのやってみるときに、最新のテクノロジーやネットの仕組みを接続してみる。
「ネットと好きなことを組み合わせる」のだ。
すると、そこにお金も降ってくるし、チャンスも湧いてくる。
そんな時代がもう目の前に広がっている。
そのことを認識させてくれる1冊。
思考の枠を拡張したい方、ぜひご一読を。
オススメです。
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著者/出版プロデューサー/起業支援コンサルタント/ブロガー/心理カウンセラー。
あまてらす株式会社 代表取締役。
著書に「やってみたらわかった!40代からの「身体」と「心」に本当に良い習慣」「起業メンタル大全」「「好き」と「ネット」を接続すると、あなたに「お金」が降ってくる」「ノマドワーカーという生き方」など全9冊。
神奈川県鎌倉市の海街在住。