7. 「自己正当化」のワナ。私を怒らせる相手が悪いのか?
頼りない部下が仕事を持ってきた。予想通り酷い出来だ。
このままでは役員に持っていくことはできない。このままでは無理だと分かっていたのだ。
その時にもし上司が箱に入っていなかったなら、このように言うかもしれない。
「ありがとう。良く出来ているが僕の頼み方が悪くて説明不足だった箇所がある。ちょっと直さないといけないから今から一緒にやろう」。
だが、上司が箱の中に入っていた場合、事態はそのように進展しない。何故なら上司は自分のことしか考えていないからだ。
受け取った資料を見て考えるのは、「このままでは役員に出せない」ことと「代わりに自分がやり直さないといけない」こと。
そして究極には「無能な部下のせいで貴重な俺の時間が奪われる。俺は被害者だ!」ということだ。
上司は部下に罵声を浴びせる。
そしてそこにはこのニュアンスが含まれることになる。
「俺を怒らせるような仕事をしたお前が悪い。お前が無能なのが一番悪い」
8. どうやったら「箱」から脱出できるのか
僕らはいとも簡単に「箱」に入り、自己正当化をして相手を攻撃してしまう。
恥ずかしいことに、僕も今までの人生で何度も何度も箱に入って人を傷つけてきた。
でも本当に、その時は自分が被害者だと思ってしまうのだ。
箱の中に自分がいるなんて、思いもしなかった。
では、どうしたら僕らは「箱」から出られるのか。
実はその答えは非常に簡単だ。2つだけ。
1つは、「自分が今箱の中にいるのかもしれない」と自覚すること。
そしてもう一つは、「箱から出たい」と願うこと。それだけだ。
この問題の一番やっかいなポイントは、多くのリーダー達が「箱」の存在を知らず、そして自分が箱に入っていることに対して無自覚である点だ。
だから、すでに「箱」の存在を知り、箱から出たいと願えば、その時点で自己正当化と被害者意識はなくなるのだ。
具体的には、誰かに対して腹が立ったり自分が正しく相手が間違っていると感じたら、この言葉を思い出し、一旦立ち止まるのだ。
「もしかしたら自分が間違っているのかもしれない」と。
自分が冷静な時には当たり前のように分かる。
どちらか片方の当事者が100%正しくて相手が完全に悪いなどということは、滅多にない。
だが、自分が箱に入っている時にはこのように考えがちだ。
「自分は被害者だ」「アイツが全部悪い」「アイツは無能だ」「アイツは怠けている」
つまり、このような怒りが込み上げてきたときは、「自分が今箱に入っている」というサインだと認識して欲しい。
すると、そこで「本当に?」と自分を疑い、自己正当化のワナから逃れることができる。
そして自己正当化と被害者意識がなくなれば、リーダーの行動は変わる。
自分が「面倒だな」とか「やりたくないな」と感じた時でも、「あ、いかん自分は利己的になっていた」と軌道修正することができる。
ガミガミ叱りたくなった時も、「指示を出したのは自分だ」と客観視できるようになる。
箱から出たいという意識を持つことで、既に僕らは箱から出ることができるのだ。
9. 「箱」から出られたことを「本気」で相手に伝よう!
この本を読み「箱」の存在を知ったあなた。
そして自分が今まで「箱」に入っていたことを認識したあなた。
自分が「箱」から脱出したとしても、行動しなければ周囲の人たちはあなたが箱から出たことに気づくことができない。
そして仮に行動を変えたとしても、過去の蓄積があるから、すぐには周囲の人はあなたを信じてくれないかもしれない。
あなたが「箱」の中から攻撃したために、あなたの周囲の人たちも「箱」に入ってあなたを攻撃しているかもしれない。
でも、それでもあなたは、自分が「箱」から脱出できたこと、そして今までの自分が間違っていたと理解したことを、「本気」で伝える必要がある。
あなたが組織やチームのリーダーだったり、家族を守る父親や夫の立場だったなら、あなたが本気で伝えることによって、部下や家族はきっと変わっていく。
リーダーが「箱」から脱出するためにはリーダー自身が自ら気づき、変わる必要がある。
でもリーダーは、自分のメンバー達を箱から出してあげることができる。
これこそが「リーダーシップ」なのだ。
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著者/出版プロデューサー/起業支援コンサルタント/ブロガー/心理カウンセラー。
あまてらす株式会社 代表取締役。
著書に「やってみたらわかった!40代からの「身体」と「心」に本当に良い習慣」「起業メンタル大全」「「好き」と「ネット」を接続すると、あなたに「お金」が降ってくる」「ノマドワーカーという生き方」など全9冊。
神奈川県鎌倉市の海街在住。