心・心理・あり方書評

自分を信じるレッスン — マインドフルネス・セラピー入門 by 手塚郁恵

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手塚郁恵さんの「自分を信じるレッスン — マインドフルネス・セラピー入門」というご本をご紹介。

さっそくだが、皆さんは「マインドフルネス」という言葉をご存知だろうか?

「マインド」「フル」という単語はバラバラには聞いたことがあるかもしれない。

マインドフルネスとは、とても簡単に言えば、「瞑想」のことを指す。

瞑想については、以前こんな記事も書いているので、興味がある方は参照ください。

もうちょっと詳しく言うと、仏教をベースにした、ヴィパッサナー瞑想がベースになっている。

瞑想は多くの宗教が採り入れてきたが、それ故に、どうしても宗教色が強い。

そこで、瞑想から宗教色を取り除き、心理療法として確立されたのが「マインドフルネス」だ。

そして今、マインドフルネスは、心理療法の現場から広がり、Googleなど、世界中の多くの企業が採り入れるほど、盛んになってきている。

本書「自分を信じるレッスン — マインドフルネス・セラピー入門」は、そんなマインドフルネス・セラピーの入門書である。

さっそく紹介しよう。

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自分を信じるレッスン — マインドフルネス・セラピー入門 by 手塚郁恵

頭を休め身体の声を聞く

「マインドフルネスとは瞑想である」と冒頭に書いた。

では、そもそも瞑想とはどういう状態を指すのか。

瞑想とは、目が覚めている状態ではあるが、人が睡眠に落ちる直前に脳から出る「シータ波」が状態に自らを置くことだ。

「シータ波が出る状態」とは、アルファ波よりもさらに深くリラックスして、静かに穏やかに、自分の呼吸だけに意識を向けたときに訪れるといわれている。

電車で移動中にうたた寝をして、電車が揺れるたびに目が覚める、でもウトウトしていてとっても気持ちがいい。

その状態が、シータ波の状態に近いのだそうだ。

僕自身は脳波を計測したことはないが、体感としては納得である。

 

では、僕たちは何のためにマインドフルネスになる必要があるのか。

端的に言うと、「思考を止めるため」だ。

僕たちは目覚めている間、口には出さずとも、頭の中でひたすら色んなことを考えている。

そしてその思考の多くは、ネガティブな言葉だったりする。

そして現代社会は、まさに情報の洪水である。

一日中全身に情報を浴び、そして頭は全開で思考を続ける。

そして、思考を続けていると、僕たちは「頭」のことばかりが気になり、「身体」のことを忘れてしまう。

本来人間は、心と体は一つ、そして頭というのは、身体の一部にしかすぎない。

ところが思考がぐるぐる回り続けていると、頭で考えたことがすべてだと思ってしまい、身体の声を無視したり、聞こえなくなってしまったりする。

そこで、「ちょっと静かになってみよう」ということで、自分の内側に注意を向ける。

そのために、音楽を一時停止するように、自分の思考を止めて、身体の声を聞く。心の声を聞く。

それが、マインドフルネスの目的といえよう。

 

ネガティブは「禁止」しなくていい

我々人間は、からだで感じることよりも、「頭」で考え、知識を得ることばかりを教えられて育ってきた。

そのため、頭ばかりが忙しくなり、人としてのバランスが悪くなる。

端的にいうと、「感じることができない」人間として生きてしまっているのだ。

そして、感じることができない人間になってしまう理由の一つが、ネガティブな気持ちを押さえつけようとする習慣である。

僕たちの頭の中には、毎日数え切れないほどのネガティブなキーワードが浮かび、そして去っていく。

しかし、僕たちはそのネガティブな感情を、自分自身で「禁止」して生きている。

そんなことじゃダメだ、そんな弱気でどうする。

そういって、弱い自分、不安な自分を抑え込み、抑圧してしまっている。

しかし、本来感情には、「良い感情」も「悪い感情」もない。それはただの感情なのだ。

悪い感情だけを抑え込んでいるつもりでも、僕たち人間は、一緒に良い感情も抑え込んでしまう。

そして、思考だけがぐるぐる回り、心から喜んだり悲しんだりすることができない、アンバランスな人間として生きてしまう。

マインドフルネスでは、ネガティブな感情も、「ただそこにある」と捉えていく。

良い感情も悪い感情も、ただそこにある。

その感情が浮かんでいることを離れた場所から眺めるようにするのだ。

すると、怒りや不安に「呑み込まれていた自分」から、客観視できる自分へと、心にスペースが空くようになる。

心と自分の間にスペースを作ることで、思考が作り出した感情に呑み込まれることがなくなり、心がとても静かになっていく。

マインドフルネスで、ちょっと静かな場所に行く。

それはマインドフルネスの大きな効果の一つだろう。

 

【次のページ】マインドフルネスの方法、そしてセラピー現場からの声

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